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第一章 世界のひみつ

10.アレクに辿り着くための道

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 私の言葉に、イリーナはしばらく考え込んでいた。

「うん……。確かにユニカの言う通りかもしれない。私が苗佳の世界を知っていたから、ルートから外れちゃいけないって思い込みすぎたのかも」

「じゃあさ、どうしたらアレクとの恋愛が客観的にも面白くなるのかしら」

「いや、それは知らない。」

「え」

「…………」

「ええ?」

 イリーナも私も同じような困った顔をしていた。
 盲点だった。
 二人とも恋愛スキルが低すぎる。

「記憶だけとはいえ、イリーナは私の二倍は人生経験あるわけでしょ? 苗佳の世界ではそういう面白いゲームとか本とかたくさんあったみたいだし」

 私だって小説は読むけれど、イリーナがいくつか例にあげたようなのは読んだことがないし、聞いている限りではイリーナの方が数々のパターンを知っていそうだ。

「いや、知識としてはそれなりにあるけど、年上幼馴染とくっつくパターンって、漫画とかにはあるにはあるけど、乙女ゲームでは見たことないのよねえ。そもそも学生生活を一緒に送れないからイベントがないのよ。盛り上がる要素がないのよ」

「じゃあ、漫画? のパターンでもいいから話して、どういう感じの物語なの?」

「まあ、大体二パターンよね。主人公がいつの間にか大人の女性になってたんだって気が付いて恋愛対象として見るようになるか、元々好きだったけどその自覚がなかったり、相手はまだ子供だからって自制してたパターン」

 うーん。
 前者はないな。小さい時からずっと会ってるから、徐々に徐々に成長を見ていたわけで、いきなり素敵なレディに変身! ってのは無理がある。もう十六歳だからほぼ成長しきってるし。

「元々好きだったけど自覚がなかったパターンを希望します」

「その可能性はあるの?」

「絶望的です」

 絶賛距離はかられ中です。婚約者を大事にしてる証拠だと思います。
 昨日だって私がいないときに来ようとしてたわけだし。
 最後の、『まだ子供だから自制してたパターン』も、もうあり得ない。この国では十六歳から結婚できるし、婚約はその前からする人も多い。

 じゃあダメじゃん。

 イリーナがそう言いかけたのがわかったけれど、賢明にも彼女は「ん゛ん゛っ」と咳払いでその言葉を吹き飛ばした。

「まあ、この件は今後の課題ということで。また話し合いましょう。それよりも一つ、最後に大事なことを言っておくわね」

「え。なに。怖いんですけど」

「さっきの流れでは言えなかったんだけど。ユニカがヒロインで、私が悪役令嬢のままでいること。これは絶対よ」

「なんで?!」

 ヒロインとか面倒くさい!

「さっきも話したでしょ? 悪役令嬢がヒロインになった場合、元ヒロインは壮絶なざまあを受けて身を滅ぼすのよ。しかも実は全然いい男じゃなかった腐った王子と結婚する。まあ、フリードリヒ殿下が実際どうなのかは私はしらないけど。ほとんど関わってこなかったから」

 話の後半はほとんど耳に入ってこなかった。

「ちょちょちょちょ……! それじゃダメじゃない! アレクと結婚できないじゃない」

「だから言ってるでしょ。これはお互いにとって不幸なパターンよ。私は悪役令嬢のまま、追放されて自由になる。だからユニカが頑張ってヒロインを演じてアレクと結ばれるルートを模索する。当面の方針はこれでいきましょう」

 ええー?
 なんか私だけ負荷高くない?

「ちゃんと協力するから。だから、一度そのアレクと会わせてくれない?」

「え? 断る」

「心配しなくてもアレクを好きになったりしないわよ! ここまでユニカの行動が少しずつずれてきてたのって、アレクのせいなんじゃないかと思って。だって、あなたアレクの言うことしかまともに聞かないでしょう?」

 こっくりと頷けば、やっぱりとイリーナがため息を吐く。

「それなら、一度話してみたいの。何故ルートから逸れるようになったのか、そのカギはアレクが握っているような気がする」
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