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番外編
人気者兄!監獄パロネタ2
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少しふるびた部屋に、沢山のテーブルが並んでいた。
ここは食堂。
柄の悪い囚人たちが大勢集まっては,小さなおんぼろの机に群がっている。
それを横目に見ながら,朝食の配給を配る列に並ぶ。
「おい、相馬」
「あ、健也」
俺にそっと耳打ちしてきたのは、ここの監獄でも珍しく仲良くしてくれる囚人、健也だった。健也は小柄な体をそっと寄せて後ろをチラチラと見る。
「また、あの看守ついてんの?」
「ああ、凌駕に言われて…」
「あいつ、お前にいつもしつこいよな。他のやつには興味も示さないってのに…お前だけだぜ?見張りつけられてんの」
看守三笠は食堂の扉の前に立ってはこちらをじっと睨みつけている。そっちを見れば三笠の眼光が鋭くなった気がした。
はあ、と健也がため息をついて、俺の肩をそっと叩いた。
健也は本気で俺のことを心配してくれているようだった。こんな悪人ばかり集まる監獄で気を寄せてくれる人間は本当に貴重でしかない。
「まあ、俺にできることあれば手伝うし助けるからさ」
「うん、ありがとう健也」
「いいっていいって!同郷の俺らの仲じゃん?」
そう笑う健也に俺も安堵から思わず笑みがこぼれる。
健也は俺と同じ故郷出身だ。
俺の故郷はとても貧相な村で、職のない者や捨てられた孤児が数多くおり、生きていくにもやっとの環境だった。そのため苦労も多く、健也もそれを知っていて、同郷の俺を気にかけてくれているのだ。それに歳が同じという共通点もあったことでお互い、打ち解けた関係になっていた。
そのまま健也と軽く雑談しながら朝食を受け取り、いつもの定位置の席へと向かう。日当たりの良い窓の席だ。
健也は小柄で若いが腕っぷしは強いらしく、後ろ盾?のボスの影響もあって、この席は囚人たちの中でもいい位置に属していた。食堂の席ひとつも、刑務所の中で権力差があるようだ。
俺はいつも健也といるため、俺も健也の仲間だと思われている。そのためか、新人であった俺でも基本的には囚人たちは直接絡んでこない。下世話な誘い(性処理とか)も来ることはあったが、健也のほか凌駕の監視の目も厳しいおかげか、そういう危険な目に遭う頻度は自然と少なかった。
だからこそ、俺らの周りには人は寄ってこないのだが。
パサパサのパンを静かに頬張っていると、横にスッと影が落ちた。
「よぉ、今日もやけにお話長かったな。しかもしっかり護衛付きじゃないか、犬っころさんよ」
「………榊原さん」
こんな俺らにも威圧的に絡んできたのは、死刑判決も下る大犯罪を犯したと噂される、榊原という男だった。
監獄にいるとは思えないほど派手な見た目とその堂々たる態度に、どこかの有名な貴族だとか、はたまたここら辺を仕切っているマフィアの幹部だなんて話もある。
榊原は何かと目立つ男で、この刑務所に『舎弟』なんてものがいるほど、権力も持ち合わせていた。
そんな男は俺に許可なんてとるはずもなく、隣へ悠々と座った。
この人のオーラはどことなく近づきにくく、榊原は俺にとって苦手な部類の人間だった。
隣にいた健也が顔を出して、すぐさま榊原に噛み付く。
「テメェ、相馬は『犬』じゃねえよ」
「はっ。堂々と後ろで看守が見張ってんのに、どこが『看守の犬』じゃねえんだよ。あんなに見られてちゃ、おかげさまで俺たちは怯えて飯もろくに食えねなぁえよなぁ」
「は?その態度のどこが怯えてんだよ」
