4 / 5
4
しおりを挟むーーーーーーーーーーー
「あ、タルト」
「あ」
食事を終えた俺とやっくんは教室に戻ろうと廊下を歩いている途中、つい数時間前に中庭に連れ出した美しい男と偶然にもまた顔を合わせてしまった。
いつのまにか俺のあだ名は『タルト』に決定されてしまったようだ。
見知ってる感じの俺の雰囲気に、やっくんは一気に不機嫌になった。
「泰宿。だれ、こいつ」
明らかに敵視したような不機嫌な口調に俺はハラハラとする。これはやっくんの悪いところだ。こうやって警戒強く飛びついてしまうと、ろくなことがない。
「あ、やっくん、この人は」
「タルト、あそこに花をまた植えようと思うんだけど何がいい?」
やっくんの機嫌を直そうと弁解しようとしたのだが、敵意を向けられた本人はなんともなかったように無視して俺の方へずいっと割り込んできた。
「なんのお花が好き?タルト」
やっくんも俺より5センチほど背が高いが、それよりも高身長な彼は体を屈め、グッと俺に顔を近づける。やっくんのことは視界に入っていないようだ。
「あ、えと、ひまわり?」
「向日葵!いいね、学校で大きく育つかな~」
「っおい!なんだよ、てめえ。泰宿に近づくな!」
一瞬気後れしたやっくんが急いで噛み付くように間へ入り込み、俺と美形さんの距離を取らせた。
「近づきすぎだ!」
「だれ?」
「こっちこそ誰だてめぇ!俺は泰宿の幼馴染みで親友だ!」
「へえ…。タルトって親友いたんだ」
やっくんの頭の横からひょこっと顔を出してこちらに尋ねてきた。その馬鹿にされた態度にやっくんの怒りはますますヒートアップする。
「てめえ、その態度…もしかして、縁神か!」
「あ、そうだよ」
「!!……てめえ…泰宿にはもう俺がいるから、お前なんかいらねえんだよ消えろ!」
「?どういうこと?なんで君にそんなこと言われなくちゃいけないの?」
「お前みたいなやつが考えてることなんかわかるんだよ!泰宿の親友の座取ろうとしてんだろ!だがな!俺が泰宿の1番の親友なんだよ!」
わーっ、始まっちゃった…。やっくんの勘違い。
今日はやっくん厄介デーだ。なんで今日はこんなに彼の悪いところばっかり出てくるんだ。
やっくんはとても頑固で神経質で、人間関係に敏感だ。だからか、俺の人間関係にもとやかく煩い。
特に俺と仲良くしてこようとするやつがいると、「俺を通してから泰宿と話せ!」みたいな謎の関門システムを発動してくる。彼が言う理論は「泰宿は俺の1番の親友だから、俺が1番お前のこと知ってないとダメだろ」らしい。
しかも、やっくんも自分と仲良くなった奴は俺に見てほしいらしく、この前は将棋センターでなかよくなった75のおじいちゃんを紹介された。別に人間関係や交友関係は個人の自由だと思うよ…。
まあ、そういうやっくんの1番恐れるところが、『俺の親友』を取られるということらしい。
だからこうやってたまに、知らない人に対して過剰に敵対心を燃やしてしまい、トラブルになってしまう。
「だからてめえみたいなやつには泰宿にはいらねえの!」
「ふーん…でも、僕、タルトの親友になりたいわけじゃないよ」
「はあっ?!ほんとか?」
「うん」
食い下がろうとしないやっくんに、縁神はうんうんと何度も頷いた。
「だって俺、親友じゃなくてタルトの恋人になりたいもん」
「はい…?」
パードゥン?
「タルトの恋人になりたい。ね、いい?」
もう一度発された『恋人』というワードにやっくんと俺の大きな叫び声が学校中を震わした。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
それはきっと、気の迷い。
葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ?
主人公→睦実(ムツミ)
王道転入生→珠紀(タマキ)
全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?
台風の目はどこだ
あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。
政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。
そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。
✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台
✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました)
✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様
✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様
✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様
✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様
✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。
✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる