【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明

文字の大きさ
上 下
125 / 195
VSヴォーネス共和国(クラリス教団)

第125話 ペンジェンの街 リンクル族の現状

しおりを挟む
 リースは恐らく海からペンジェンに侵入したんだろうな、自分も同様に海から侵入するか、いったんペンジェン付近に停泊している船の上まで縮地を使い移動した。

 沖合に停泊している船の甲板からペンジェンの様子を見ると、港付近で体格に見合わない大きさの木箱を運んだりして働かされている子どもたちが居た。

 ちょっと待て、もう深夜と言っても差し支えの無い時間帯のはずなのにいまだに働かされているって……、子ども達を見張っている人を見ると見慣れた格好をしていた。クラリス教団の兵士か、さてどうするか?

『ヒスイ、あそこで働かされている子ども達って』
『みんなリンクル族だね、あと左の方にある建物の中にも多くのリンクル族が囚われているよ』

 まて、今視認出来るだけでも5~60人以上いるように見えるが、まだいるのか?

『港の周辺だけで何人くらいいるの?』
『リンクル族ならいっぱいいるよ、左側の建物の中に居る子達は今休憩しているみたいだね』

 交代制か、それならまだいいけど……、とか思っていると“ドボン”何かが海に落ちる音が聞こえた。

 ん?と思い音の発信源を探すが、夜の海の為か良く分からなかった。

『あそこ、分りやすくしたけど』

 先ほどヒスイが多くのリンクル族が囚われているといった建物の端っこの方から下に緑色の光があった。

『目印を付けてくれたのか、サンキュ』
『いえいえ、亡くなったリンクル族の子を海に捨てたみたいね』

 拾いにいくか、船から縮地を使い、海上を移動し、海上を漂っているリンクル族の死体を拾い近くにあった船の甲板に戻った。

 ヒスイの明かりを頼りに死体を確認すると、リンクル族の男性だった。

 あちらこちらに殴られた形跡があり、頭蓋骨や肋骨など複数カ所の骨折があり神の手を使用すると、それ以外にも様々な怪我が見られた。

 この子1人だけが、殴られたりしているわけではあるまい、おそらくあそこにとらわれている子達は皆……、今度は死体の記憶を見るとヒスイの言っていた通り、建物内に多くのリンクル族が囚われていた、そしてクラリス教団が彼らを確保する理由が判明した。

 軍船の漕ぎ手として彼等を確保していたのだ。戦時は漕ぎ手、平時は物資の積み下ろし等が彼らの仕事だった。

 そして彼の死因は、兵達から暴行を受ける自分の娘を庇った事により、兵士の反感を買い虐待を受けたことによる死だった。

 知りたい現状を知れたし、死体の修復をはじめた。修復をしていると右手の甲にあった不思議な痣が消えた。最後に魂を戻し蘇生した。

「起きて」

 蘇生後男性に声をかけると、男性の目がゆっくりと開いた。

「ん……、娘は!?」

 男は最初ボーっとしていたが、意識を取り戻し行き成り叫んだ。

「静かに」
「あんたは、というかここは?」

 男の視線がこっちを見た。

「自分は秋津直人、ヴォーネス解放軍の者です。ここはペンジェン沖に停泊している軍船の上です」

 そう言って、ペンジェンの港を指さした。

「解放軍の人か!娘を!娘を助けてくれ!」
「わかっています。その前に、港エリアには何人の同胞たちが居るか教えてもらっても良いですか?」
「約1500位だこれでも大分数を減らした方だ……」

 なるほど、大半がクラリス教団の奴隷になっているって事か、というか首輪をしていなかったがどういう原理で奴隷になっているんだ?

「首輪をしていなかったようですが、どういった原理で奴隷になっていたんですか?」
「あん?それは……、って消えてる!?」

 男は自分の手の甲を見て驚いていた。

『呪術だよ、彼等の魂を縛っているのは呪いみたいなものだよ、さっき君が死体の修復をしていた時に、手の甲の痣が消えたでしょ?あれが彼等の魂を縛っている呪いの証、神の手があればすぐに呪いを解くことが出来るよ』
「わからん、ただ最初に拘束されたときに何か呪文の様な詠唱を唱えられた後魔法が一切使えなくなり、奴らの命令に逆らえなくなっていた」

 なるほど、呪いか……、適正属性とか関係あるのかな?あとでヒスイに聞いてみよう、今は彼をエスティアに連れて行く方法だな1500ものリンクル族を一気に救出するとなるとそれなりの輸送手段がないと、海を簡単に渡れる何かが欲しいと考えていると、居るじゃん良さそうな魔物が!

