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第三章 魔王と人々
5.夢と翼と自由
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ゼノンからはそれなりに話を聞けた。
しかしいきなり当時と同じやり方に戻せるわけではない。
人々の多くは竜王の時代を知らず、知っていたとしても今のこの国のあり方にはほとんど不満を持っていないようだから。
便利な存在を知ってしまった今では、戻すと言っても反発が大きいだろう。
「ひとまずセレシアのお父さんからいい反応がもらえればいいんだけど」
「なあ。タマはあっちの世界に家族はいないと言ってたよな」
唐突なラースの言葉に、珠美はきょとんとしながらも頷く。
珠美がセレシアやゼノンと話している間も、なんだかラースはずっと心ここにあらずだったような気がする。
「うん。兄弟はいないし、両親はもう死んじゃったし」
「それでも元の世界に帰りたいと思う理由は何だ?」
その問いに、珠美はすぐには答えられなかった。
確かに会いたい人は特にいない。
ただ、元いた場所なのだから帰るのは当然だと思っていた。
「まあ。就職が決まってるから、帰らないと迷惑になっちゃうしね」
「仕事か。だがタマがいなければ、替わりを頼むだけなんじゃないのか」
それはその通りだ。
元の世界に帰れば、今のように珠美にしかない力というのもない。
プログラミングだって珠美程度にできる人は腐るほどいるし、まだ働いてもいないし、研修も受けていないから実際どれだけ仕事として通用するようになるかはわからなかった。
「だからこそ、職を失わないように期限までには帰らないといけないんじゃん」
言ってから、自分で自分に「何故?」と問いかけた。
もし珠美がいなくてもあちらの世界の誰も困ることがないとしたとき、珠美が元の世界に帰らなければならない理由はあるだろうか。
仕事ならこちらでも探すことはできる。
衣食住もなんとかなるだろう。
しばらく考えてみたが、やはりいつかはあちらの世界に帰りたいと思う。
どちらの世界でも生きて行くのに不便はないとしても、こちらの世界よりも、あちらの世界の方が馴染みが深いから。
元の世界の方が慣れている分、暮らしやすいというのもあるし、突然意思とは関係なく落とされたから未練のようなものもある。
ただ一年後、珠美がこの世界に今よりもっと慣れていたら。帰りたくないと思うのだろうか。
それは今の珠美にはわからなかった。
「タマは真面目だからな」
ふっと笑ったラースに、そうかな、と珠美は首を傾げる。
もしかしたらラースは、戻っても家族のいない珠美を案じてくれたのかもしれない。
「ラースこそ、優しいよ」
ラースは思い切り戸惑いを顔に張り付けて、目を見開いた。
それから少しだけ苦く、小さく笑った。
「いや。俺は自分のことしか考えていない小さな奴だ」
「ラースほど私のために考えて、動いてくれてる人はいないよ」
あちらの世界でも、こちらの世界でも。
そう言えば、戻ったらラースには会えなくなるのだなと今更ながらに気が付いた。
それは寂しいと思った。
こちらの世界に来た時よりももっと、未練を感じてしまうかもしれない。
離れても、また会いたいと思ってしまうような気がした。
家族以外でこんなに傍にいた人は、他にいなかったから。
・・・◆・・・◇・・・◆・・・
珠美は今後の魔王のあり方を検討するだけでなく、現在の魔王の仕事もこなさなければならない。
溜まっている依頼をこなした後も、ミッドガルドから次々と依頼がもたらされた。
今日も応接室でミッドガルドが持ってきた依頼を聞き終えると、「じゃあなー」とさっさと帰りかけていたその背中に思わず声をかけていた。
「ミッドガルド。どうしてミッドガルドはそんなに一生懸命あちこちを回って、この城に依頼を届けてくれてるの?」
