上 下
134 / 195
VSヴォーネス共和国(クラリス教団)

第134話 ペンジェンの街 スラム街

しおりを挟む
 教団にとって何か不都合な事なのかを考えながら街を探索していると、みつけたリンクル族達が居るスラム街だ。

 通りからスラム街の方向をみると何人ものリンクル族がゴミの山に登って何かを探していた。TVの中でしか見た事の無かった光景が目の前に広がっていた。ゴミの山に近づこうとすると、こちらに気づいたリンクル族達に囲まれた。

「狐面の兄ちゃん見慣れぬ格好してるな、何かを捨てるならおいらにくれ」
「いや俺だ!俺にくれ!」
「いや私だ!」

 皆顔や手だけじゃなく服も汚れたものを着ていた
 我先にとゴミを貰おうとするリンクル族達を見ていると哀れに思えてならなかった。

「捨てるものは無いけど、このスラム街を束ねる者が居ればその人の所へ案内してくれないかな?」
「なんだ、捨てるものは無いのか……」

 周囲に集まっていたリンクル族達が、ため息をついたりと皆がっかりしていた。

「まぁそれよりも、案内してくれれば、君たちにとっていいことが出来るかもしれないよ?」
「本当か!案内するだけでいい事してくれるのか!?」

 救出するし、彼等にとっては今の状況から脱することが出来るからいい事だよな?とか思った。

「なら俺が、ダッス爺の所に案内してやる!」
「いや!私だ」

 と、また我先にの戦いが始まった。この姿を見ていると本当に子どもを相手にしているようでほほえましくも思った。

「じゃあ、みんなで案内してくれる?」
「いいとも~」「いいよ~」

 日本に居た頃、医師だった1人の友人がアフリカの現地でボランティア活動をしていた。彼は現地の子ども達に囲まれてみんな楽しそうな表情で歩いている姿の写真が送られてきた事があった。

 あの頃の写真を思い出し懐かしい気持ちにもなったと同時に、彼らをちゃんとエスティアまで送り届けないと思った。

 彼等の後について行くと、1軒のボロ小屋に案内された。

「ここかな?」
「そうだよ~」「んだ」「そだ」
「そっか、ありがとう」

 そう伝えつつ、アイテムボックス内で生前から持ち込んだ飴玉を大量にコピーし彼らに与えて行った。

「これは?」「綺麗な宝石?」

 飴玉をしらんのか、飴って高級品だったっけ?とか思いながら、自分も1つ口の中に放り込んだ。

「こうやって口の中にいれて舐めるんだ、咬まないようにね」

 自分がやったのを見ていたリンクル族達が、皆一斉に口の中に放り込んでいた。

「甘い!」「美味しい~」「んま」

 あちらこちらから、美味しいだの誉め言葉が飛んできた。

「喜んでもらえたならよかった」

 そう伝えると、

「なんじゃ騒がしい」

 案内されたボロ小屋から1人の白髪と白いひげのリンクル族が出てきた。

「どうも」
「ダッス爺に会いたいって言ってたから連れてきたんだ」
「ワシにか?」
「えぇ」

 ダッス爺と呼ばれたリンクル族は怪訝な表情を見せた。

「まぁいい、入れ、皆の者はさっさと帰りなさい」

 騒がしくしていたせいか少し怒っているような感じがあった。

「ぇ~おいらたちも何の話をするのか気になる~」
「必要あれば、後で皆に伝える」
「チェ~」

 不満を漏らす者も居たが皆が家やゴミの山等に戻っていった。

「狭い所だが入りなさい」

 ダッス爺について中に入ると、木の切れ端で作った台の様なものと大きなツボしかなかった。

「適当な所に座ってくれ」

 地べたにか、とか思ったが見た感じ仕方ないかと思いながら腰を下ろした。

「名もなき青年、このような所に何の用だ?」
「ん?」
『このお爺さん鑑定持ちだから』

 なるほど……、もう少し早く教えてくれてもいいんだよ?と思いながら自己紹介した。

「自分は秋津直人、ヴォーネス解放軍の者です」

 そう言いつつ狐のお面を外した。

「ほう、その仮面は鑑定阻害効果でもあるのかな?」

 仮面を外したと同時に偽装状態のステータスに戻したからな、直ぐに鑑定して判断したか?さすがに手の内を明かす必要はないと思っていたので適当に答えることにした。

「そんなところです」
「ふむ、先ほど解放軍の者といったな?リーダーは誰だ?」
「ヴィンザー殿です」
「ほぉ、先代のせがれか、奴は元気か?」

 奴はというあたり知り合いなのか?

「元気ですよ、知り合いなんですか?」
「よう知っとる、奴が生まれた時からな」

 思っていた以上に古い知り合いだった。

「差し支えなければどのような関係か聞いても?」
「ワシは奴の教育係だったんじゃよ」

 という事は、クーデター前からの知り合いという事か?

「先代の王に仕えていたのですか?」
「そうじゃ、そうかようやく動き出したか、お主がここに居るという事は、同胞の救出か?」
「そんなところです」
「ふむ、ならば皆を救ってやると良い」

 その言い方だと自分は残るというように聞こえるんだが……

「ダッスさんは?」
「ここに残ろう、お主に相談がある」
「なんです?」

 さっきまでとは違い、ダッスは真剣な表情に変わった。

「救出する日と手段が決まり次第ワシに教えてくれ」

 ダッスは何かを考えているような雰囲気があった。

「構いませんが、今夜と思っていますが」
「ずいぶん早いな、して手段は?」
「従えている狼と、トライベッカファルコン達による救出ですね」
「狼とな?昨夜街中を狼たちが暴れていたと聞いたが……」
「自分の手の者達ですね」
「ふむ、港に居る者達は?」
「既にエスティアへ救出済みです」
「そうか、ならばあとは我々というわけか」

 ん?領主邸の3人は?

「ここ以外にも領主邸に居ると聞いていますが……」
「奴らは裏切り者だ、気にせんでよい」
「そうですか」

 ダッスが少々怒り気味だが、奴隷じゃなく領主邸に居るとなると何かがあるんだろうと思った。

「ところで青年、1つ頼みがある」

 何を頼まれるのかと思った。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...