『ヒスイ質問なんだけどさ』
『うん?』
『トライベッカファルコンって、リンクル族を運べるかな?』
『それ位簡単じゃない?彼らの飛ぶ力を侮るなかれ!大人オルカを軽々持ち運ぶ力を持っているからね~』
『オルカを知らないんだけど……』
『しらないか~この辺にもいる魔物なんだけどね、そうだねーレイクシャークなら知ってるよね?』
『あぁ、湖の遺跡に居たやつでしょ?』
『うん、あれを軽々と持ち上げ飛ぶことが出来るよ。重いと飛行距離に問題ありそうだけど、絶対健康を身につけてるからエスティアまでは問題なく飛べるでしょ』

 彼等の救出手段が決まったな、トライベッカファルコンに、エスティアまで運んでもらう!これだ!

「エイダ!」
「はいなの~」
「どこから声が!?」

 リンクル族の男が驚いていたがスルーして、エイダに依頼することにした。

「トライベッカファルコン衆をペンジェン付近の上空待機命令を、あと1羽はここに連れて来て、以上!急いで!」
「わかったの~」

 それだけ言うと、エイダが姿を消した。

「トライベッカファルコンって、あんた魔物を従えているのか?」
「まぁそんなところです」

 とりあえず今回は1人だからトライベッカファルコン衆でいいが、1500ともなると一気に運べる手段が欲しいよな……、海の魔物とか従えられないかな?

『ヒスイ、大型の海の魔物って何が居る?』
『ん?有名どころだと、シーサーペントとかクラーケンじゃないの?』

 どちらも聞いた事があるな映画や、幻想世界の生き物だとかで……

『この湾内に何か居ない?』
『ん~この湾を出たところも大きな湾なんだけど、その大きな湾にヘインズホエールっていう10mそこらの魔物がいるよ』

 ホエールというからにはクジラだろうか?
 早い段階で仲間にしたいな、漕ぎ手が居ないと使えない船を引っ張ってくれれば一気に救出できるのにと思っていると。

「もどったの~」

 と、エイダの報告と同時に、バッサバッサと音を立てて、1羽のトライベッカファルコンが降りて来た。それと同時に、リンクル族の男が自分の後ろに隠れた。

「主か?姿が大分変っているが主だな」
「あぁごめんごめん、この姿も自分なんで仲間にも伝えておいてくれる?」
「了解した。こんな夜遅くに何かようか?」
「彼をエスティアまで運んでくれない?」

 そう言って自分の後ろに隠れているリンクル族の男をみた。

「構わない、乗せるというより掴んでいくがいいか?」
「構わない、えっと……名前は……?」

 そう言えば名前を把握してなかったなと思った。

「ジルだ」
「ジルさん、彼に捕まれてエスティアに行ってください、そしてヴィンザーさんに現状報告を」
「あんたエスティアは解放されたのか?」
「解放され、すでにヴェンダルの兵が抑えています」
「まさか……」
「事実です。既にオーレリア第1王女がエスティアに入っています」
「にわかに信じがたいが……、あんたと喋る鳥を信じるぞ……?」

 まだ疑っているのか、仕方ないので、アイテムボックスからSランクの身分証明をだした。

「暗くてよく見えないが、あんたS級冒険者か……」

 そういえば、自分の場合夜目スキルのおかげで、普通よりは明るく見えているのを忘れていた、現実的に考えると今は深夜で月明りくらいしかなかった。

「そうです、自分を信じてもらえませんか?」
「わかった!エスティアなり何処にでも連れて行け」
「ファルコン」
「あぁ」

 トライベッカファルコンが少し体を浮かし、男の両肩を掴み上昇していった。

「うぉ!?にいちゃん娘を頼む!たった1人の身内なんだ!」
「わかりました」

 自分だったら絶対にされたくないなと内心思いながらジルを見送った。

 彼らの姿が見えなくなったところで、改めて港を見た。

 よっし!手始めに港にとらわれているリンクル族救出といきますか!
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...