【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明

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冒険者時代

第22話 夢見亭

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 冒険者ギルドを後にし、近くにある夢見亭までやってきた。
 結構おおきな建物だった。建物の前でグアーラが立ち止まった。

「ここだな、飯は旨いからな、食堂は人気があるぞ」

 はたして今もそうなのだろうか?
 常設枠にあった急募調理サポートの依頼票が頭から離れない。

「混み始める時間だからな、さっさといくか」
「ほい」

 建物の中に入ると、既にごった返していた。空いてる席なんてなくないか?

「こんな時間から混んでるなんて珍しいな、座れる場所がないし、先に宿をとっちまうか」

 カウンターに行くもだれも居ない、

「女将一部屋たのみたいんだが」

 グアーラが、奥の厨房らしき場所に向けて大声をあげる。

「はいよ、すまないがちょっと待ってっておくれ」

 奥から、おばちゃんの声が聞こえた。
 常設依頼枠にあった依頼票の件と、グアーラが言った。こんな時間から混んでるのは珍しいと、そしてさっきから、“料理はまだか”等の苦情があちらこちらから聞こえるのを踏まえると。

 おそらく普段調理している人に何かあったんだろう、ケガや病気系なら力になれるのになぁと思った。

『ここのご主人が、足を怪我して歩けないみたい。それで調理できる人を募集してたみたいよ』

 ヒスイの情報収集能力が凄すぎて涙が出る。そうだよね、ここ木造建築だしね、ヒスイには筒抜けだよね。

『サポート雇えてるの?』
『雇えてるけど、大して力になってないみたいね』

 まぁ、そうだよなぁ、ピークタイムはこれからだろうし、ピークタイム以前の状態でさばけてないならそういうことだよね、夕飯はあきらめるかな……

 しばらく待っていると、奥からおばちゃんが出てきた。

「待たせてすまないね、宿を希望との事だが、何泊だい?」
「1人部屋で、とりあえず2泊だな。」

 グアーラが代わりに答えてくれた。

「そうかい、それなら、大銀貨5枚だよ。」

 グアーラがこっちを見たので、自分は、先の討伐で貰った金貨をだした。

「まいど、お釣りの大銀貨5枚だよ、3階一番奥の部屋を使いな」

 女将から木の棒のようなものを受け取った。先端が変な形状をしていて305と書かれていた。これは部屋番号と鍵かな?

「どうも」
「ナット、夕飯はもう少し空いてからでもいいか?」
「大丈夫です。」
「そうか、空いたら呼びにいくから部屋で少し休んどけ」

 まぁその方がいいか、グアーラに案内され自分の部屋に入った。

「んじゃ、またあとでな、寝ててもいいぞ」
「はい」

 グアーラと別れて一息つく、さて夕飯まで何をするかな?

『ねぇねぇ、ナットはさ、調理極めてるんだから手伝ってあげれば?』
『手伝うって事は、少し考えたが子どもの姿じゃ足手まといだろ』
『自分に神の手使えばいいじゃん、大人の姿になれば』

 ……確かにその発想は何度かしたが、自分の身体を操作するのに抵抗があった。
 せっかくの機会だし、やってみるか、右手を自分の胸に当て、神の手発動させる。

 すると徐々に体が大きくなる。視線が上昇すると同時に体中が締め付けられる痛みに襲われた。

「痛たた」
『そりゃ服着たままやるとそうなるよね~服脱いでからやらないと……』

 子供服が自分の身体を締め付けている……
 いったん体のサイズを戻し全部脱ぎ改めて、神の手発動。

 身体が大きくなり、視線が上昇する。18歳位でストップ!

『わ~お、かっこいいお兄ちゃんだ~』

 自分の目の前で浮いているヒスイ、女性の声で褒められるのは悪くないな、ただなぁ、全裸を見られるのも少し恥ずかしいものがある。
 
『その顔だと、グアーラに遭遇したらばれない?』

 あ~顔も変えておくか、せっかくだし、転生前の本来の自分の顔にしておこう。今度は自分の顔に手を当てて、かつての自分をイメージする。

『黒髪、黒目!』

 アイテムボックスから鏡を……と思ったけど、持ってたっけ?
 自宅の洗面所以外に鏡なんて無かった気がする。

 まぁいいや、窓ガラスをつかって自分の顔をチェックすると、懐かしい顔だ、50年以上前に見た自分の顔がそこにはあった。

『へぇ、これがナットの転生前の顔なんだ~優しそうでかっこいいね~』
『ありがとう、お世辞でもうれしいよ』
『ふふふ、お世辞じゃないのに~』

 服は、この世界にあうようなのは持ってないからな、母親から貰った父親のおさがり着物くらいだが、あれを着る位なら、ジーパンに、Tシャツ、スニーカーでいいだろう、どっちも目立つし、とりあえず、ジーンズやTシャツを着用していく、久々に眼鏡もかけてみるが、度が入ってるから駄目だ……

 これでいいか、厨房の手伝いをしにいくか、部屋を出て下に下り、先のカウンターまで戻った。

「すいません~」

 声かけると、今度はすぐにおばちゃんが出てきた。

「なんだい?」

 少々不機嫌な返しだったが、気にせず続けた。

「調理スキルあるんですけど、何か手伝いましょうか?」
「ほんとうかい! たすかるよ~今は猫の手も借りたい状態でさ~、お兄さんこっちに回り込んで」

 不機嫌な返しから一転し、凄く機嫌のいい返しになった。おばちゃんに言われるがまま、カウンターの中に入っていき、そのまま厨房に通された。

「普段やってる旦那が足を怪我しちゃってね~」

 その辺の事情は、ヒスイから聞いてるから問題ないのだけど、厨房が散らかりすぎ!

