上 下
72 / 195
王都ヴェンダル

第72話 アーマーセンティピート

しおりを挟む
 山小屋を出て王都方面へ向かうと目の前には辺り一面森の木々でうめつくしていた。

 あの中にアーマーセンティピートがいるのかと思いながら、しばらく歩くと辺りは山道から林道になった。

『ナット、この先で馬車がアーマーセンティピート2匹に襲われている。』

 急ごう!行動速度上昇と連続縮地を使い現場に急行した。

 現場に着くと、どこかで見た事があるような馬車と冒険者と思しき6人が2匹のアーマーセンティピートに襲われていた。

 ラーネバンのスタンピード時に身に着けたヘイト集めの技を意識し叫んだ。

「秋津直人!助太刀します!」

 2匹のアーマーセンティピートのターゲットが自分になったため、2匹を引き受け馬車から離れ森の中に入った。

 2匹のアーマーセンティピートは、連携がとてもうまく、片方が自分の気を引いて、片方が自分の隙を見つけて突っ込んでくる動きをした。

 刀で切り払いながら鞘も使い殴ったり斬ったりしていくが、大きいだけあって多少切り刻んでも動じず果敢に襲ってくる。

 行動速度上昇使っているのに普通に動き回っているように感じた。

 そもそも2匹とも何処に心臓があるのさ……、斬っても斬っても動き回るし、1匹は頭を落としても動き回っている。

 なんで!とか思っていると、ヒスイが叫んだ。

『後ろ!』

 2匹の攻撃を回避しながら横に飛びのくと今まで自分いた所に2匹より1周り以上大きなアーマーセンティピートの頭があった。

 そして体を起こした奴は、左目と左の触覚がなかった。

「山小屋の人が言っていたやつか」
『だね~』
「頭を切り落としても動き回るのはなんで?」
『そりゃ、脳に代わるものが別にあるからさ』

 蛇とか脊椎のない生き物がそうだった気がするが、ムカデも……?

 3体のアーマーセンティピートと対していると頭を切り落としても動いていた奴が動かなくなった。

 あと2匹、大きいアーマーセンティピートが非常に厄介だ、体は大きいくせにあほみたいに素早い、行動速度上昇使っているっけ?と錯覚するレベルで素早い。足を切り落とし、頭を切り落としていくうちに、大きいアーマーセンティピートだけになり、大きいのも既に首無し状態だ1匹だけになったらあとは簡単だ行動速度上昇使いつつ縮地連続で切り刻んでいく、さすがにミンチになったら動かなくなった。

「なんか初めて魔物に手こずった気がする」
『切り刻むより、さっさと触れて殺せばよかったのに』

 そうでした神の手を使った方が早かった。

 襲われていた馬車の元に戻ると、馬と、2人の冒険者と見たことのあるメイドさんが、アーマーセンティピートの毒にやられているようで、横たわり苦しそうにしていた。手当をしようと近寄るとメイドさんはアヴェナラ侯爵の所にいたメイドだった。

 ということは、辺りを見回すと、冒険者に気にかけている男がこちらに気づいた。

「お、やっぱりナット君か、先ほどちらっと見た時君の姿が見えたからね、元気だったかい?」
「えぇ、まぁ……」
「どうだろう、彼女たちを治せそうかい?」
「診てみますよ」

 1人1人診ていくと普通のムカデに咬まれたような赤い腫れが見られた。体内に入り込んでいる毒素を消していった。

「これで大丈夫ですよ」

 馬と3人はそれぞれ体の感触を確認している様子だった。

「ありがとう、ところでなぜここに?」

馬車の向きを考えると、王都方面だよな……、王都へ行くとなったら一緒にと言われそうだから嫌だなと思った。

「ティファに向かっていたんですよ」
「そうか、反対方向か、王都に向かっているなら是非一緒にとおもったんだが……」

 やっぱり!