初めて会ったときこそ、人の話を聞かず強引に珠美を連れ去ったミッドガルドに腹も立ったが、こうして何度も往復している姿を見れば、仕事熱心なのだとわかった。
「そりゃあ、仕事だから」
「いや、うん、そうだろうけど。いつもひたすらに仕事をこなしてるから、すごいなと思って」
この国の人たちは、どこかのんびりとしている。
あくせくと働かなくても生活はなんとかなるからだろう。
だがミッドガルドはせわしなく駆け回っている。
そういう性分なのだろうかとも思ったが、時に職務の遂行に忠実すぎる態度を見ても何か理由があるのではと気になったのだ。
「お金をもらって仕事をしてるんだから当たり前だろ?」
「うん。そうだよね」
ミッドガルドがきちんと報酬を得る対価として働いていると知り少々驚いた。当たり前の話ではあるのだが、この城の人たちにはそういう概念がないから。
しかし、それを考えれば依頼人は無償で依頼しているわけではないことになる。
支払うこと自体に抵抗がないのなら、払い先がギルドへ変わるだけだと考えてもらえるかもしれない。
「依頼ごとにお金をもらってるの?」
「いや、月に決まった額をもらう」
ギルドと依頼元との支払いも、定額制と都度払いとで抵抗感も変わってくるかもしれない。
珠美はこの辺りのことはギルドの人たちにも意見を聞いてみることにした。
しかしミッドガルドも定額なのだとしたらなおさら、そんなにあくせく働かなくてもいいような気がしてしまうのだが。
「そんなに生活が大変なの? それならもう少しお給料上げてもらった方がいいんじゃないの」
「相場通りにもらってるし、食って寝る分には十分だよ。だけど俺には夢があるからな」
一生懸命働いても、それなりに働いてももらえる額は同じなのに。
当たり前のように懸命に働くミッドガルドに、珠美は最初とは全く違う印象を受けた。
それに働いた先に明確な目的を持っていることにも驚いた。
「夢?」
「そ。俺は世界中を旅したいの。だから金を貯めてんの」
意外だった。
誰よりも自由に見えたミッドガルドが、自由を得るために仕事をしていたことが。
「翼があるからどこにでも自由に行けるんじゃないの?」
珠美の事を連れて村まで飛んだくらいだし、実際にあちこちの村や町を回っている。
それなのに何故お金を貯めて旅に行きたがるのか、珠美にはピンとこなかった。
「クルーエルなら行けるけどな。この翼じゃ、モンテーナとクルーエルを囲んでる高山は越えられない。やってみたけど、山が高すぎるから空気が薄くて飛んで越えるのは無理だった。海を渡るにも、連続飛行時間もそんなに長くないから力尽きたら溺れ死ぬ。それにクルーエルならまだしも、獣人に慣れてない国とか、人間しかいない国で空飛んでたら撃ち落とされるかもしれないだろ」
「そっか。確かに」
先入観で珠美が思ったように、あちらの世界では鳥を自由の象徴として見ることがよくあった。
空を飛べたなら。
あの鳥のように自由になりたい。
そんな風に物語や詩、絵画にもよく描かれていたように思う。
だが、ミッドガルドが教えてくれた現実は、考えてみればその通りだと思うことばかりだった。
渡り鳥のように海を渡ることができる鳥もいれば、高山を越えらえる鳥もいるだろう。
だがどこにでもいける、制約のない鳥などいなくて、翼があるから自由だと思うのは、ただのない物ねだりなのかもしれない。
「だから船代とか、行った先での滞在費、食費、その他もろもろに必要なだけのお金を貯めてんの。旅先で稼ぐのも一つだろうけど、行ったことない国で俺に何ができるかなんてわっかんねえし。ずっと飛ぶことしかやって来なかったしさ。だから稼げるだけ稼いで、あとは旅しながら金が尽きる前に稼ぎ方を学ぶ」
ミッドガルドの考えは現実的だった。
いろいろ試してもいることから、思い描いているだけの夢なのではないこともわかる。
珠美はミッドガルドが何も考えていないなどと思っていたことを反省した。
