上 下
36 / 91
診療所開設!

第36話 幕間 ユキのとある一日

しおりを挟む
※ユキ視点

 窓の外が真っ暗な時間、何者かが自分の縄張りに侵入してきた気配を感じて目を覚ました。

 なんだろう、なにものかが誠明の家に侵入してきた。
 千里眼のスキルを使い気配のある地下に降りる階段を見るとネズミが2匹居た。

 誠明からネズミは病気になる菌をもってるから食べるなと言われいてる。

 仕留めて死体を適当な所に捨ててこようと思い、寝床から床に飛び降りると、飛び降りた音で目覚めたのかフワ姉さんがこっちを見た。

「グワ~ッグワ?(ユキちゃんおはよう~こんな早くにどうしたの?)」
「キュィ~ッキュ~~(姉さんおはよ~侵入者が居るみたいなの)」
「グワ?(侵入者?)」
「キュッキュキュ~(うん、ネズミが2匹)」
「グワッグワ~(そう、狩に行くなら怪我しないようにね)」
「キュッキュ!(うん気を付ける!)」

 フワ姉さんに見送られ自分専用の入口を使いながら2階のフロアを経由して地下に階段の踊り場に2匹のネズミが居た。上ることも出来ず地下室に入ることも出来ずに途方に暮れている様子だった。

 うちは地下階段入口から2匹のネズミを見下ろしながらどう対処しようか考えた。

 せっかくだし誠明から教わった事を試してみよう。

 2匹のネズミに対して視覚・触覚・嗅覚に対して幻影魔法を使った。

 視覚には自分自身が炎に焼かれている錯覚を。触覚には皮膚が燃える感触を、嗅覚は焼肉を食べるときの匂いが自分自身の身体から発せられる錯覚を、そうイメージし幻影魔法を発動させた。

「ヂュ?(え?)」「ヂュ!?(体が燃えてる!?)」

 自分の身体が燃えている事に気づき踊り場を走り回る2匹のネズミを見ながら、どれくらいしたら力尽きるだろうか?とか思っていた。

 どれだけの時間が流れただろうか?真っ暗だった空に赤みが差してきた頃ようやく2匹の動きが止まり横たわっていた。

 幻影じゃ殺せないのかなぁ~?
 もうちょっと効率のいい殺し方のアドバイスを貰わないとかな?

 そんなことを思いながら階段を降りて力尽きている2匹のネズミに爪を振り下ろしとどめを刺した。

 ネズミを咥えて適当な所に2匹を捨てて誠明の寝ている部屋に戻った。

 部屋に戻ると自分の寝床ではなく誠明の寝ている布団の上に飛び乗り丸くなりもうひと眠りした。

「おまえなんでこんなところで寝てんの……、寝相悪すぎだろ」

 そんな声と共に頭を撫でられたので目を開けると夜が明け窓の外が明るくなっていた。

「キュッ!キュ~ッキュ~ッキュ!(ちがう!侵入者退治して戻ってきたからここにいるの!)」
「何か訴えてるのはわかるけど、なに言ってるのか分からん」
「キュ~……(そうでした誠明には通じないんだった……)」

 誠明がベッドから降りると軽く体を動かした後、うちの身体を抱き上げた。

 リビングに移動しソファーの上に下ろされ誠明が台所に移動しご飯の用意を始めた。

 うちはソファーから降りて誠明の足元に移動し体を擦り付けた。

 撫でてほしいなぁ~

「ユキそんなところに居ると踏んじゃうからソファーに居なよ」

 誠明がうちを見下ろしながら言ってきた。

「キュ!(大丈夫)」
「わかってんのかな……?」
「キュッキュ!(わかってる!)」
「わかってると言いつつ移動しない辺り分かってないじゃん……、まぁいつもの事だけど邪魔するなよ……」
「キュッキュ!(わかってる!)」

 誠明の移動先に行かないように気を付けながら甘え続ける。

 朝食の準備が終わり、うちの分と姉さんの分は床に、誠明の分は机の上に並んだ頃姉さんがリビングに顔を出した。

「グワァ~(おはよ~)」
「キュィ~!(おはよ!)」
「フワおはよ、ご飯できてるよ」
「グ~ワ(は~い)」

 皆自分の場所に着くのを確認すると。

「はい、いただきます」
「キュイィ(いただきます)」「グワ~(いただきます)」

 今日は生肉と誠明とおそろいのブロッコリーの温野菜だ。1品でも同じものを食べると思うと嬉しい。

 朝食を終えるとフワ姉さんが窓を嘴でコンコンとっ突っついていた。

「ん、フワ今日も外行くのか?」
「グワッ(外へ行かせて~)」

 誠明が荒いものしている手を止めて窓を開けるとフワ姉さんは外に飛び立っていった。

 うちは知っている。
 姉さんには好きな男が出来たことを、北にある沼で出会い、秋には居なくなるかもと言っていた。

 そんな事を知らない誠明は、姉さんが窓を開けてと言ったら素直に開けて姉さんを見送っているけどいいのかな?言った方がいいのかな?と毎回思ってしまう。

 朝食の片付けが終わると誠明は着替えて一緒に1階の職場に降りていく。

 誠明が待合室や受付等の掃除や昨日使ったカルテファイルを片付けを始めると、うちは誠明の邪魔にならないように定位置である受付の椅子の上で仕事が始まるまでのんびりして待つ。