「道中気を付けてください」
「君もね、本当に助かったよ。それじゃあ出発しようか」

 侯爵の乗る馬車が王都へ向かったのを見送った。

『ヒスイ、この森って結構危険?』
『そりゃね~日中はアーマーセンティピートとシルバーウルフ位だけど、夜はブラウンベアーも動き出すからね、だからこの森を抜けるまでは休まずに進むのが鉄則みたいだよ』

 安心できる場所が無ければさすがに野営をしないか、しかたない、ここで会ったのも何かの縁だし、森を抜けるまで離れて見守る事にした。

 縮地を使い近くの木の陰に隠れつつ、木の陰から木の陰へと縮地を使い移動し馬車を追いかけ見守った。

 ヒスイが魔物の位置を言ってきたら先回りして討伐を繰り返し3日後の朝、侯爵の乗る馬車がようやく森を抜けた。

 3日間夜通しか、冒険者達も交代して馬車の中で休んでいたようだが、やりたくない仕事だなと思った。

『この先危険な所は?』
『もうちょっと進むと王国1の穀倉地帯に入るからあまりないかな』
『了解、それなら改めて王都へ急ぐか』

 侯爵たちを見守るために気を張ってたからかなんか疲れた。

 侯爵たちの一行を行動速度上昇と連続縮地を使って追い抜き王都を目指した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥ 財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。 ”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。 財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。 財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!! 青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!! 関連物語 『お嬢様は“いけないコト”がしたい』 『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中 『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位 『好き好き大好きの嘘』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位 『約束したでしょ?忘れちゃった?』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位 ※表紙イラスト Bu-cha作

【R18】溺愛される公爵令嬢は鈍すぎて王子の腹黒に気づかない

かぐや
恋愛
公爵令嬢シャルロットは、まだデビューしていないにも関わらず社交界で噂になる程美しいと評判の娘であった。それは子供の頃からで、本人にはその自覚は全く無いうえ、純真過ぎて幾度も簡単に拐われかけていた。幼少期からの婚約者である幼なじみのマリウス王子を始め、周りの者が シャルロットを護る為いろいろと奮闘する。そんなお話になる予定です。溺愛系えろラブコメです。 女性が少なく子を増やす為、性に寛容で一妻多夫など婚姻の形は多様。女性大事の世界で、体も中身もかなり早熟の為13歳でも16.7歳くらいの感じで、主人公以外の女子がイケイケです。全くもってえっちでけしからん世界です。 設定ゆるいです。 出来るだけ深く考えず気軽〜に読んで頂けたら助かります。コメディなんです。 ちょいR18には※を付けます。 本番R18には☆つけます。 ※直接的な表現や、ちょこっとお下品な時もあります。あとガッツリ近親相姦や、複数プレイがあります。この世界では家族でも親以外は結婚も何でもありなのです。ツッコミ禁止でお願いします。 苦手な方はお戻りください。 基本、溺愛えろコメディなので主人公が辛い事はしません。

忍を食らわば骨までも

にじいろ♪
BL
BL&R18です。 ポンコツ天然忍 ✕ お殿様 どっちもどっちな二人が繰り広げる、時代劇風純愛コメディ? 三人目も登場します。 いわゆる3Pあり。 短めになります。 これがエロかどうか+ツッコミ役は、もはや読者様に委ねたいと思います。 小説家になろう様でも同設定で投稿しておりますが、設定以外は大幅に変更しておりますので、ほぼ別物です。 寝る直前の寝ぼけた半目でご覧下さい。 にじいろ♪

【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで

あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。 連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。 ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。 IF(7話)は本編からの派生。

ストーカーはいけません。いいえ、仕事ですから

もずく酢
ファンタジー
かつての英雄達の物語を書いた世界的にも有名な両親の子供である青年レターは、両親の死から数年後に突然国王に呼び出され数日中に召喚する勇者の物語を書けと言われた。  そして勇者との恋に憧れていた王女の思いとは裏腹に召喚された勇者は女性だった。  そして実は勇者以上にチートに強い青年レターは自分の作る話にいらない敵をバッタバッタと倒していく。  最初は険悪だった青年レターと女勇者はいつの間に仲良くなっていき、そしてそこに青年レターが強いことを知った王女が思いを寄せていく。  メインで書いている話では無いので更新は不定期です。  月一くらいで更新が出来たらいいな~と考えています。  小説家になろうにも重複で載せています。

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453 の続きです。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

処理中です...