 とりあえず、今稼働しているのは。おばちゃんと、その娘さんと思われる女性と、男女の子どもたち3人だ。

 子供たちは、皿洗いに、野菜の皮むきか、ジャガイモと人参か?まぁ妥当だろう、メインで調理しているお姉さんは、普段調理しないんだろうなぁ、手に切り傷がちらほら…… こりゃ自分が調理したほうがいい奴か?

「何を作ればいいですか?」
「調理ができるなら、調理を頼んでもいいかい?」
「構いませんよ、ただ、お宅のレシピしらないんで、自分流になりますが」
「それ位構わないよ、そうだねぇ、お兄さんこの国の人間じゃないだろう?」
「そうですね、ヴェンダル王国出身じゃないですね」
「なら、お兄さんの国の料理を作ってくれないかい?」

 日本料理を? 再現できるのか? 作るとしたら寿司とか肉じゃがなんかだろうか?
転生してから、主食はパンだったし、米なんて食べてないからな、キャンプ飯にするか?

「いいんですか?看板に泥を塗るかもしれませんよ?」
「大丈夫さ、あたしの勘がお兄さんの自由にさせろって言ってるのさ」
『このおばちゃん、直感スキル高いからあたると思うよ?』

 直感もスキルなのか、身に着けたいな……

「わかりました。それでいいなら、お客さんらの対応はお願いしますよ」
「はいよ、それ位は任せな、ミントお前も、兄さんに変わってもらってフロアにでな」
「はい」

 さて、キャンプ飯の定番カレーから作るか、寸胴鍋を2つ取り出す。両方とも、子どもたちが皮をむいていたジャガイモと人参をサクサクっと一口大にカットし鍋にいれる。同時に、持ち込んでる豚肉も適当に刻み鍋に入れる。熱の与奪魔法発動させ、さっさと野菜と肉に火を通した。水を入れて、市販のカレールゥをアイテムボックスから取り出し多めに入れる。そして水も熱の与奪魔法で、一気に温める。これで、野菜にルゥの味がしみ込めばいいんだがなぁ…… 

『なぁ、ヒスイ』
『ん?』
『この中に入れた野菜に周りの味をしみこませたいんだけどできる?』
『ん~どうすればしみ込むのかな?』

 はて、その原理は知らないな……、ただカレーは一晩寝かせると美味しくなるって位だ、そうなると冷やして長時間置けばいいのか? 時間か冷やすって事だが、おそらくは前者ならすぐには無理か、圧力鍋買っておけばよかった!

 ないものは仕方ない、カレーはこれで良いだろう、

「おかみ!カレーっていう料理だ、このスープをパンと一緒にだしてくれ」
「さっきから、いい匂いが気になっていたが、色はあれだけどおいしそうだねぇ、わかったよ」

 フロアはどうしてるんだろう?
 特別メニューとか言って出してるのだろうか?
 時間がかからずに出来る料理はなんだろうか、
 とりあえず考えながら燻製を作ろう、桜チップを、取り出し鍋の底に敷いてると。

『あれ?ユグドラシルじゃん~』

 ヒスイ何言ってるの? 

『これ桜だよ? 桜の木の木くず』
『ユグドラシルだよ~私が間違えるわけないじゃん~ピンク色の花が咲くやつでしょ~?』
『確かに、ピンク色の花が咲くけども……』

 植物の大精霊が間違えるわけがないと思うけど、もしかしてこの世界じゃ、桜=ユグドラシルなのか?

『あとで、神の手使って育ててよ~』

 木くずからできるのか?

『はいよ、あとでな』

 手を進めていく、木くずに適当に熱を与えて煙を出していく。

 その上に、厨房にあった。チーズだの、ステック状に切った野菜だの、腸詰肉だのを乗せていぶして行く、チーズには熱の与奪魔法で、熱くならないようにしておく。

 さて他には、肉があればいいんだけどなぁ、ファイティングカウ解体しておくんだった。
 無いものを考えても仕方ない、持ち込んだ牛肉を使うか、薄くスライスしてある牛肉に、塩を軽くまぶして、水分与奪魔法発動!水分をすべて抜くと。出来たビーフジャーキー!同じ要領で、ポークジャーキーも作り、燻製中の鍋に入れていく。

 厨房の食材庫を見ると、まぁ色々な野菜や肉がある、生卵が無いのか、そういや村でも食べたことなかったな……

 色々やっていると、盛況なのか、カレーの無くなりがはやく、燻製類も消費が激しい。追加のカレーやら、燻製やらを作ってると、おばちゃんが厨房に来た。

「兄さんに任せてよかったよ!茶色いスープはみんな美味しいって食べてくれるよ、この匂いのする肉なんかも、酒飲み共には人気があっていいねぇ~」

 そりゃよかった。燻製料理って酒のおつまみってイメージが強いからな。

 その後は、あるもので色々な物を作ってるだけで、時間が過ぎていった。
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