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冒険者時代

第35話 スタンピード遭遇

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 強行を決定してから、夜になりしばらく走っていると。

『溢れだした!このままだとラーネバン手前で迎え撃つことになるかも』

 夜と雨のせいで、視界が悪い、おまけに地面がぬかるみで進行速度がかなり落ちている。一応グアーラのライトボールで周囲を照らしながら走ってはいるが、これ以上速度を上げるのは難しいだろう。

『ラーネバンの街の様子は?』
『迎え撃つ体制は取れてるみたい。50人程の冒険者が北側、東側、西側の城壁の外で待ち構えてる。兵士や弱い子達は、城壁の上から弓を使うみたい。』

 無事防衛できることを祈る。

「グアーラさん、溢れ始めたみたいです!」
「まずいな、どのあたりか解らんが、ラーネバンまで、まだまだ先だろう出来るだけ急ごう」

 休憩を入れる度に神の手を使用し、馬の体力回復をした。

 どれだけ経っただろうか、走っていると遠くの方から“ズン”という音共に地面がかすかに揺れた気がした。

『もうすぐラーネバンが見えてくるんだけど、まずいかも、サイクロプス5体湧いてきた。』
『サイクロプス?』
『一つ目の禿げた巨人、大きい個体だと20m位になる。ラーネバンの冒険者達だけじゃ対処しきれない』

 20mの巨人とか、どういうパーティ構成になれば対処できるんだ?それが5体とか絶望的だと思うんだが、そもそもそんな魔物ダンジョンにいるのか?どういう原理で湧いてきたのかが非常に気になった。

『倒す手段なくない?』
『ナットなら簡単だよ、生き物だから、神の手を使えばすぐ片付く』

 あぁなるほど、神の手チートだな!神刀でも命を絶つイメージでやればすぐか。

「グアーラさん!もうすぐラーネバンが見えてくるそうです。ただサイクロプスが5体沸いたそうです。」
「さっきの地鳴りはそれか、最悪な状況だが、もうこれ以上強い魔物が沸く事はないだろう。」

 これ以上強い魔物が沸くことが無いってどういうことだ?

「どういうことです?」
「スタンピードの鉄則だが、ダンジョンに住む最弱種から始まり、最後は、そのダンジョンの最強種で終わるんだ、サイクロプスは、ラーネバンダンジョンの最強種というよりボスだからな」
「それを知ってるって、事は踏破者がいるんですか?」
「あぁおまえさんの両親と俺の3人で10年位前になるが踏破してるからな」

 思う、20mの巨人の攻略方法は何ぞやと……

「サイクロプスの対処方法ってなんなんです?」
「やつらは鈍いからな、回避すればいい、あとは急所をひたすら攻撃と言ったところだな」

 それって。ダンジョンだからなせるけど、街の防衛には向かない気がする。グアーラとのやり取りの間も、“ズン” “ズン”と奴らの足音らしき音と地震が続く。

「それって、街の防衛向きじゃないですよね?」
「だな、人は無事で済むかもしれんが、街自体は瓦礫の山と化すだろうな、街に接近する前に対処するしかないだろうな、さて、街が見えてきたぞ、ここいらで馬車を止めるぞ」
「はい!」

 はるか前方に、白い光がいくつもみえる。その白い光付近から、様々な色の光の玉が下に向けて撃たれているのが見えた。御者をしていたメイドが返事をし、馬車を止めた。

「さて、ナットお前は適当に暴れてこい、馬車は俺が何とかしよう。」
「了解!ならば!アースウォール!アイアンウォール!」

 馬車から半径30mに約10m程の鉄と土の壁を張り巡らせる。これでサイクロプスでもなければ大丈夫だろう。

「ありがたい、これなら大分防衛も楽になる。行ってこい」
「了解、健闘を祈ります!」

 壁を越え、神刀を抜き、心眼を使用して、魔物の群れに向かって突っ込んでいく、雑魚を倒してて思う、間合いがもう少し欲しい、子どもの身体じゃ……

『大人になればいいじゃない、アイテムボックスにある服なら一瞬でチェンジできるよ。』

 そんな便利機能があったのか、もうちょっと早く教えてくれてもよかった気がするが、今はサクッとチェンジしよう。

 神の手を使用しつつ、生前の自分の若き頃の姿に肉体チェンジしつつ、母親から貰った
父のお下がり着物に衣装チェンジ!

