8 / 24
本編
8
しおりを挟む
○○○○○○
旗中は教室にまだ帰ってきていないようだった。旗中のクラスメイトも朝から見ていないと言う。
どうしようか。クラスメイトにUSBを預けても良かったが、個人情報が入っていることや放送部のこともあるため本人直接届ける方が良いだろう。
旗中のクラスメイトに感謝を告げて、俺は教室を出た。
旗中を探すために校舎を歩き回った方がいいのかもしれないが、どこにいるかもわからない。それに探し回るのは普通に面倒臭い。…たしか、旗中は教室と寮以外であれば放送室に篭りがちだったはずだ。
まずは放送室当たるのが無難な案だなと考えた俺は、4階の放送室へ向かうことにした。
ちなみに4階は放送室と生徒会室、そして風紀委員会の部屋がある。あとは空き教室になっているが、大体は権力が強いその3つが4階を独占している。放送部は放送室がそこにあるという理由ももちろんあって4階であるが、見晴らしのいい部屋を独占したことで様々な点において便利が良いらしかった。
階段を上り、4階へと上がっていく。
人気の少ない階につくと、俺は放送室の方へ向かった。放送室は奥の教室から2個手前のところだ。その奥の部屋が生徒会室。風紀室は生徒会室とは真反対の奥の部屋らしい。
2、3歩足を進めた時だ。
ドタッ!と手前の教室から大きな音が響いた。
重いものが壁が床にぶつかったような音に聞こえる。
何事だと驚いていると、すかさず「凌賀てめえ!」と叫ぶ声が響き渡る。
凌賀、と言っただろうか…。違う「りょうが」かもしれないが、兄と似た名前を怒号で叫びつけているのには気が触れた。
またガタガタッとものがぶつかり合う音が聞こえる。俺は教室の中の人物に気づかれないよう、そっと教室の壁際に近寄り、窓からそっと中を覗いた。
「クソッ!吐きやがれ榊原ァ!」
「うるせえな、アイツの犬はよく吠えやがる」
「テメェはブッ殺すッ!」
「あんまり煽らないほうがいいんじゃない?なんかますますうるさいんだけど~」
「黒木(くろき)の犬がわざわざ転校してまできたんだからよっぽどの理由があるみたいだな」
フッと榊原は小馬鹿にしたように笑った。
中には榊原を始めとした生徒会一存と派手な金髪をした男が立っていた。
金髪の男は後ろを向いていて顔はよく見えないが、小柄な体型をしている。
「でもシマに入ってきたのはアンタの方だ。それ相応の処置は受けてもらうぞ」
鮫原先輩がスッと前に出てきて、金髪の男と対峙する。俺は慌てて見つからないように顔を引っ込めた。先輩たちや男は俺がいることにまだ気づいていないようだった。
「うるせえ!端からそういうつもりだ!」
まだ中では揉めているようで激しい怒鳴り声が響きわたっている。この現場でどう動いたらいいかわからず、相馬は立ち往生してしまう。明らかに不穏な雰囲気だ。
(とりあえず様子を見計らって放送室まで走り抜けるか…)
触らぬ神に祟りなし。相馬の意向は決まった。
そっと中を再度伺う。
すると同時に金髪男は地面を蹴って鮫原先輩へ飛び掛かった。鮫原先輩はわかっていたように、勢いよく長い脚で蹴り上げた。金髪男は危機一髪でその動きを避け、鮫原先輩へ素早く攻撃を仕掛ける。
鮫原先輩がしっかりと攻撃を打ち込むなら、金髪男はすばしっこく動きまわるイメージだ。
金髪男の方が動きが早い。鮫原先輩の攻撃を避けながら、隙を見出したのか、思いっきり腹部に蹴りを押し込んだ。
「ゥグッ…!!」
ドンッ!という音ともに鮫原先輩の体が吹っ飛んだ。飛んで行った鮫原先輩の体は、河上先輩がすかさず支えたおかげで床に倒れ込むことはなかった。だが、鮫原先輩は体が吹っ飛ぶほどの威力を受けたせいで、自分の力で立てるほどの余裕はなかったようだ。
(鮫原先輩…!)