しっかりと自分のやりたいことを見据えているし、そのために考え、行動している。
何も考えていないのではなく、珠美とは考えを向けている場所が違うだけなのだ。
だが珠美が思案している通り、国ではなくギルドに依頼をするようになれば、連絡係としての仕事は終わってしまいかねない。
珠美が国のあり方を変えたことで、誰かが失業してしまうこともあるのだ。
極力そうしないためにも、珠美はこの国の人たちがどうやって暮らしているのかをまず知る必要がある。
そんなことをじっと考えこんでいると、気づけばミッドガルドにひょいっと顔を覗き込まれていた。
「わあ!?」
驚いた次の瞬間には、ラースに腕を引かれ、肩に乗せられていた。
「おまえは相変わらず無防備すぎるぞ、タマ」
連れ去られたことを忘れたのかと言いたいのだろう。
「ご、ごめん」
「おい、なんだよ傷つくなあ。別になんもしねえって。ただ、また空を飛びたいんなら連れてってやろうかと思っただけだよ」
やっぱり油断ならない。
「いや、空はもういい! 移動するなら小竜のカゴに乗せてもらうし」
「そうかあ? 俺が運んだ方が景色もよく見えるし、飛んでるって実感あって気持ちイイだろ」
「そういうのはイラナイ。目的地に安全に着けばそれでいいの」
「ふーん。つまんないやつだなあ」
なんと言われようともかまわない。
珠美はこれまでも堅実に生きてきたし、これからもそのつもりだ。
冒険なんてしなくていいし、バンジージャンプもスカイダイビングもやらなくていい。ジェットコースターも乗らなくていい。
聞きたいことは聞けたし、珠美はまた突拍子もないことに巻き込まれないうちにと、ミッドガルドを扉へと促そうとした。
しかしミッドガルドは今さらラースの存在に気が付いたように、その姿をじっと見ていた。
それから「あ」と、おもむろに指をさした。
「思い出した。ラースってどっかで聞いたことがあると思ってたよ。ラース。ラース=グエンロウだろ?」
「ん? ああ。なんだ?」
「やっぱりそうだ、軍事大国サンジェストの鬼軍曹だ!」
あー思い出してスッキリした! とミッドガルドは爽やかに笑った。
しかしいきなり当時と同じやり方に戻せるわけではない。
人々の多くは竜王の時代を知らず、知っていたとしても今のこの国のあり方にはほとんど不満を持っていないようだから。
便利な存在を知ってしまった今では、戻すと言っても反発が大きいだろう。
「ひとまずセレシアのお父さんからいい反応がもらえればいいんだけど」
「なあ。タマはあっちの世界に家族はいないと言ってたよな」
唐突なラースの言葉に、珠美はきょとんとしながらも頷く。
珠美がセレシアやゼノンと話している間も、なんだかラースはずっと心ここにあらずだったような気がする。
「うん。兄弟はいないし、両親はもう死んじゃったし」
「それでも元の世界に帰りたいと思う理由は何だ?」
その問いに、珠美はすぐには答えられなかった。
確かに会いたい人は特にいない。
ただ、元いた場所なのだから帰るのは当然だと思っていた。
「まあ。就職が決まってるから、帰らないと迷惑になっちゃうしね」
「仕事か。だがタマがいなければ、替わりを頼むだけなんじゃないのか」
それはその通りだ。
元の世界に帰れば、今のように珠美にしかない力というのもない。
プログラミングだって珠美程度にできる人は腐るほどいるし、まだ働いてもいないし、研修も受けていないから実際どれだけ仕事として通用するようになるかはわからなかった。
「だからこそ、職を失わないように期限までには帰らないといけないんじゃん」
言ってから、自分で自分に「何故?」と問いかけた。
もし珠美がいなくてもあちらの世界の誰も困ることがないとしたとき、珠美が元の世界に帰らなければならない理由はあるだろうか。
仕事ならこちらでも探すことはできる。
衣食住もなんとかなるだろう。
しばらく考えてみたが、やはりいつかはあちらの世界に帰りたいと思う。