健也は呆れたように榊原を睨む。
それに対し榊原は全く気にしない様子で朝食を食べ始めた。
2人がいっているのは、俺が凌駕に気に入られていることについてだろう。
普通、看守は囚人を一様に扱うはずだが、どうしてもお気に入りという人間が出てくる。
それは囚人も同じでお気に入りの看守などが出てくるのだが、その囚人たちの間でもトップに人気があるのが凌駕だ。凌駕の綺麗な容姿に女のような見目がストレスの溜まる環境下の囚人たちに受けるのだろう。
その一方、凌駕が気に入っている囚人が相馬だった。
理由はさしてよくわからないのだが、それよりもここで重要な点は、看守に気に入られた上に気に入っている看守が凌駕だったってことだ。
ただでさえ、依怙贔屓を受けたとして看守に気に入られる囚人たちは厳しい目で見られるのに、凌駕は相馬しか可愛がろうとしないのだ。彼は相馬以外の人間に全く興味がなく、囚人たちには特別な施しも懲罰も行わない。それなのに、相馬には大変熱心で、その気に入り様は側から見ても異常すぎることから、囚人たちのみならず看守たちにまで大変批難されていた。
そのおかげで、裏では俺は『看守のご機嫌を取るために成り下がった犬』や『看守に守ってもらおうとする卑怯な弱者』と卑下されているらしい。
頼んでもいないのに、こちらからすればとんだとばっちりである。
それ故、『看守の犬』。
榊原は俺をそうからかって呼んだのだった。
「…なぁ、相馬。そういえば凌駕にまたなんか言われたのか?今日看守の号令が遅かったってお前の棟の奴らが騒いでたぞ。怒鳴り声も聞こえたって」
「今日は凌駕やけに機嫌がよくて話が長かったんだよ…。怒鳴ってたのは三笠っていう看守。俺の態度がダメだったらしい」
「あ、あの後ろで見てるやつか?あいつも大概凌駕狂だよな…」
健也はここでは珍しく凌駕のことは好いていないようだった。俺と仲良くしてくれたりするあたりもだいぶ変わっている。
俺たちはなるべく小声で話したつもりだったが、耳がとんでもなくいいのか、俺たちの会話を聞いていた榊原がニヤリと笑った。
「そういや、お前。凌駕にお呼ばれされたのか?なぜか、お前だけ午前中の活動担当外されてるらしいじゃないか。凌駕もお暇らしいし……こんな偶然あるか?」
どきりと心臓が跳ねる。
なぜそんなことを知っているのか。そもそも担当を外されていること自体、今初めて知ったんだが。
刑務所では社会更生するために労働を強いられている。基本、日中は自分の担当番があってその仕事をしており、何かよっぽどの理由がなければ休みにはならないはずだ。
しかし、これもまた何か凌駕がいったんだろう。それを管理しているのは看守たちしかいないからだ。
「しかも。今日一日まるまる外されているみたいだな。何か粗相でも起こしたのか相馬」
「っ!さ、鮫原さん」
「鮫原、タバコは?」
「…ん?あぁ、これだよ」
榊原の背後にキリッとした強面の男が配給膳を持って立っていた。彼が鮫原だ。
榊原に話しかけられた鮫原は器用に片手でトレイを持ち、ポケットからタバコを取り出す。榊原は鮫原からタバコのダース箱を満足そうに受け取っては、軽く口に咥えた。
鮫原は榊原とよく一緒にいる男で、この監獄の中でも珍しく榊原と対等に話ができる人間だった。彼も何か大きな組織と関係があるらしい。榊原と常に行動していることからも、俺は彼に警戒をしていた。
「てか、おい、ボス。ここで吸うなよ」
「ん?いいんだよ、どうせ周りからこんな離れた席。タバコ依存のやつもいねえんだしさ。…河上」
「はい」
鮫原の忠告も聞かない榊原は、タバコを咥えた口で仲間の男の名前を呼ぶ。
