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第3章 旅立ち

第16話 帝都でお買い物

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 翌朝

 起床後、身支度を整え1階で手持ちの草の皮を向いて葉肉を出す作業をしていると、玄関をノックする音が聞こえた。

 誰だろうか?
 帝都に居る知り合いは、ボッシュしかいないから、ボッシュだろうと思い玄関を開けた。

「は~い」

 玄関を開けるとそこには、すらっとして綺麗どころのエルフの女性が居た。

「えっと……」
「ラミナさん、はじめまして、ボッシュの妻のガーネットと申します」
『ほんまやで』

 本当に?
 と思う前にミントが教えてくれた。

「あっ、はいラミナですよろしくお願いします……、それで何の用でしょうか……」
「旦那から、あなたの洋服を見てやってくれって頼まれてね、よかったら、一緒に買い物行きません?」

 葉肉を出したら乾燥過程があるから、乾燥させてから行こうと思っていたが。

「えっと、薬を作っているので少し待ってもらってもいいですか?」
「構いませんよ、何の薬を作っているんですか?」
「顔や体を洗うときに使う洗料を作っているんです」
「石鹸でしたら、商会に置いていますよ?」
「あれ?そうなんですか?」
「えぇ、1階に置いてあるはずですよ」

 先日商会の雑貨を一通り見たつもりだったが気づかなかった。

『あれはあかん、肌がパサパサになんで』

 身体や顔を洗う洗料は村に居た時から作っていたからか、肌がパサパサになる洗料と言うのが想像つかなかった。

「そうなんですね、でも精霊さんが、肌がパサパサになるって言っているので……」
「そうですけど、パサパサにならない洗料を作るんですか?」
「そのつもりです」
「そぅ……」

 予定していた葉の皮を向き、葉肉同士をひもで結び吊るした。

「その葉は、エロアの葉ですよね?」
「そうです、ラベ・エロアの葉ですよ」
「食べると肌に良いと聞きますが、洗料になるんですか?」
「なりますよ、石鹸みたいに固形ではなく、液体洗料ですけどね。それに花とかの香料を入れるといい香りがするんですよ」
「そうなんですか、先ほどラミナさんからいい匂いがしたのですが……」
「村で取れる。ルマーンツバキって花の香料を混ぜた洗料を使ってるからだと思います」
「そう、もし今作っているのができたら、少し分けてくださいます?」
「良いですよ~、ちょっと準備してきます~」

 2階のリビングに置きっぱなしのカバンを取り1階に戻った。

「お待たせしました」
「行きましょうか」
「はい」

 家を出てガーネットの後について行こうとすると。

「鍵を掛けましたか?」
「あっ」

 村ではそんな習慣が無かった為か鍵をかける習慣が無かった。

 慌てて鍵をカバンから取り出し、鍵をかけた。

「習慣をつけてくださいね」
「はい」
『今度から、鍵かけ忘れてったら言うわ』
「うん、お願い」

 本当にこういう時は頼もしい存在だ。

「すいません、鍵かけました」
「いきましょうか」

 ガーネットの後について行くと、商会本部の横の建物に入った。

 すると、そこは、女性物の小物や衣類等がたくさん並んでいて、村から出てきた私にとってはなんだか場違いな気がした。

「なんか綺麗な場所ですね」
「ここは、女性の物を専門に取り扱っている私のお店なんですよ」
「へぇ~」

 ミントとアクアも興味があるのか店内を飛び回っていた。

「こっちにいらっしゃいな」

 ガーネットの側に行くと、私が着られるサイズの服が並んでいた。

「ん~、どれがいいでしょうかね」

 ガーネットは、並んでいる服を取っては、私の前に当て、次の服を取っては当てを繰り返していた。

 個人的に、2着ほど気になった物があった。

「ん~、私としては、これとこれとこれが、ラミナさんに似合っていると思うのだけど」

 そういうと、私が気になっていた2着の服と、もう1着の服を手渡された。

「奥に試着室があるから、試着してちょうだい」

 1着着ては、ガーネットに見せるを3度繰り返した。

 個人的に、3着全部買ってもいいな、なんて思った。

「私としてはその3着は良いと思うのだけど、ラミナさんはどうかしら?」
「私もこの3着が良いと思います」
「そう、ならその3着を差し上げますよ」

 聞き間違えた?

「ぇ?」
「代わりと言っては何ですが、あなたが今作っている洗料が出来たら少し分けてくれません?」

 どう考えても、こちらが貰いすぎな気がした。

「分けるのは構わないんですが、いいんですか?」
「えぇ」

 本人が良いというなら貰っておこう、その分渡す洗料を多めにすればいいかな?