 間合いが伸びた事で、一度の斬撃で殺せる数が増えた気がする。雑魚を倒してて思うが、倒した奴らの死体が邪魔だ、足場がなくなっていくのがうざったい。

『アイテムボックスの自動収納機能をつかおう、ナットが回収問題ない物は全部回収できるよ!』

 自分の悩みに対してすぐさまアドバイスをくれるヒスイに感謝した。
 そんな機能もあったんだ。と思いつつ、自動収納を意識したら、勝手に収納されて周囲がゴッソリ空いた、仲間の死体を踏み越えてきたゴブリンやオーク達は、足場が消えた事で動きが止まったり転んだりしたものも居た。

『ナット、外で防衛している冒険者達が崩れかかってる。サイクロプスよりも彼らを優先して救助したほうがいいかも!』
『状況は?』
『7人魔素欠乏症でダウン、盾役を含む11人が怪我でまともに戦えない状況!』

 ん?50人中18人が、まともじゃないのに、崩れかかってるで済むのは個々の能力が高いからだろうか?普通に半壊とか撤退すべき状況なきがするが、急ぎ救援に向かおう。

『ヒスイ、サイクロプスの動き注意で』
『OK!まずは正面の東城門近く、ここが一番まずいかも、12人中7人ダウンしてる!』

 5人で負傷者を守ってるってことか、救助に駆け抜けたいが、雑魚が邪魔すぎる!

『ナット、縮地使いなよ、君の縮地は、極めてるから足場気にしなくていいよ』

 いつだったか、そんなこと言ってた気がする。それはある意味空を駆け抜ける事が出来るって言う事だろうか?高所恐怖症だからそんなことはしないが……

 目の前にいるゴブリンの頭を踏みつけるつもりでジャンプし、縮地を使用し明かりの灯ってる東城門へ駆けぬける!

 思った以上にまずい状況だ、城門開ければ、魔物どもがなだれ込むから負傷者を救助できない、12人の冒険者達は城門を背に戦っているという悲惨な状況だ。

「秋津直人!助太刀します!」
「外からきた冒険者か!」

 盾を持った人達の周辺の魔物たちを熱の与奪魔法を使用し、凍死させ、アイテムボックスに収納!出来たスペースに降りた。

 心眼を解除し、目を開け辺りをみると、思っていた以上に明るい。城壁の上のライトボールのお陰だろうか?

「今のうちに怪我人と共に街の中に入ってください、ここは自分が引き受けます!」

 盾役の人達に魔物たちが集中していたことを考えると、ヘイトを集めるスキルの様なものがあるんだろうか?

『ヘイトを集めるスキルはある?』
『あるよ、自分を狙え!とか思いながら叫んだりすればいいよ』

 叫ぶの?それはちょっと恥ずかしいし無理だな、“叫んだり”と言ってた辺り叫ばなくても出来るって事か、ならば、自分を狙え!と思いつつ。

「自分の名は、秋津直人!死にたい奴からかかってこい!」

 名乗り上げただけだけど、結局は叫んでるな、ヘイトを稼ぐ効果はあったようで、魔物たちが自分に集中し始めた。

「今のうちに!負傷者だけでも!」
「感謝する!」

 負傷者たちを抱えている冒険者達を巻き込まないように、熱の与奪魔法を使用し、自分の周辺の大気の熱を奪い、-30℃ほどに下げていく。周囲の魔物の動きが止まっていく。それだけでも、死んでいく魔物も多数居るが、まだ動けるものもいる、いつまで続くかな?

 今は大ぶりの雨が続いている中の-30℃だ、雨がみぞれに変わってきている。正直自分も少し寒い為に自分周囲の空気だけ常温にした。

 背後で城門が少しだけ開き、負傷者の救助が始まった。

「可能なら無事な皆さん退避してください!」

 正直このまま居座られると巻き込みかねない。

「1人でこの数は!」
「あなた方が邪魔で本気を出せないんですよ!目の前の雑魚どもみたいになりたいなら残っていて構いません!」

 目の前には、動きが止まり、凍り始めている魔物たちが多数いる。まだ死亡扱いじゃないためか、アイテムボックスに収納されない魔物も多くいる。それでも小柄なゴブリンたちはだいぶ消えた。

「すまない!恩に着る!」

 そう言い、残っていた冒険者の撤退確認、さぁ遠慮無用だ、城壁の内側には影響が出ないように、常温を維持できるようにし、城壁の外は、絶対零度をイメージしさっさと凍死させていく周辺の魔物たちがゴッソリいなくなったのを確認し、常温に戻していった。

 ただ、暖気と寒気を作ったせいか、雨が酷くなってる気がした。

 さて、残す北と西側とサイクロプス討伐をしよう。
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