すると、寡黙な男がいつの間にか榊原のそばに立っていた。静かな冷ややかとした黒目は榊原のタバコを視野に入れ、すぐさまかしずいた。
相馬と健也が男の気配に気づかなかったことに呆然と驚いてる間に、黒髪男、河上は素早くマッチに火をつけてタバコの先端に煽る。タバコへゆらりと、鮮やかに火がつかのを確認すると、また男はそのまま無言で後ろに下がっていった。
河上はいつも突然現れ、静かに消えていく。榊原や鮫原とは違い、彼は陰さえも掴めない男だった。相馬も健也も彼のことはよくわからない。
ここではお高い嗜好品なはずのタバコへ悠々と口をつけては、榊原は綺麗な口から煙を吐き出す。
やつは相変わらず見下すような視線でこちらを見てきては、低い声で問いかけた。
「それで?当たっているのか?」
「………。…はい、凌駕という看守に、朝食後部屋へ来るようにと言われました」
「フーン。あのあいつが。そいつは珍しいな」
意味ありげに榊原は煙雲を漂わせる。
嫌な空気だ。煙に巻かれたように、気分も酷くなっていく。
ふと、榊原は後ろに立っていた鮫原に視線を向ける。
「鮫原、お前、凌駕の私部屋って見たことあるか?」
「私部屋?それはないな。懲罰房や看守の共同の部屋には入ったことがあったが、凌駕自体の部屋は見たことも入ったこともない」
「そうだよなぁ。他の看守は部屋に連れ込んでるっていうのに、あいつ、そういうとこは昔から変にガードが固いんだよな。お前も気になるよな?相馬」
榊原は、俺になにが言いたいんだろうか。
世間話?お願い事?否、命令だ。
ライオンみたいに何かを見定めた、獲物を狙った目がじっと、こちらを見ている。
ーーー榊原の考えていること、俺はそれがわかってしまったような気がする。
榊原は目を細めた。
「なぁ。凌駕を嵌めてみようぜ、相馬」
榊原はそう微かに笑うと、タバコの火を古びたテーブルで押さえつけては消した。
ここは食堂。
柄の悪い囚人たちが大勢集まっては,小さなおんぼろの机に群がっている。
それを横目に見ながら,朝食の配給を配る列に並ぶ。
「おい、相馬」
「あ、健也」
俺にそっと耳打ちしてきたのは、ここの監獄でも珍しく仲良くしてくれる囚人、健也だった。健也は小柄な体をそっと寄せて後ろをチラチラと見る。
「また、あの看守ついてんの?」
「ああ、凌駕に言われて…」
「あいつ、お前にいつもしつこいよな。他のやつには興味も示さないってのに…お前だけだぜ?見張りつけられてんの」
看守三笠は食堂の扉の前に立ってはこちらをじっと睨みつけている。そっちを見れば三笠の眼光が鋭くなった気がした。
はあ、と健也がため息をついて、俺の肩をそっと叩いた。
健也は本気で俺のことを心配してくれているようだった。こんな悪人ばかり集まる監獄で気を寄せてくれる人間は本当に貴重でしかない。
「まあ、俺にできることあれば手伝うし助けるからさ」
「うん、ありがとう健也」
「いいっていいって!同郷の俺らの仲じゃん?」
そう笑う健也に俺も安堵から思わず笑みがこぼれる。
健也は俺と同じ故郷出身だ。
俺の故郷はとても貧相な村で、職のない者や捨てられた孤児が数多くおり、生きていくにもやっとの環境だった。そのため苦労も多く、健也もそれを知っていて、同郷の俺を気にかけてくれているのだ。それに歳が同じという共通点もあったことでお互い、打ち解けた関係になっていた。
そのまま健也と軽く雑談しながら朝食を受け取り、いつもの定位置の席へと向かう。日当たりの良い窓の席だ。
健也は小柄で若いが腕っぷしは強いらしく、後ろ盾?のボスの影響もあって、この席は囚人たちの中でもいい位置に属していた。食堂の席ひとつも、刑務所の中で権力差があるようだ。