 誠明が診療所の入口を開ける準備をしだしたのを確認したら、人型の幻影を受付カウンターの横に出現させ患者さんが来るのをまつ。

「ユキちゃんおはよう~」
『アンさんおはようございます。調子はどうですか?』

 アンさんはご近所に住むお婆さんだ、関節リウマチで定期的に受診に来る。
 
 幻影を使い診療所に来た患者とやり取りをする。

 ここに1度でも来た患者たちは、うちの幻影だと理解してくれているのでスムーズにやり取りができる。

「おかげさまでねぇ」
『順番が来たら呼びします」
「はいよ」

 うちは椅子から飛び降り、アンさんのカルテファイルを棚から引っ張り出し誠明がいる診察室まで引っ張っていく、各ファイルに紐が着いている為それを噛んで引っ張って持っていくだけのお仕事。

 誠明が診察中の時は所定の場所に置いておけ対応してくれる。

 診察に来た患者の対応を繰り返し続け、お昼近くで患者さんが途切れると今日のお仕事はおしまい。

 幻影で出している人型を消して誠明の居る診察室へ移動してファイル置き場でお座りして待っていると。

「ん?ユキか、んじゃおしまいかな?」
「キュッキュ!(そうだよ!)」
「んじゃ軽く片付けてお昼にしようか」
「キュィ~(は~い)」

 1階にある厨房で簡単に調理を済ませて診察室でご飯を食べる。

 ご飯を食べ終わると片付けてから、その日予定している事をする。

 これまでは孤児院や城への往診と仕事の延長の事をやったり、食材や誠明の衣類の買い物等をする事が多いが何も予定がないと誠明の趣味の釣りに付き合いで船着き場に行くこともある。

 今日は何か予定有るのかな?と思いながらご飯を食べている誠明の膝の上に飛び乗った。

「あ、こらまだご飯食べてるからちょっと待ってって」
「キュィ~(は~い)」

 そう答えると、誠明の左手にビーフジャーキーが出現した。

「これあげるから降りて待ってて」

 口元にビーフジャーキーを持ってきたので咥えて膝から降りて食べ始めた。

 誠明が時々出すビーフジャーキーはしょっぱくておいしいけどすごく硬い食べるのに時間がかかる。

 ビーフジャーキと格闘していると、誠明の方はご飯を終えて片付けも済ませていた。

「今日は午後何もないしゆっくり買い物でもするか」

 という事で、午後は誠明の肩にしがみつきながら、食材等の買い物を済ませて自宅に戻ると誠明が部屋の掃除を始めたので邪魔にならないようにソファーでお昼寝タイム。

 再び自分の縄張りに侵入者の気配を感じ目を覚ますと窓の外は夕暮れになっていた。

 侵入場所も2階からだったので恐らくはドワーフ達だろう、千里眼を使い確認するとドワーフの女性と女の子がたくさんの荷物を抱えて来ていた。

 今日の夕食は何だろうと思いながら、誠明の姿を探すと、うちと同じようにソファーの上でお昼寝していた。

 近くにより尻尾で誠明の顔を撫でたりしていると。

「ん……」

 誠明が目を覚ました。ソファーに腰掛ける体勢に移行したのを確認すると誠明の膝の上に移動した。

「ん~ずいぶん寝ちまったな……」

 そう言いつつ頭や背中を撫でてくれる。

「もう少ししたら下に降りようか」
「キュィ~(は~い)」

 その後下に降り、ドワーフ達の集まりにいって夕食と、ザック達とお話して過ごした。

 ドワーフ達との交流が終わると自宅に戻り誠明と医療勉強タイム、体の仕組みや各臓器の役割等を教わっていく。

 それが終わると誠明とお風呂に入って戻ってくると、フワ姉さんが帰ってきた。


「ずいぶん遅い帰りだな、フワおかえり」
「キュッキュィ~(姉さんお帰り)」
「グッグワ(ただいま)」
「ご飯と風呂終わってるけどどうする?」
「ッグッグァ(大丈夫)」

 と言って姉さんは首を横に振っていた。

「そっか」

 誠明がソファーで本を読み始めた。

「キューッキュー(もうご飯もお風呂も終わっちゃったよ)」
「ッグッグァ(ご飯は済んでるから大丈夫)」
「キュィッキュキュー(そっか、ねぇうちも誠明と一緒になれるかな?)」
「グァッグ~(どういう意味で?私と彼みたいに?」
「キュィ~(うん)」
「グワァ~グワ……(それは難しいんじゃない?ユキちゃんが人にならないと……)」

 人にならないと無理なのか~でも以前、魔物や動物から人になったって話があるって聞いたことがある。

 もしかしたら……。

「キュィ~ッキュー(そっか~)」
「ッグッグア(うん、それじゃ私は寝るよ)」
「キュィ~(は~い)」

 フワ姉さんが寝床に向かっていった。
 
 うちは誠明の横に行き、誠明におでこを当ててグリグリした。

「ん、撫でてほしいのか」
「キュィ~♪(うん)」

 誠明が優しく撫でてくれる、この瞬間が一番好きだ、癒される眠くなる~眼を閉じて撫でてもらう感触を楽しんでいるといつの間にか寝てしまった。

 うちもいつか人になれるかな?

 この日から人になりたいと願い始めた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

白衣の下 先生無茶振りはやめて‼️

アーキテクト
恋愛
弟の主治医と女子大生の恋模様

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

処理中です...