初めて見た激しい肉弾戦の様子に声が思わず出そうになる。何が起きてるんだ…なぜ鮫原先輩達は戦っているんだ。
金髪男は鮫原先輩が立ち上がれない様子を横目で見ると、より一層強くその場の地面を蹴って、跳んだ。
そのまま奥の榊原会長へ突っ込む気だ。
男は拳を握りしめて会長へ降りかかる。会長の前へふらりと影が動いた。
「…凌駕」
パァン、と破裂音のような肌がぶつかり合う音が聞こえる。
「…ハッ、またお姫様に守ってもらうとはなぁ」
「うるせえ、その言い方はやめろって言ってるだろ」
「ッ…!!クソ!」
男の拳は会長にではなく、凌駕の掌によって受け止められていた。拳を受け止められた男は凌駕の手を勢いよく振り払った。
「水谷凌駕…」
「なに」
「お前が黒木さんを貶めたのかよ…」
「なにそれ、知らないんだけど。もしやったんなら…コイツに決まってんじゃん」
そう言って後ろにいる榊原会長を凌駕は指す。会長は自分のせいと言われたのが不服なのか、顔をしかめた。
「は?凌駕お前が黒木がしつこいからどうにかしろって言ってたんじゃねえかよ」
「なにそれ、俺のせいにする気?」
「俺はお前のためにやってやっただけだ」
「ハァ?それがいつも余計なお世話って言ってんの!」
「…チッ、凌駕ァ!」
二人のやり取りを聞いてついに怒りが抑えきれなくなったのか、男が凌駕目掛けて拳を振るった。さきほどの鮫原先輩ときとは比ではない威力とスピードだ。
一方、凌駕は会長の方を向いていたため、反応が一歩遅れてしまう。そのまま男の拳が凌駕の顔面に降りかかった。
「凌駕!」
「兄ちゃん!」
会長と俺が同時に叫んだ時。そのまま凌駕は手で拳を受け止めながら身体を床へ低く落とした。床へ落下していく中、凌駕は隙のできた男の脚を掬い払うように蹴り上げた。
ダンッ!!
2つの体が宙に浮き、肉体が床へとぶつかる音が響いた。
旗中は教室にまだ帰ってきていないようだった。旗中のクラスメイトも朝から見ていないと言う。
どうしようか。クラスメイトにUSBを預けても良かったが、個人情報が入っていることや放送部のこともあるため本人直接届ける方が良いだろう。
旗中のクラスメイトに感謝を告げて、俺は教室を出た。
旗中を探すために校舎を歩き回った方がいいのかもしれないが、どこにいるかもわからない。それに探し回るのは普通に面倒臭い。…たしか、旗中は教室と寮以外であれば放送室に篭りがちだったはずだ。
まずは放送室当たるのが無難な案だなと考えた俺は、4階の放送室へ向かうことにした。
ちなみに4階は放送室と生徒会室、そして風紀委員会の部屋がある。あとは空き教室になっているが、大体は権力が強いその3つが4階を独占している。放送部は放送室がそこにあるという理由ももちろんあって4階であるが、見晴らしのいい部屋を独占したことで様々な点において便利が良いらしかった。
階段を上り、4階へと上がっていく。
人気の少ない階につくと、俺は放送室の方へ向かった。放送室は奥の教室から2個手前のところだ。その奥の部屋が生徒会室。風紀室は生徒会室とは真反対の奥の部屋らしい。
2、3歩足を進めた時だ。
ドタッ!と手前の教室から大きな音が響いた。
重いものが壁が床にぶつかったような音に聞こえる。
何事だと驚いていると、すかさず「凌賀てめえ!」と叫ぶ声が響き渡る。
凌賀、と言っただろうか…。違う「りょうが」かもしれないが、兄と似た名前を怒号で叫びつけているのには気が触れた。
またガタガタッとものがぶつかり合う音が聞こえる。俺は教室の中の人物に気づかれないよう、そっと教室の壁際に近寄り、窓からそっと中を覗いた。
「クソッ!吐きやがれ榊原ァ!」
「うるせえな、アイツの犬はよく吠えやがる」
「テメェはブッ殺すッ!」
「あんまり煽らないほうがいいんじゃない?なんかますますうるさいんだけど~」
