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診療所開設!

第40話 胃摘出手術

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 ドワーフ達とのお祭り騒ぎの様な宴会の翌朝、診療所を開ける準備をしていると、入口をノックする音が聞こえ、入口を開けるとそこにはカーンさんがいた。

「カーンさんおはようございます」
「おはよう、昨日の件だが、誠明殿のいう手術を受けると、それでどうすれば良いかと思ってな」
「あぁなるほど、そうですね夕方ご本人と世話をする方と来てもらって良いですか?術後数日泊ってもらうことになると思いますので」
「わかった。では夕方にカイルと共にこよう」
「はい、おまちしています」


◇◇◇◇◇◇

 午前の診療を終え、手術の準備をし一通り終えたところでユキが足元に寄って来た。

「どうした?」
「キュィッ!」

 そう鳴きながら診療所入り口の方を向いた。

「あぁもうすぐ来るのかな?」
「キュッキュ!」

 肯定か、準備も一通り済んだし、少し早いがユキには2階に行ってってもらうかな。

「ユキこれから何やるか解ってるよね?」
「キュッキュ!」

 頷きながら鳴いた。

「したらちょっと早いけど上に行って皆が来るのを待ってな」

 そう伝えると、ユキは首を横に振った。

「ここにいるの?」
「キュッキュ!」

 また頷きながら鳴いた。

 まぁこれまで手術の際に邪魔してきたりすることなく、どこか端の方でずーっと自分の動きを見ているような状態だったけども。

「いいけど、邪魔はしないようにね」
「キュッキュ!」
「んじゃ時間かかるだろうから、こいつを食べてな」

 まぁいいかと思いながら、ビーフジャーキを2枚取り出しユキにあげた。

 嬉しそうに、ビーフジャーキーのかぶりつくユキを見ていると、診療所入り口の扉の方からノックが聞こえた。

 入口を開けると、そこには、カーンさん、カイルさんと2人のメイドさんがいた。

「いらっしゃい、おまちしていました。適当な所に腰掛けてもらって良いですか?」
「あぁ」

 2人のメイドさんは座ろうとはしなかったがカーンさんに促され2人共座った。

「それじゃあ手術の内容と、術後に関して説明しますね」

 改めて、お腹を切りそこから胃の下半分を摘出する幽門側胃切除術を行う旨を伝え、同時に消化管再建術として残った胃と十二指腸をつなぐビルロート1法を行う旨とその際のデメリット等を理解できるように模型や書物の図を使い詳しく伝えていった。それと同時に術後の胆石対策として胆のうの摘出も提案し受け入れてもらった。

 次に術後の注意点として普段通り食事をするとダンピング症候群と呼ばれる状態に陥る事を説明したうえで食事量と回数について、貧血や下痢になりやすい事も伝えた。

 質問や疑問等は都度してもらいそれに答えて分からない部分が無いように説明をしていった。

「以上になりますが大丈夫そうですか?」
「あぁ、そなたの居た世界の医術は、我が国では何年後にみられるのだろうな……」

 創造神が各臓器の役割がまだ不明と言っていた辺りどれだけの時が流れれば自分が身につけているレベルになるのかは不明だな。

「さぁ……、自分が居た世界でも医学という言葉が生まれてから2000年以上の時が流れていますからね」

 医学の父ヒポクラテスの時代から考えても2300年位は流れている。

「そうか、そなたから見てこの世界の医療は役に立たぬものばかりなんだろうな……」

 この世界の医術とか見たことないから不明だが、マバダザに来た頃ザックが“お前さんの知識と比べたら役に立たん事を教えている場所”とか言っていたのを思い出した。

「いつかきっと到達できる技術ですよ」
「そうか」

 それっきりカーンさんは黙ってしまった。

「カイルさん大丈夫そうですか?最終決断はあなたがすべきなのですが」
「あぁ、大丈夫だ頼む」
「わかりました。メイドさん達も先ほどお伝えした通り全身麻酔中の呼吸管理をお願いします」
「「かしこまりました」」

