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第5章 暗殺者になりました!

第53話 きな臭い話

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 影を出てから噴水広場に行った。

 噴水広場では人だかりがまだできていた。

 人だかりとは少し離れた噴水の縁に座り終わるのを待っていた。

 マンウォッチングをしながら待っていると、

「すまんすまん、待たせたな」
「あぁ、おつかれさん、今日はずいぶん盛況してたね」
「あぁ、まずは影殺しがこの町に来ているらしい、それから夕方に悪徳商人フェルントが囚われたらしい、取り巻きのグラウとピックがどうなったかわからんが王都じゃ結構大きいニュースだな」

 どっちも自分が絡んでるとは言いにくかった。

「へぇ」
「はぁ、腹減ったしお琴さんとこに行こうぜ」
「あぁ」

 正弘と一緒に噴水広場を後にし、琴の家に向かった。

「そういや、影殺しの姿とかは聞いたんです?」
「黒髪黒目で痩せたやつって言ってたな、黒目黒髪なんてカッファードにはいっぱい居るからな~」

 目の前に居るのに気づかないか、

「はぁ稀人の丘以外に日本とつながっている所があるのかな?」
「カッファードの横を流れてる川があるだろ?」
「あぁ」
「その川をかなりさかのぼった所にヒュール渓谷があるんだが、あそこも日本とつながってるらしい、琴さんは帝国リーンフェル近くの森の中って言ってた」

 リーンフェル、アリサの故郷か。

「たまたま日本とかアジア圏と繋がっているだけなのか」
「じゃね?」

 そんな他愛もない話をしながら琴の家に戻ってきた。

「ただいま~」

 正弘にとっては、自宅扱いなんだろうか?

「お邪魔します」
「おかえり」

 奥から琴が応えてくれた。

 正弘と共に上がり昨夜夕食をとったリビングに移動した。

 すでにテーブルには料理が並んでいた。

 今日も純和食だ、

「もう少しまってねぇ」
「あぁ、そうだ、お琴さん今日町の人達聞いたんだが、ついにこの町に影殺しが来たらしい」
「そう」

 琴はテーブルに料理を並べながら正弘の話を聞いていた。一瞬こちらを見た気がする。

 多分だが、琴は自分が影殺しと呼ばれている本人だという事に気づいている気がする。

「あとさ~」
 
 正弘は今日得たであろう情報を琴に話していた。

「正弘や、そこの坊が影殺しだと気づかんのか?」
「ぇ?」

 こっちを見る正弘。

「そうなの!?」
「まぁ、最近はそう呼ばれてるかな……」
「まじか!ぇ、どうやってギエフやったの!?」
「いや、たまたま女性を襲おうとしている人がいたので、背後から……」

 一応嘘はついていない、

「ギエフってかなり身体能力が高いって聞いてたけど……」
「自分のスキルが身体強化系なんだよ」

 多分一般的にそう思われているから、この辺りは別に開示してもと思った。

「あ~なるほど、それでか、もしかしてフェルントも?」
「まぁ、絡んでるかな……」
「グラウとピックは?」
「依頼を受けて片付けた」
「へぇ、凄いな」

 正弘が何か考える様子を見せた。

「夕食にしようかねぇ」
「待ってました!俺はもう腹へってんだよ」
「そうかい、それじゃ」
「「「いただきます」」」

 しばらく食べていると、

「食べながらで良いんだが聞いておくれ」

 琴が何やら真剣な顔で話してきた。

「ん?」
「前の雇用主から助けを請われてね、リーンフェルに行くことになったのさ」
「ぇ!?いついくの!?」

 正弘の反応が早い。

「明日の昼の船で行く予定だよ」
「ぇ、マジか……」
「で、正弘あんたも来ないかい?」
「ぇ!?なんで!?」
「あんたのスキルさ、情報を集めるのには向いているだろ?」
「そうだけど、なんで?」
「山神様も仰っていたが、この先帝国内戦を迎えるかもしれないとね」
「あぁなるほど、それでか、お琴さんの料理が食えるなら!」

 正弘の報酬は琴の料理で済みそうだな……。

 リーンフェルか、琴の雇用主って、誰なんだろうか?

「そう言うわけだ、坊やすまないね、泊めてやれるのは今夜までだよ」
「あ、いや大丈夫です、2日間ありがとうございます。一つお聞きしたいんですが」
「なんだい?」
「琴さんの雇用主って、リーンフェル公爵ですか?」
「そうだねぇ、知っているのかい?」
「公爵様は知らないですが、娘のアリサとならこの世界に来て2週間位一緒パーティを組んだりしました」
「ほぉ、お嬢を知ってるのかい」
「えぇまぁ」

 先の話にあった内戦といい、アリサが幽閉される未来といいこれから帝国内はどうなるんだろうか。

「そうかい、お前さんも帝国に行くのかい?」
「そうですね、2カ月後か3カ月後には……」

 おそらく残っている時間はそれ位だと思う。

「そうかい、また向こうでも会うかもしれないねぇ」
「へぇ、んじゃ和人帝国で絶対に会おう!」
「あぁ」
「やりたい事があるからな」
「やりたい事?」
「あぁ、和人が影殺しなら出来そうだから」
「何を……?」
「XYZと言ったら何を連想する?」

 リアルタイムで見ていたわけじゃないが、とあるアニメのキーワードだ。

「もう後がない」
「っふっふ、そうそれ、罪を犯してもすぐにレッドカードになるわけじゃない、レッドカードになれば、国の騎士団や衛兵、各ギルドに、最悪はアサシンに狙われるが、そうならなきゃいつまでも罪を繰り返せる。ましてや貴族となると騎士団も手を出さなかったりする。腐れ外道がのさばってるんだよ……」

 何かの犯罪の被害者なんだろうか……?

「それで……?」
「あぁ、頼みたい事がある」
「頼みたい事?」
「グムンド辺境伯の息子ヘルガムを殺してほしい……」
「殺しの依頼……?一応罪人しかやらないと決めてるんだけど……」
「罪人になってるはずだ」
「どういうこと?」
「やつは親父の権力を借りて、色々な金貸しから金を借りて、返済を求められるようになてば手下を使って金貸しを殺し踏み倒してんだよ……、それだけならいいが、見た目の良い女を攫い嬲ったあとは殺して捨てている」
「結構ひどい奴だな……」
「だろ、辺境伯も手に負えない扱いをしないから、アサシンギルドに依頼が回らない騎士団の方には周っているはずだが……」
「国は動いてくれないと……」
「あぁ、そう言う事だ」

 討つべき相手だと思うが、正直罪人と言う証拠がなければ動けない、リンシェルに相談してみるか。

「わかった考えておく」
「頼む」

 正弘がこんな話をした為か、この後の夕食は誰も口を開くことなく終わった。
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