「ありがとうございます」

 頭を下げた。

『なぁなぁ、ラミナ』
「ん?」
『これ買わへん?』

 ミントとアクアが2人いっしょに同じところに居た。

「どうしたんです?」
「いえ、精霊さんが……」

 ミントとアクアの居る所に行くと、小さな小瓶に何か液体が入っていた。

「ガーネットさん、これは何ですか?」
「香水ですよ」

 精霊であるミントがなぜ香水を?

『これな、この辺りじゃ手に入らん香料やねん』

 ミントはそう言うと、1本の小瓶の上に立った。

 ミントが立った、1本の小瓶を手に取った。

「これって何の香水なんですか?」
「あら、まだ残っていたんですね、それは海峡を挟んで東にミネユニロントって国があるんですが、その国の中央にある湖に咲く花の香水なんですよ。花自体が珍しくなかなか手に入らないんですよ」
『せやろなぁ~、ファントムフラワーやもん』
「珍しいの?」
『8月の中旬に花が咲くんやけど、その湖でしか咲かんのや』

 何か特殊な条件でもあるのだろうか?

「ん?どうしたんですか?」

 念話じゃなく口に出していたことに気づいた。

「あっ、精霊さんがファントムフラワーって教えてくれたんで……」
「なるほど、ラミナさんは植物の精霊と契約しているんです?」
「そうです。植物と水の精霊と契約しています」
「そうでしたか、その香水持っていきますか?」
「ぇ?」
「欲しいのであれば差し上げますよ、その代わりに……」

 なんとなく何を言われるかが想像できた。

「洗料ですね」
「えぇ」
『ええんちゃう?この香水から結構な香料とれるねんな?』
『そうですね、その小瓶の半分位の香料は取れますよ』

 貰ってもいいのかな?
 完成した洗料と交換と思えばいいのかな?

「んじゃ、貰いますね」
「えぇ、他に何か必要なものはあります?」
「ん~大丈夫です。あっ、薬草とか売っている場所を教えてくれると……」
「それじゃあ、一緒に行きましょうか」
「おねがいします」

 その後、ガーネットと一緒に帝都内の薬草を置いている店や、色々なお店を回ったりして1日を過ごした。

 夕方になり、色々な物を買って自宅まで戻って来た。

「今日は色々とありがとうございました!」

 ボッシュやイアンとは出来ない話が色々出来て楽しかった。

「いえいえ、私も娘が出来たようで楽しかったし、また一緒に買い物をしましょ」
「はい、お願いします!ところでお子さんはいらっしゃらないんですか?」
「なかなか出来ないのよ」
『エルフは長寿種やからねぇ』
『そうですね、子どもができにくいのは種族故ですね』
『何とかしてあげられない?』
『そうですね、色々頂きましたし、お礼をしましょうか、ラミナ、彼女に背を向けてもらうように言ってもらっていいですか?』
「あの」
「ん?」
「ガーネットさん、少し後ろ向いてもらっていいです?」

 ガーネットの頭の上に“???”が浮いているのがわかったが、何も言わずに背を見せてくれた。

『彼女の腰に手を当ててください』
「ちょっと失礼しますね」
「えぇ?何をするの?」
「水の精霊さんが、今日色々頂いたお礼だって」
『そのままでいてくださいね』

 そういうと、自分の腕付近にアクアが停まり何かし始めた。

 何をしているんだろう?

『子どもができやすい身体にしてるんや』
『あ、そうなんだ』
『これですぐ妊娠すると思いますよ』
「これで大丈夫みたいです」
「ラミナさんの手のひらから何か流れ込んできている感覚がありましたけど、何をしたんですか?」
「子どもができやすい身体にしたみたいです」
「ぇ!?ほんとに!?ありがとう!精霊の加護を貰えるとは思わなかった!」

 興奮気味のガーネットを見て、精霊の加護って?

「精霊の加護……?」
「えぇ、精霊に力を貰う事を精霊の加護と呼ぶんですよ」
「へぇ……、そうなんだ」
「えぇ!それじゃあ私は帰るね!」

 ガーネットはそう言うと嬉しそうに去っていった。

 玄関を締めようとすると。

「ちょっと待って、伝え忘れたことが」

 気づけばガーネットが戻ってきていた。

「なんですか?」
「明日は1日風が強いので外出するなら気を付けてくださいね」
「ぇ?」
「明日は毎年異様なくらい強い風が吹く日なんです」
「そうなんだ、わかりました」
「えぇ、それじゃあ」

 そう言うと再びガーネットが去っていった。

『そっか、もうそないな時期なんやね』
『そうですね……』

 なぜか、ミントとアクアの雰囲気が暗かった。
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