 ん~2人とも20代後半くらいだろうか、1人は綺麗系片方は可愛い系だなぁとか思った。

 その後カイルは手術用のガウンに着替えてもらい。自分、カーンさん、メイドさんたちも立ち会うのガウン、マスク、ヘアキャップで相応の格好になり、カーンさんとメイドさんに呼吸用管理してもらう為に、レサシテーターでの使い方と呼吸管理の仕方を伝えた。

 カイルさんが来たので、手術台の上に横になってもらうように伝え、横になってもらった。

 さぁ、はじめよう、胃の摘出手術を。

 まずは手術室内を浄化魔法で無菌状態にし、麻酔を吸わせ全身麻酔状態にする。そして人工呼吸が出来るように気管に管を挿入し自発呼吸が弱くなってきたのを確認した後人工呼吸を開始。

 触診スキルを発動させ全身麻酔状態なのを確認したら、開腹手術の始まりだ。

 ライトボールで光源となるものと、アツアツのヘラ状のものを出し、開腹すると同時に止血していく。触診スキルで胃の状態を確認しながら必要最小限の摘出していく、摘出した胃をトレイに乗せ、今度は十二指腸と残った胃の吻合をしていく。溢れ出た汚物は浄化で対応しつつ吻合が終わると触診スキルをつかいきっちりできているかを確認した後、止血の為に焼いた血管を綺麗につなぎ合わせながらお腹を閉じて縫合した。

 メイドさん達も交代で呼吸管理していたがこちらが指摘するようなことなく丁寧に呼吸管理をしていた。正直どちらか呼吸管理要員としてほしいなぁと思ったのは言うまでもない。

「誠明殿?」

 腹部の縫合が終わり一息ついた瞬間カーンさんが話しかけてきた。

「えぇ成功ですよ、後は麻酔が抜け自発呼吸が戻るまで人工呼吸が必要ですが」
「そうか……、よかった……ようやく祈りが通じた……」

 カーンさんは熱心な信者なのかな?と思ったが、人間だれしも自分の子が大病を患ったら神に祈るか。

 しばらくの間メイドさん達に交じり自分も呼吸管理をしていると自発呼吸が戻ってきたことが確認できたので気管に挿入していた管を抜いてカーンさんとメイドさんに手伝ってもらいカイルさんの身体を病室に移動した。

「病室は今誰も使っていないのでお三方ここで寝ても大丈夫ですよ」
「そうか、何から何まですまんな」
「いえいえ」
「すまんが、どちらか家に手術は成功したと伝えてくれ」

 カーンさんがそう言うと、可愛い系のメイドさんが立候補し直ぐに診療所を出て言った。

「誠明殿、術代はいくらになる?」

 ん~いくらにしようか?手間とか考えても大した手術じゃないからな、金貨4~5枚だろうか?

「そうですね、金貨4枚でいいですよ」
「それだけか?」
「えぇ、もしそれ以上の価値があると思ったなら、残りの金額は息子さんや他の人の為に使ってあげてください」
「そうか……、では金貨4枚を」

 カーンは懐から巾着の様な物を取り出し、金貨4枚を出し自分に差し出した。

「確かに頂きました。冒頭でも説明した通り、7日間ほど経過を見たいので入院させてくださいね?」
「あぁそれ位は構わん、メイドたちは交代しても構わんか?」
「どうぞ、食事の用意とかは教えるので作れるようになってくれると嬉しいです」
「わかった、メイドたちにもそう伝えておこう」

 その後1週間1日2交代制で必ず1人のメイドさんが着くことになり対応してもらった。


◇◇◇◇◇◇

 1週間後、術後の縫合不全などが見られず、傷薬を使って抜糸して縫合跡を無くした。

「本当に世話になったな」
「いえいえ、無事何事もなく退院できてよかったです。食事とお伝えした食材には気を付けてくださいね」

 術後の貧血等を避けるためにメイドさんにヒジキ等を使った食事にするように依頼をした。

「あぁ気を付けよう、それでは」
「えぇ、さようなら」

 カイルが退院していった。
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