俺はいつも健也といるため、俺も健也の仲間だと思われている。そのためか、新人であった俺でも基本的には囚人たちは直接絡んでこない。下世話な誘い(性処理とか)も来ることはあったが、健也のほか凌駕の監視の目も厳しいおかげか、そういう危険な目に遭う頻度は自然と少なかった。
だからこそ、俺らの周りには人は寄ってこないのだが。
パサパサのパンを静かに頬張っていると、横にスッと影が落ちた。
「よぉ、今日もやけにお話長かったな。しかもしっかり護衛付きじゃないか、犬っころさんよ」
「………榊原さん」
こんな俺らにも威圧的に絡んできたのは、死刑判決も下る大犯罪を犯したと噂される、榊原という男だった。
監獄にいるとは思えないほど派手な見た目とその堂々たる態度に、どこかの有名な貴族だとか、はたまたここら辺を仕切っているマフィアの幹部だなんて話もある。
榊原は何かと目立つ男で、この刑務所に『舎弟』なんてものがいるほど、権力も持ち合わせていた。
そんな男は俺に許可なんてとるはずもなく、隣へ悠々と座った。
この人のオーラはどことなく近づきにくく、榊原は俺にとって苦手な部類の人間だった。
隣にいた健也が顔を出して、すぐさま榊原に噛み付く。
「テメェ、相馬は『犬』じゃねえよ」
「はっ。堂々と後ろで看守が見張ってんのに、どこが『看守の犬』じゃねえんだよ。あんなに見られてちゃ、おかげさまで俺たちは怯えて飯もろくに食えねなぁえよなぁ」
「は?その態度のどこが怯えてんだよ」
健也は呆れたように榊原を睨む。
それに対し榊原は全く気にしない様子で朝食を食べ始めた。
2人がいっているのは、俺が凌駕に気に入られていることについてだろう。
普通、看守は囚人を一様に扱うはずだが、どうしてもお気に入りという人間が出てくる。
それは囚人も同じでお気に入りの看守などが出てくるのだが、その囚人たちの間でもトップに人気があるのが凌駕だ。凌駕の綺麗な容姿に女のような見目がストレスの溜まる環境下の囚人たちに受けるのだろう。
その一方、凌駕が気に入っている囚人が相馬だった。
理由はさしてよくわからないのだが、それよりもここで重要な点は、看守に気に入られた上に気に入っている看守が凌駕だったってことだ。
ただでさえ、依怙贔屓を受けたとして看守に気に入られる囚人たちは厳しい目で見られるのに、凌駕は相馬しか可愛がろうとしないのだ。彼は相馬以外の人間に全く興味がなく、囚人たちには特別な施しも懲罰も行わない。それなのに、相馬には大変熱心で、その気に入り様は側から見ても異常すぎることから、囚人たちのみならず看守たちにまで大変批難されていた。
そのおかげで、裏では俺は『看守のご機嫌を取るために成り下がった犬』や『看守に守ってもらおうとする卑怯な弱者』と卑下されているらしい。
頼んでもいないのに、こちらからすればとんだとばっちりである。
それ故、『看守の犬』。
榊原は俺をそうからかって呼んだのだった。
「…なぁ、相馬。そういえば凌駕にまたなんか言われたのか?今日看守の号令が遅かったってお前の棟の奴らが騒いでたぞ。怒鳴り声も聞こえたって」
「今日は凌駕やけに機嫌がよくて話が長かったんだよ…。怒鳴ってたのは三笠っていう看守。俺の態度がダメだったらしい」
「あ、あの後ろで見てるやつか?あいつも大概凌駕狂だよな…」
健也はここでは珍しく凌駕のことは好いていないようだった。俺と仲良くしてくれたりするあたりもだいぶ変わっている。
俺たちはなるべく小声で話したつもりだったが、耳がとんでもなくいいのか、俺たちの会話を聞いていた榊原がニヤリと笑った。
