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第二章 ここは魔王城いいところ

13.宰相

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 フィリスは従者、護衛と共に近くの町へ行き、馬車の到着を待って城に戻ることになった。
 珠美とラース、ゼノンは再び小竜が運ぶカゴに乗った。

「とにかく問題なく依頼をこなせてよかった」

 上空に上がり、フィリスたちに話を聞かれる心配がなくなってから、珠美はほうっと息を吐いた。

「ああ。見事なもんだったなあ。やっぱり珠美が十八だってのは本当なんだな」

「今更?」

「いや、わかってはいたが、なんかこう、見た目の印象が強くてな。どうにも頭がついていかないというか」

 じっとりとした目をラースに向ければ、珠美もじっと見られていることに気が付いた。
 視線の主は、ゼノンだ。
 クルーエルに向かう間も、橋を修理しているときも、ゼノンは一言も喋らず、珠美はすっかりそこにいることを忘れてしまったほどだった。

 ゼノンのことも珠美はまだ何も知らない。何者なのかも。
 敢えて視線を合わせても、ゼノンは珠美をじっと見るのをやめなかった。
 その目は珠美をつぶさに観察しているようだった。

「な、なに?」

「いや。魔法使ったのに、元気だなと思って」

 顔色も変えず、のんびりとした口調のゼノンに、珠美は訝しげに眉を顰めた。

「元気……と言えば元気だけど。普通だよ」

「ふうん。まあ、一部分の生成だけだったからかな。それともクライアとは持ってる魔力量が違うのかなあ」

 ゼノンはぶつぶつと考えるように口の中で呟いていたが、珠美はそれが気にかかった。

「どういうこと? クライアは魔法を使うと疲れちゃってたの?」

「うーん、まあ時々ね」

「ねえ、その話詳しく聞きたいんだけど。ゼノンは魔法にも詳しいの? クライアが魔法を使ってるところも見てきたってことよね」

「俺は魔法は使えないよ。だから詳しくはない」

 ゼノンはぷらぷらと手を振って否定したが、モルランよりは何かを知っているように見えた。
 そこで珠美は、はっとした。

「もしかして。ゼノンって、モルランが探してくれてた『宰相』?」

「そうだよー」

 珠美は思わず額を覆った。
 まさか、あれほど探していたのにあっさり目の前に、しかもクルーエルまで同行していたとは。
 しかしこれで様々な疑問が解消できるかもしれない。
 魔王に兄弟はいたのか。兄弟も短命だったのか。兄弟も魔法を使えたのか。
 珠美は勢い込んで口を開こうとした。
 しかしそれは、ゼノンの大きな掌をぴっと向けられて封じられた。

「魔王の寿命と魔法の相関関係について知りたいんでしょ? たぶんタマミの推測は当たってると思うよ」

 推測のための材料を集めるようとするよりも先に、ゼノンは珠美が欲しかった結論を面前に示した。
 珠美は思い切り目を見開く。

「ってことは……」

 ゼノンは相変わらずの、のんびりとした口調でそれを告げた。

「うん。魔法は使いすぎると寿命を縮める。だから代々魔王は短命。タマミもお人好しなこと続けてると、死ぬよ?」
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