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第七章 女神、その降臨のとき
泥濘の中の雨
しおりを挟む――神は願いを叶えてくれたのか?それともアノヒトの恩情の賜物か?――
あの日より再会を望み続けいた女神に、辿り着いたこの時、僕はそう考えた。
彼女はそこに座っていた。
あの日と同じ物腰で、アノヒトに似たその笑みを僕に向けている。
あの頃、僕は抜け殻のような毎日を送っていたんだ。
アノヒトに捨てられ自暴自棄になっていた。
(あんなに愛してくれていたのに!貴方だけは特別だって。なのに何故?僕に何が足り無いの?一体そいつの何が僕より良いっていうんだ!何が違うって?教えてよ先生!)
一日中この事ばかり考えてた。
(どうして要らないなんて言うのさ。何も望まないよ。ただ傍に居ることを許して欲しいだけ。邪魔なんかしないよ。なのに駄目なの?想い続けるのも?死にたい……必要とされないなら消えて無くなりたい……こんな自分は死ねばいい……)
アノヒトの事を恨みきれず、只生き長らえているだけのこの身を呪うしなかった。
大学で授業など受ける気になない。 部屋に籠り、昼夜を問わず飲めないビールを煽る。
やることも無く、酔っ払いふらふらと足が向くのは別れを告げられた公園だ。
此処に居たって何も為らない。
分かっているけど来る場所が他には無い。 帰りたい家ではきっと、僕と違う誰かを、アノヒトは抱き合っているだろう。
「戻るのを禁じられて。忘れるよう命じられて。僕に何処へ行けと言うの!此処しか無いじゃないか!」
幻に向かって叫ぶ。
傍らの芝生の上に、拾い集めてきた空き缶や酒瓶を広げ、拠りわけていたボロを纏う男が、僕の声に驚き身を固くしたが一瞥をくれ、上を向き片手を天に翳し、今度は選別終えたゴミだけ袋詰めし始めた。 通り雨か、ポツポツと地面が木の葉が音を立て始めた。
日も高い時間から酔っ払い、人目を気にせず喚く僕に、そんな者ですら蔑みの眼を遣ってる。 空まで僕を馬鹿にする。 もういい、どうでもすればいい、ずぶ濡れになって死ねれば本望だ。
「チクショ!雨だ!雨が降ってきやがった!お前などクソだ!」
雨足はどんどん強くなってくる。 嘲笑うか、それとも黙れと云うのか、その粒が激しく僕の顔を叩く。 髪から顎から夥しく流れ落ちる。 そしてシャツから肌をつたい、生温くなり靴へと這い入る。
僕は灰色の空と、その上にいるだろう神を睨みつけたまま哭き続けた。
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