どちらの世界でも生きて行くのに不便はないとしても、こちらの世界よりも、あちらの世界の方が馴染みが深いから。
元の世界の方が慣れている分、暮らしやすいというのもあるし、突然意思とは関係なく落とされたから未練のようなものもある。
ただ一年後、珠美がこの世界に今よりもっと慣れていたら。帰りたくないと思うのだろうか。
それは今の珠美にはわからなかった。
「タマは真面目だからな」
ふっと笑ったラースに、そうかな、と珠美は首を傾げる。
もしかしたらラースは、戻っても家族のいない珠美を案じてくれたのかもしれない。
「ラースこそ、優しいよ」
ラースは思い切り戸惑いを顔に張り付けて、目を見開いた。
それから少しだけ苦く、小さく笑った。
「いや。俺は自分のことしか考えていない小さな奴だ」
「ラースほど私のために考えて、動いてくれてる人はいないよ」
あちらの世界でも、こちらの世界でも。
そう言えば、戻ったらラースには会えなくなるのだなと今更ながらに気が付いた。
それは寂しいと思った。
こちらの世界に来た時よりももっと、未練を感じてしまうかもしれない。
離れても、また会いたいと思ってしまうような気がした。
家族以外でこんなに傍にいた人は、他にいなかったから。
・・・◆・・・◇・・・◆・・・
珠美は今後の魔王のあり方を検討するだけでなく、現在の魔王の仕事もこなさなければならない。
溜まっている依頼をこなした後も、ミッドガルドから次々と依頼がもたらされた。
今日も応接室でミッドガルドが持ってきた依頼を聞き終えると、「じゃあなー」とさっさと帰りかけていたその背中に思わず声をかけていた。
「ミッドガルド。どうしてミッドガルドはそんなに一生懸命あちこちを回って、この城に依頼を届けてくれてるの?」
初めて会ったときこそ、人の話を聞かず強引に珠美を連れ去ったミッドガルドに腹も立ったが、こうして何度も往復している姿を見れば、仕事熱心なのだとわかった。
「そりゃあ、仕事だから」
「いや、うん、そうだろうけど。いつもひたすらに仕事をこなしてるから、すごいなと思って」
この国の人たちは、どこかのんびりとしている。
あくせくと働かなくても生活はなんとかなるからだろう。
だがミッドガルドはせわしなく駆け回っている。
そういう性分なのだろうかとも思ったが、時に職務の遂行に忠実すぎる態度を見ても何か理由があるのではと気になったのだ。
「お金をもらって仕事をしてるんだから当たり前だろ?」
「うん。そうだよね」
ミッドガルドがきちんと報酬を得る対価として働いていると知り少々驚いた。当たり前の話ではあるのだが、この城の人たちにはそういう概念がないから。
しかし、それを考えれば依頼人は無償で依頼しているわけではないことになる。
支払うこと自体に抵抗がないのなら、払い先がギルドへ変わるだけだと考えてもらえるかもしれない。
「依頼ごとにお金をもらってるの?」
「いや、月に決まった額をもらう」
ギルドと依頼元との支払いも、定額制と都度払いとで抵抗感も変わってくるかもしれない。
珠美はこの辺りのことはギルドの人たちにも意見を聞いてみることにした。
しかしミッドガルドも定額なのだとしたらなおさら、そんなにあくせく働かなくてもいいような気がしてしまうのだが。
「そんなに生活が大変なの? それならもう少しお給料上げてもらった方がいいんじゃないの」
「相場通りにもらってるし、食って寝る分には十分だよ。だけど俺には夢があるからな」
一生懸命働いても、それなりに働いてももらえる額は同じなのに。
当たり前のように懸命に働くミッドガルドに、珠美は最初とは全く違う印象を受けた。
それに働いた先に明確な目的を持っていることにも驚いた。
「夢?」
「そ。俺は世界中を旅したいの。だから金を貯めてんの」
意外だった。
誰よりも自由に見えたミッドガルドが、自由を得るために仕事をしていたことが。
「翼があるからどこにでも自由に行けるんじゃないの?」