「黒木(くろき)の犬がわざわざ転校してまできたんだからよっぽどの理由があるみたいだな」
フッと榊原は小馬鹿にしたように笑った。
中には榊原を始めとした生徒会一存と派手な金髪をした男が立っていた。
金髪の男は後ろを向いていて顔はよく見えないが、小柄な体型をしている。
「でもシマに入ってきたのはアンタの方だ。それ相応の処置は受けてもらうぞ」
鮫原先輩がスッと前に出てきて、金髪の男と対峙する。俺は慌てて見つからないように顔を引っ込めた。先輩たちや男は俺がいることにまだ気づいていないようだった。
「うるせえ!端からそういうつもりだ!」
まだ中では揉めているようで激しい怒鳴り声が響きわたっている。この現場でどう動いたらいいかわからず、相馬は立ち往生してしまう。明らかに不穏な雰囲気だ。
(とりあえず様子を見計らって放送室まで走り抜けるか…)
触らぬ神に祟りなし。相馬の意向は決まった。
そっと中を再度伺う。
すると同時に金髪男は地面を蹴って鮫原先輩へ飛び掛かった。鮫原先輩はわかっていたように、勢いよく長い脚で蹴り上げた。金髪男は危機一髪でその動きを避け、鮫原先輩へ素早く攻撃を仕掛ける。
鮫原先輩がしっかりと攻撃を打ち込むなら、金髪男はすばしっこく動きまわるイメージだ。
金髪男の方が動きが早い。鮫原先輩の攻撃を避けながら、隙を見出したのか、思いっきり腹部に蹴りを押し込んだ。
「ゥグッ…!!」
ドンッ!という音ともに鮫原先輩の体が吹っ飛んだ。飛んで行った鮫原先輩の体は、河上先輩がすかさず支えたおかげで床に倒れ込むことはなかった。だが、鮫原先輩は体が吹っ飛ぶほどの威力を受けたせいで、自分の力で立てるほどの余裕はなかったようだ。
(鮫原先輩…!)
初めて見た激しい肉弾戦の様子に声が思わず出そうになる。何が起きてるんだ…なぜ鮫原先輩達は戦っているんだ。
金髪男は鮫原先輩が立ち上がれない様子を横目で見ると、より一層強くその場の地面を蹴って、跳んだ。
そのまま奥の榊原会長へ突っ込む気だ。
男は拳を握りしめて会長へ降りかかる。会長の前へふらりと影が動いた。
「…凌駕」
パァン、と破裂音のような肌がぶつかり合う音が聞こえる。
「…ハッ、またお姫様に守ってもらうとはなぁ」
「うるせえ、その言い方はやめろって言ってるだろ」
「ッ…!!クソ!」
男の拳は会長にではなく、凌駕の掌によって受け止められていた。拳を受け止められた男は凌駕の手を勢いよく振り払った。
「水谷凌駕…」
「なに」
「お前が黒木さんを貶めたのかよ…」
「なにそれ、知らないんだけど。もしやったんなら…コイツに決まってんじゃん」
そう言って後ろにいる榊原会長を凌駕は指す。会長は自分のせいと言われたのが不服なのか、顔をしかめた。
「は?凌駕お前が黒木がしつこいからどうにかしろって言ってたんじゃねえかよ」
「なにそれ、俺のせいにする気?」
「俺はお前のためにやってやっただけだ」
「ハァ?それがいつも余計なお世話って言ってんの!」
「…チッ、凌駕ァ!」
二人のやり取りを聞いてついに怒りが抑えきれなくなったのか、男が凌駕目掛けて拳を振るった。さきほどの鮫原先輩ときとは比ではない威力とスピードだ。
一方、凌駕は会長の方を向いていたため、反応が一歩遅れてしまう。そのまま男の拳が凌駕の顔面に降りかかった。
「凌駕!」
「兄ちゃん!」
会長と俺が同時に叫んだ時。そのまま凌駕は手で拳を受け止めながら身体を床へ低く落とした。床へ落下していく中、凌駕は隙のできた男の脚を掬い払うように蹴り上げた。
ダンッ!!
2つの体が宙に浮き、肉体が床へとぶつかる音が響いた。
0
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ある日、人気俳優の弟になりました。2
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる