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しおりを挟む学校から飛び出して気づけばいつもの交差点に居た。
駅へともうすぐ着くが、手が変に震えて、動悸が治らない。
嫌い嫌い嫌い嫌い、みんな嫌い。
どうせ俺のことなんか見てないんでしょ?
俺のことどうでも良い虫けらとでも思ってるんでしょ?
都合の良い肉便器ってすら思ってる?
…そうだもん、俺って人に愛されないもん、かっこよくもないし、可愛くもないし、ワガママで、いつも気分悪くなって、動けなくなって、人に迷惑かけてばっかで…。
目眩がする。
フラフラする。
ぐるぐるした黒いものに俺が包まれそうになる。
はぁーあ、こうなっちゃうところが俺嫌いなんだよねバーカ、しねしね、俺なんて死んじまえよ、ゴミクズ。ゴミクズには生きる価値ないだろ?ね?ゆりちゃん。
---やっぱり俺ってば、死んじゃえば良いんじゃん。ほら、答えは簡単じゃん。
ブブブブ、手に持ったスマホが突然震えた。
ハッ、とスマホを見れば、「ヒコたん」と書かれたディスプレイが映し出されていた。
俺は慌ててフリックして通話に出た。
「ヒコた…ん?」
「おお、裕里!お前どこにいるんだ?靴箱に靴はないし、もう帰ったのか?」
「ヒコたん、いつもしないのに…、なんで、電話…」
「ん?あぁ、それか。『今、裕里に掛けろ』って神様に言われたような気がしてな。…どうした?もう家か?」
「まだ、家じゃ、ない…」
「そうか!せっかくだし俺の家に来るか?この前遊んでたゲーム、裕里と2人でやりたいと思ってたんだ」
「………ヒコた…ん」
「ん?どうした?」
どうして、ヒコたんはいつも俺のことを救ってくれるの…?
俺が苦しい、死にたい…そう思った時、どうしてそばにいてくれるの?
涙がぼたぼたと止まらない。
「…っひく、……っひこ、たん…っ」
「?…裕里?もしかして、また泣いてるのか?なんだ。俺も今から帰るから、早く俺の家に来いよ。そんな、ひとりじゃ寂しいだろ?」
寂しい、寂しいよヒコたん。
怖かったの、また、裏切られると思って、また…、俺が、ヒコたんを裏切ってしまうかとおもって、不安で、怖くて、ひとりぼっちで、寂しくて…。
「待ってるぞ、裕里」
その暖かい声に、俺は溢れ出る涙を一生懸命手で拭った。
○○○○○○○○
「どうだった?ゆりちゃん」
「ん…?俺が電話かけたら突然泣き出してしまったな」
「ふはっ、やっぱり寂しがってんじゃん」
駿喜はケラケラと笑いながら、雅彦へもたれ掛かる。
雅彦はスマホをしまいながら、駿喜の方を見た。
「それにしてもよく気付いたな、駿喜。電話掛けろって言うから突然なんだ、とは思ったが」
「さぁー?なんとなくの勘だよ」
「そういうものなのか?駿喜が気にしてた、って裕里に言っておくよ」
「あーやめてやめて。俺ゆりちゃんに嫌われてるからさ。それに、俺、ゆりちゃんのラインとか電話番号知らないし。どうせ俺がかけてもすぐブロックされるっしょ。とりあえず、こういう時は雅彦がかけときゃいいんだよ」
そう言いながら、駿喜はポンポンと不思議そうな顔をする雅彦の肩を叩いた。
雅彦は未だに理解ができていない様子で、はてなマークを頭に浮かべている。
「駿喜、お前はすごく優しいのにな。裕里は勘違いしているだけだろう」
「ふっ…さぁ?どうだかねー?それより、早く行ってあげたら?またゆりちゃん泣いてるかもよ?」
「お、そうだな!ありがとな、駿喜。また今度メシ行こう!」
「おう」
雅彦はそう言うと、ニカッと眩しい笑顔を見せた。
雅彦はじゃあな!と手を振って教室から出ていく。
その姿はとても爽やかで、空気を晴々とさせる。
あーあ、ゆりちゃん。雅彦はまた君の知らない間に笑顔振り撒いちゃってるよ?
本当にウケるな、とクツクツ笑ってしまう。
---スッと教室から静かに出ていった背中を俺だけが気付いていた。
雅彦にそのことを伝えれば案の定、あの天然バカはそんなの気付いてなく、「そうなのか?」と綺麗な顔で珍しそうに答えるだけだった。
「……ほんとに、あれ付き合ってんのかよ…?マジで笑える」
雅彦は清らかだが、その分暗い想いやそう言った感情を抱きにくい。そのため彼は、痛みも人の心もあまり分かっていない人間だ。
何より正義主義なあの頭の中は平等性と世界平和しか入っていなおらず、独占欲だの、排他主義だの、人を殺すほど憎むなど、そんな考えひとたまりもないだろう。
裕里みたいなメンヘラバカはアイツの光の部分に惹かれたんだろうが、実のところ、雅彦は裕里を見ちゃいない。
地球をぐるりと囲んで手を繋ぐお友達の1人としか思っていないのだ。
平和で平等な世界に『外れていた』彼を気にして引っ張りあげただけだ。そこに特別視やその他の感情は入っていないだろう。もし混ざってしまえばその構成要因の一つとしか捉えられないんだろうから。
「雅彦の恋人?…ほんと、早く壊れねえかなぁ」
あーあ。人のものって、ほんと腹立たしくて、ムカつく。
でも甘くて、大きくて、ドキドキがとまらなくて、とっても魅惑的だよね?
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