珠美の事を連れて村まで飛んだくらいだし、実際にあちこちの村や町を回っている。
それなのに何故お金を貯めて旅に行きたがるのか、珠美にはピンとこなかった。
「クルーエルなら行けるけどな。この翼じゃ、モンテーナとクルーエルを囲んでる高山は越えられない。やってみたけど、山が高すぎるから空気が薄くて飛んで越えるのは無理だった。海を渡るにも、連続飛行時間もそんなに長くないから力尽きたら溺れ死ぬ。それにクルーエルならまだしも、獣人に慣れてない国とか、人間しかいない国で空飛んでたら撃ち落とされるかもしれないだろ」
「そっか。確かに」
先入観で珠美が思ったように、あちらの世界では鳥を自由の象徴として見ることがよくあった。
空を飛べたなら。
あの鳥のように自由になりたい。
そんな風に物語や詩、絵画にもよく描かれていたように思う。
だが、ミッドガルドが教えてくれた現実は、考えてみればその通りだと思うことばかりだった。
渡り鳥のように海を渡ることができる鳥もいれば、高山を越えらえる鳥もいるだろう。
だがどこにでもいける、制約のない鳥などいなくて、翼があるから自由だと思うのは、ただのない物ねだりなのかもしれない。
「だから船代とか、行った先での滞在費、食費、その他もろもろに必要なだけのお金を貯めてんの。旅先で稼ぐのも一つだろうけど、行ったことない国で俺に何ができるかなんてわっかんねえし。ずっと飛ぶことしかやって来なかったしさ。だから稼げるだけ稼いで、あとは旅しながら金が尽きる前に稼ぎ方を学ぶ」
ミッドガルドの考えは現実的だった。
いろいろ試してもいることから、思い描いているだけの夢なのではないこともわかる。
珠美はミッドガルドが何も考えていないなどと思っていたことを反省した。
しっかりと自分のやりたいことを見据えているし、そのために考え、行動している。
何も考えていないのではなく、珠美とは考えを向けている場所が違うだけなのだ。
だが珠美が思案している通り、国ではなくギルドに依頼をするようになれば、連絡係としての仕事は終わってしまいかねない。
珠美が国のあり方を変えたことで、誰かが失業してしまうこともあるのだ。
極力そうしないためにも、珠美はこの国の人たちがどうやって暮らしているのかをまず知る必要がある。
そんなことをじっと考えこんでいると、気づけばミッドガルドにひょいっと顔を覗き込まれていた。
「わあ!?」
驚いた次の瞬間には、ラースに腕を引かれ、肩に乗せられていた。
「おまえは相変わらず無防備すぎるぞ、タマ」
連れ去られたことを忘れたのかと言いたいのだろう。
「ご、ごめん」
「おい、なんだよ傷つくなあ。別になんもしねえって。ただ、また空を飛びたいんなら連れてってやろうかと思っただけだよ」
やっぱり油断ならない。
「いや、空はもういい! 移動するなら小竜のカゴに乗せてもらうし」
「そうかあ? 俺が運んだ方が景色もよく見えるし、飛んでるって実感あって気持ちイイだろ」
「そういうのはイラナイ。目的地に安全に着けばそれでいいの」
「ふーん。つまんないやつだなあ」
なんと言われようともかまわない。
珠美はこれまでも堅実に生きてきたし、これからもそのつもりだ。
冒険なんてしなくていいし、バンジージャンプもスカイダイビングもやらなくていい。ジェットコースターも乗らなくていい。
聞きたいことは聞けたし、珠美はまた突拍子もないことに巻き込まれないうちにと、ミッドガルドを扉へと促そうとした。
しかしミッドガルドは今さらラースの存在に気が付いたように、その姿をじっと見ていた。
それから「あ」と、おもむろに指をさした。
「思い出した。ラースってどっかで聞いたことがあると思ってたよ。ラース。ラース=グエンロウだろ?」
「ん? ああ。なんだ?」
「やっぱりそうだ、軍事大国サンジェストの鬼軍曹だ!」
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