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出会いと日常
陸上部2(回想)
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俺は走ることが嫌いになったんじゃない。そう言ったの覚えているだろうか。
陸上部を引退してから俺は学校終わって夜走ることを習慣化していた。何か行き詰まったり、むしゃくしゃするとこうして外に走り出したくなる。なんかそういうのがこの何年かで体に染み付いてしまった。体を鍛えるためとか記録を伸ばすとかそんなためではない。ただなんとなく、あの夜も走っていた。
俺のランニングコースは家から近所にある公園までだ。いつもその公園を中間地点としてインターバルをはさむ。
今日もその公園で休憩を挟んだ。いつもの奥のベンチに座ってふう、と息を吐く。頭を重力に任せてもた下げると、軽く汗がポタポタと垂れた。
「そんなにがむしゃらに走るといつか倒れちゃうよ」
突然知らない声が頭上から降ってきた。
びっくりして顔を上げると、暗くてよくは見えなかったが茶髪の綺麗な顔をした男がいた。スポーツ用のスウェットを着ているようだが、スラリとしたシルエットは雑誌のモデルのようだ。
そんな彼はなぜか、はい、とペットボトルを差し出してきた。知らない人間からペットボトルを渡されるという不審な動きに思わず俺は眉をしかめる。しかし、俺のその顔を見て、綺麗な男はあははっと大きく笑った。その顔は思ったより幼っぽくて、大人ではないかもしれないと充希はポツリと思った。
「そんな怖い顔しなくても大丈夫、ただのミネラルウォーターだよ。開けてもないし不安なら俺が毒味をしてもいい」
そう言ってもう一度ペットボトルをこちらへ差し出した。どうする?という表情に俺は「ありがとうございます…」とペットボトルを今度は素直に受け取った。
キャップを開けて口をつける。水が喉を通っていく。体が潤って、ゆっくりと飲み口を下ろした。
男は俺を飲んだのを確認すると、「きちんと休まないと体にも悪いし、効率も悪くなっちゃうよ」と笑顔で言った。
「効率?」
「そう。足はやくなるために走ってるんじゃないの?」
「いや、俺は息抜きで…」
「それにしてはいつも全力疾走で走ってるね」
隣座っていい?と言われ、どうぞと少し左にずれる。そこで見た隣に座った男は本当に大層整った顔をしていた。目は小さくはないが切れ長で、鼻も高く真っ直ぐ通っている。唇の形でさえ綺麗で、頰も肉付きがスッキリとして顔がなんせ小さかった。イケメンというよりは綺麗な整った顔をした男は、こちらを見ると「咲山高校?俺もそこの生徒なんだよね」とニコリとまた人当たりのいい笑顔を向けた。
「何年?」
「1年です」
「俺も1年!当たってて良かった。先輩だったら怒られてた」
「確かに」
「そっかぁ。じゃあよろしくね」
「あ、はい」
思わず握手を求められ、空いている方の手で彼の手を握り返す。彼は握手したまま俺を見つめた。
「走るの、好きなの?」
「うーん……そうかもしれない」
「そしたら一緒に走ろうよ」
「え?俺と?」
目を細めて頷かれた。握られた手の体温が手のひらに伝わり、彼が近くにいることを感じてしまう。突然の提案も、その握られた手のせいなのか、断る自分が想像できなくて結局町内を2人で一周した。その間に折々2人で会話をしていたが、会話の上手い彼とは話が弾み、1人で走るよりは少し楽しかった。
最後に彼の名前を聞けば『真悠』だと教えてくれた。まゆう、と声に出してみると「可愛い発音するんだね」と頭を撫でながらクスクス笑われた。彼の身長は俺よりも頭半分ぐらい高く、撫でられている光景が同い年同士なのに年下扱いされてるようで恥ずかしかった。
「また一緒に走ろうね、充希」
真悠は美しい顔で俺を見てそう言ったのだった。
陸上部を引退してから俺は学校終わって夜走ることを習慣化していた。何か行き詰まったり、むしゃくしゃするとこうして外に走り出したくなる。なんかそういうのがこの何年かで体に染み付いてしまった。体を鍛えるためとか記録を伸ばすとかそんなためではない。ただなんとなく、あの夜も走っていた。
俺のランニングコースは家から近所にある公園までだ。いつもその公園を中間地点としてインターバルをはさむ。
今日もその公園で休憩を挟んだ。いつもの奥のベンチに座ってふう、と息を吐く。頭を重力に任せてもた下げると、軽く汗がポタポタと垂れた。
「そんなにがむしゃらに走るといつか倒れちゃうよ」
突然知らない声が頭上から降ってきた。
びっくりして顔を上げると、暗くてよくは見えなかったが茶髪の綺麗な顔をした男がいた。スポーツ用のスウェットを着ているようだが、スラリとしたシルエットは雑誌のモデルのようだ。
そんな彼はなぜか、はい、とペットボトルを差し出してきた。知らない人間からペットボトルを渡されるという不審な動きに思わず俺は眉をしかめる。しかし、俺のその顔を見て、綺麗な男はあははっと大きく笑った。その顔は思ったより幼っぽくて、大人ではないかもしれないと充希はポツリと思った。
「そんな怖い顔しなくても大丈夫、ただのミネラルウォーターだよ。開けてもないし不安なら俺が毒味をしてもいい」
そう言ってもう一度ペットボトルをこちらへ差し出した。どうする?という表情に俺は「ありがとうございます…」とペットボトルを今度は素直に受け取った。
キャップを開けて口をつける。水が喉を通っていく。体が潤って、ゆっくりと飲み口を下ろした。
男は俺を飲んだのを確認すると、「きちんと休まないと体にも悪いし、効率も悪くなっちゃうよ」と笑顔で言った。
「効率?」
「そう。足はやくなるために走ってるんじゃないの?」
「いや、俺は息抜きで…」
「それにしてはいつも全力疾走で走ってるね」
隣座っていい?と言われ、どうぞと少し左にずれる。そこで見た隣に座った男は本当に大層整った顔をしていた。目は小さくはないが切れ長で、鼻も高く真っ直ぐ通っている。唇の形でさえ綺麗で、頰も肉付きがスッキリとして顔がなんせ小さかった。イケメンというよりは綺麗な整った顔をした男は、こちらを見ると「咲山高校?俺もそこの生徒なんだよね」とニコリとまた人当たりのいい笑顔を向けた。
「何年?」
「1年です」
「俺も1年!当たってて良かった。先輩だったら怒られてた」
「確かに」
「そっかぁ。じゃあよろしくね」
「あ、はい」
思わず握手を求められ、空いている方の手で彼の手を握り返す。彼は握手したまま俺を見つめた。
「走るの、好きなの?」
「うーん……そうかもしれない」
「そしたら一緒に走ろうよ」
「え?俺と?」
目を細めて頷かれた。握られた手の体温が手のひらに伝わり、彼が近くにいることを感じてしまう。突然の提案も、その握られた手のせいなのか、断る自分が想像できなくて結局町内を2人で一周した。その間に折々2人で会話をしていたが、会話の上手い彼とは話が弾み、1人で走るよりは少し楽しかった。
最後に彼の名前を聞けば『真悠』だと教えてくれた。まゆう、と声に出してみると「可愛い発音するんだね」と頭を撫でながらクスクス笑われた。彼の身長は俺よりも頭半分ぐらい高く、撫でられている光景が同い年同士なのに年下扱いされてるようで恥ずかしかった。
「また一緒に走ろうね、充希」
真悠は美しい顔で俺を見てそう言ったのだった。
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