「そういや、お前。凌駕にお呼ばれされたのか?なぜか、お前だけ午前中の活動担当外されてるらしいじゃないか。凌駕もお暇らしいし……こんな偶然あるか?」
どきりと心臓が跳ねる。
なぜそんなことを知っているのか。そもそも担当を外されていること自体、今初めて知ったんだが。
刑務所では社会更生するために労働を強いられている。基本、日中は自分の担当番があってその仕事をしており、何かよっぽどの理由がなければ休みにはならないはずだ。
しかし、これもまた何か凌駕がいったんだろう。それを管理しているのは看守たちしかいないからだ。
「しかも。今日一日まるまる外されているみたいだな。何か粗相でも起こしたのか相馬」
「っ!さ、鮫原さん」
「鮫原、タバコは?」
「…ん?あぁ、これだよ」
榊原の背後にキリッとした強面の男が配給膳を持って立っていた。彼が鮫原だ。
榊原に話しかけられた鮫原は器用に片手でトレイを持ち、ポケットからタバコを取り出す。榊原は鮫原からタバコのダース箱を満足そうに受け取っては、軽く口に咥えた。
鮫原は榊原とよく一緒にいる男で、この監獄の中でも珍しく榊原と対等に話ができる人間だった。彼も何か大きな組織と関係があるらしい。榊原と常に行動していることからも、俺は彼に警戒をしていた。
「てか、おい、ボス。ここで吸うなよ」
「ん?いいんだよ、どうせ周りからこんな離れた席。タバコ依存のやつもいねえんだしさ。…河上」
「はい」
鮫原の忠告も聞かない榊原は、タバコを咥えた口で仲間の男の名前を呼ぶ。
すると、寡黙な男がいつの間にか榊原のそばに立っていた。静かな冷ややかとした黒目は榊原のタバコを視野に入れ、すぐさまかしずいた。
相馬と健也が男の気配に気づかなかったことに呆然と驚いてる間に、黒髪男、河上は素早くマッチに火をつけてタバコの先端に煽る。タバコへゆらりと、鮮やかに火がつかのを確認すると、また男はそのまま無言で後ろに下がっていった。
河上はいつも突然現れ、静かに消えていく。榊原や鮫原とは違い、彼は陰さえも掴めない男だった。相馬も健也も彼のことはよくわからない。
ここではお高い嗜好品なはずのタバコへ悠々と口をつけては、榊原は綺麗な口から煙を吐き出す。
やつは相変わらず見下すような視線でこちらを見てきては、低い声で問いかけた。
「それで?当たっているのか?」
「………。…はい、凌駕という看守に、朝食後部屋へ来るようにと言われました」
「フーン。あのあいつが。そいつは珍しいな」
意味ありげに榊原は煙雲を漂わせる。
嫌な空気だ。煙に巻かれたように、気分も酷くなっていく。
ふと、榊原は後ろに立っていた鮫原に視線を向ける。
「鮫原、お前、凌駕の私部屋って見たことあるか?」
「私部屋?それはないな。懲罰房や看守の共同の部屋には入ったことがあったが、凌駕自体の部屋は見たことも入ったこともない」
「そうだよなぁ。他の看守は部屋に連れ込んでるっていうのに、あいつ、そういうとこは昔から変にガードが固いんだよな。お前も気になるよな?相馬」
榊原は、俺になにが言いたいんだろうか。
世間話?お願い事?否、命令だ。
ライオンみたいに何かを見定めた、獲物を狙った目がじっと、こちらを見ている。
ーーー榊原の考えていること、俺はそれがわかってしまったような気がする。
榊原は目を細めた。
「なぁ。凌駕を嵌めてみようぜ、相馬」
榊原はそう微かに笑うと、タバコの火を古びたテーブルで押さえつけては消した。
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