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冒険者時代
第30話 幕間 グアーラの試練1
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グアーラ視点
もう何十年前だろうか、浮遊大陸から追放されて冒険者として生きてきた。
ようやくだ、ようやく、帰る手段のヒントが得られた。
◇◇◇◇◇◇
想い出
浮遊大陸の端の崖にいた。目の前に母がいる。横には長兄、次兄がいる。
「さてお前たち、これからお前たちに試練を与える。」
今更何をと思った。なぜなら母からは常に戦い方を学んできた。起きているときはもちろんだが、寝ているときにも襲ってくることが多々あった。常に戦場に居ると思え!安心して寝れる場所なんぞないと思え!それが母の信条だった。
おかげで戦う術を身に着ける事ができたが、安心して安らげる場所なんてなかったが。
「母上、今度は何ですか」
悪い笑みを浮かべる母を見て嫌な予感しかしなかった。
「なぁに、これから誰に次代の天神の座を誰に譲るか決めるための試練をしようと思ってね。」
「ほぉ」
長兄と次兄は天神の座を狙っていたのを知っている。母の言葉に対して真っ先に興味を持っていた。
俺は正直興味が無かったただこの地を離れ幼馴染と安心できる地でのんびりできればと思っていた。
「それで母上、試練とはどのようなもので?」
次兄が応えた。
「そうだね、簡単な事さ、この地に戻ってくること、一番最初に戻ってきた奴に、天神の座とサキとの結婚を許そう」
それを聞いて放棄するわけにはいかなくなった。サキとの結婚の件は兄達には譲れないからだ。天神の座よりもそっちが俺にとっては大事だった。
「ほぉそれは、グアーラのやる気の為ですか?」
長兄の問いに対して母は言った。
「そうだ、グアーラが天神の座に興味ないのは知っているからな、グアーラお前も好きな子を取られたくないなら本気を出せ」
「わかりました……」
この試練を放棄するわけにはいかなくなった。
「ところで母上、この地に戻ってくるとは、どういうことですか?どこに飛ばされてもすぐに終わりそうですが」
「そうだな、だからこうするんだよ」
母が指をパチンと鳴らすと、背中に激痛が走った。
「っ」「痛っ」と横から聞こえた。どうやら自分だけじゃなく、兄達も同じように痛みが走ったらしい。
「じゃあね、おまえたち、早く帰って来いよ」
その声が聞こえた瞬間、浮遊大陸から突き落とされていた。急ぎ態勢整えようと思ったが、整えられない、気づけば背中の羽がなくなっていたのだ。
なるほどそういう事か、先の激痛は羽を奪われたという事か、自由落下しながらのんきにそんなことを考えていた。
どのみちこの下は海だ、近くの秋津までがんばれば泳げなくもないが、少しでも無駄にしないために、背中から落下している体制を変え、腹を下にし、だいの字になった。はるか遠くに秋津の国が見えている。少しでも秋津の方向に向かえるように体制を調整した。
この先どんな事が待ち受けているのか気になるが、あの母から解放されたという嬉しさと同時に、幼馴染を取られたくないという気持ちが襲って来た。
「兄達に負けるわけにいかんな、とりあえずは秋津で冒険者登録だろうか?」
自由落下しながら今後どうすべきか考えた。
もう何十年前だろうか、浮遊大陸から追放されて冒険者として生きてきた。
ようやくだ、ようやく、帰る手段のヒントが得られた。
◇◇◇◇◇◇
想い出
浮遊大陸の端の崖にいた。目の前に母がいる。横には長兄、次兄がいる。
「さてお前たち、これからお前たちに試練を与える。」
今更何をと思った。なぜなら母からは常に戦い方を学んできた。起きているときはもちろんだが、寝ているときにも襲ってくることが多々あった。常に戦場に居ると思え!安心して寝れる場所なんぞないと思え!それが母の信条だった。
おかげで戦う術を身に着ける事ができたが、安心して安らげる場所なんてなかったが。
「母上、今度は何ですか」
悪い笑みを浮かべる母を見て嫌な予感しかしなかった。
「なぁに、これから誰に次代の天神の座を誰に譲るか決めるための試練をしようと思ってね。」
「ほぉ」
長兄と次兄は天神の座を狙っていたのを知っている。母の言葉に対して真っ先に興味を持っていた。
俺は正直興味が無かったただこの地を離れ幼馴染と安心できる地でのんびりできればと思っていた。
「それで母上、試練とはどのようなもので?」
次兄が応えた。
「そうだね、簡単な事さ、この地に戻ってくること、一番最初に戻ってきた奴に、天神の座とサキとの結婚を許そう」
それを聞いて放棄するわけにはいかなくなった。サキとの結婚の件は兄達には譲れないからだ。天神の座よりもそっちが俺にとっては大事だった。
「ほぉそれは、グアーラのやる気の為ですか?」
長兄の問いに対して母は言った。
「そうだ、グアーラが天神の座に興味ないのは知っているからな、グアーラお前も好きな子を取られたくないなら本気を出せ」
「わかりました……」
この試練を放棄するわけにはいかなくなった。
「ところで母上、この地に戻ってくるとは、どういうことですか?どこに飛ばされてもすぐに終わりそうですが」
「そうだな、だからこうするんだよ」
母が指をパチンと鳴らすと、背中に激痛が走った。
「っ」「痛っ」と横から聞こえた。どうやら自分だけじゃなく、兄達も同じように痛みが走ったらしい。
「じゃあね、おまえたち、早く帰って来いよ」
その声が聞こえた瞬間、浮遊大陸から突き落とされていた。急ぎ態勢整えようと思ったが、整えられない、気づけば背中の羽がなくなっていたのだ。
なるほどそういう事か、先の激痛は羽を奪われたという事か、自由落下しながらのんきにそんなことを考えていた。
どのみちこの下は海だ、近くの秋津までがんばれば泳げなくもないが、少しでも無駄にしないために、背中から落下している体制を変え、腹を下にし、だいの字になった。はるか遠くに秋津の国が見えている。少しでも秋津の方向に向かえるように体制を調整した。
この先どんな事が待ち受けているのか気になるが、あの母から解放されたという嬉しさと同時に、幼馴染を取られたくないという気持ちが襲って来た。
「兄達に負けるわけにいかんな、とりあえずは秋津で冒険者登録だろうか?」
自由落下しながら今後どうすべきか考えた。
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