上 下
6 / 24
本編

6

しおりを挟む
(マグロは人気だからたくさん本があった……!)

ホクホクと頬を興奮で上気させながら教室へ入る。図書室で今日は奮発して3冊も借りてしまった。早く読みたい…!

心はウキウキ、顔はほぼ無表情で、廊下側の自分の席へ着くと、前の席の変崎が俺に気付いて振り向いた。

「おはおは、相馬~。…あれ?なんか今日機嫌イイ?」
「おはよう、変崎。早起きは三文の徳だった」
「へー、そうなん?…あ!わかった、相馬朝から凌駕さん達と朝飯食べてたらしいじゃん?!世界遺産級の顔面を朝から拝められたら、そりゃ三文どころか三億ぐらい儲けたものだよなぁ~」
「…?それはよくわからない」

なんでだよ!と言いながら、机の上でズッコケる変崎。変崎も朝からテンションが高い。

俺は席に座ると、ちょうどいい位置にある変崎の額にペシっとデコピンをかました。

「ったぁ!?なに、なんでデコピンしたん!?相馬」
「いや、なんとなく」
「ええっ理不尽ッ!まあ…相馬くんが珍しくデコピンしてくるぐらいですからねえ、相当機嫌がいいんでしょうねえ、ええ、良いことじゃないですかね」

変崎は額を手で擦りながらブツブツと呟いて、前へ向き直した。

なんだか変崎が兄に似ているからやりたくなってしまったのだ。謝って欲しかったら兄に言ってくれ。……逆に、兄に似ていると言われた方が喜びそうな変崎だな。


相馬はHRが始まるまで今日朝に借りることができたマグロの本を読むことにした。マグロは漬け丼か刺身そのまま、かな。

ペラペラとページをめくってマグロの種類図を眺めていると、背後に気配を感じた。トントンと肩を叩かれる。
くるりと振り向けば、制服姿で大きな撮影カメラを持った旗中が立っていた。

「よ、相馬!今日早く起きてたんだな」
「あ、旗中。ごめん、兄ちゃんが起こしにきて、そのまま食堂行ってご飯食べてた。……あれ、なんでここに?」
「ん?ああ、噂の転入生を撮りに来たんだよ。一応放送部だからこういう新ネタとかスクープごとに部長達がうるさいんだよなぁ」

そう言って旗中はガチャガチャと機材を整え始めた。教室の後ろの方でいつも愛用しているパソコンを広げたり、三脚でカメラを固定したりしている。

旗中は一応俺とは別のクラスである。そして、放送部員でもあり、今日は俺のクラスにやってくる転入生を撮影しに、うちのクラスへわざわざ来たらしい。セットをしている様子をぼんやりと眺めていると、旗中が突然何かに気づいたように慌ててこちらへ駆け寄ってきた。耳元で小声で囁かれる。

「あ、転入生の情報はトップシークレットらしいから他のやつに言うなよ?特に、新聞部とか。生徒会しか知らない情報らしくて、アイツらに嗅ぎ回られたらチョー困るんだよ」
「あぁ。そういえばそんな話を兄ちゃんがしてたな」
「は?相馬知ってんのかよ。ちっ、なんだよ…やっぱり身内が生徒会は強いなぁ~」

というか、むしろ逆になぜ生徒会しか知らない情報を旗中が知っているのか。

そこは放送部の情報網ということだろう。学園内の情報は新聞部と放送部がほぼ握っているという噂があるぐらいだ。旗中が知っていてもまあ、不思議ではないのか、な。

「それにしても、転入生という情報がわざわざ公開されていないのがよくわからないな…。隠すような話じゃないだろ。これってさ、転入生と生徒会の間に何かあるんじゃないかと俺は思うわけ」
「?そういうものか?個人情報だから公開してないだけとかじゃないのか」
「それにしちゃ転入生の情報が全然入ってこないんだよ。先生達も誰だかよく知らないみたいだし。うちの生徒になるのに、そんなことってあるか?」

ふと、凌賀たちが難しそうな顔をして話し合っていたのを思い出した。旗中の言う通り、やはり転入生と生徒会の間に隠さなければいけないような何かがあるのだろうか。

そうしているうちにHRの合図が鳴った。旗中はカメラを構えて待機している。自分のクラスに戻らず、別クラスであるうちのHRをそのまま受ける気のようだ。

ちょうどタイミングよくガラリとドアが開き、担任の教師が入ってきたのであった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

ある日、人気俳優の弟になりました。2

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。 平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...