上 下
23 / 47
第三話・罠になった女

Side・秋山 玲子・2

しおりを挟む
 中学二年生の時だった。
 別のクラスに転校してきた、秋山壮太と出逢ったのは。

 転校してきたばかりの彼は、親から酷いネグレクトを受け、着ているものも汚く、異臭が漂っていた。
 彼が同級生から酷いいじめを受けている時、同じクラスの横沢由布子(よこざわゆうこ)が、庇って助けた、と聞いたことがある。

 壮太は、由布子に助けられていたようだった。
 そして私――須田玲子――現在、秋山玲子は、そんな壮太に助けられたのだ。


 その日は、酷いどしゃ降りの雨だった。
 耐えきれなくなって、親戚の家を飛び出した。
 身寄りのない私を引き取ってくれた義理父に、私は無理矢理、何度も凌辱された事が原因だ。


 中学二年生になってすぐの時、彼は私に囁いた。



――静かにしていたら、すぐすむからね



 何を言っているのか、解らなかった。
 部活から家に帰ってきた私をそのまま、あの男は、義理母が居ない隙を見て、蹂躙した。

 身体を撫で回され、衣類を奪われ、膨らみ始めた少女の蕾を無骨に揉まれ、まだ男を知らない幼い身体に、無理矢理、欲望をぶちまけられた。



 無残に引き裂かれた自分の身体が、恐怖に怯え、夢でない事を知った時、涙があとからあとから流れ落ちて行った。



――このコトは、誰にも言っちゃダメだよ。わかるね?



 それは、身寄りのない私を引き取って育ててくれている優しい義理母には、とても言えない恐ろしい出来事だった。

 もともと、義理父は苦手だった。
 事あるごとに、私をいやらしい男の目で見つめ、義理母の目を盗んでは、黙って身体を撫で回してくることが、多々あったからだ。
 だから、二人きりにならないよう、気を付けていたのに。


 私が黙っているものだから、あの男の黒い手は、味を占めて何度も私を苦しめた。


 夜中に、寝室に潜り込まれた事もあった。
 着用していた下着を取り上げられた上に、それを口の中に押し込まれ、声を出せないようにして犯されたこともある。
 もっとひどい事も、沢山された。


 何度、あの黒い手に蹂躙されたか、解らない程に。


 その行為は、日に日にエスカレートしていって、もう、本当に限界だった。


 そしてさっき、遂に私は堪えきれなくなって、義理父を突き飛ばし、家から逃げ出した。

 ボタンが引きちぎられ、無残に破れた制服姿で、このどしゃぶりの雨の中、お金も持っていない私は行く宛も無く、裸足でとぼとぼと歩き、公園の大きな遊具の雨が当たらない下で蹲った。
 どうしよう。
 もう、家には帰れない。
 このまま、死んでしまおうか。
 身寄りのない私が死んでも、誰も悲しまないだろう。

 むしろ、優しい義理母をこんな形で裏切ってしまった事は、黙って天国へ――いや、こんな事になってしまったのだから、この秘密は地獄へ持って行くしかないだろう。

 彼女には、絶対知られちゃいけない。
 ここまで血のつながらない自分を、愛情掛けて育ててくれたあんなに優しい義理母を、自分のせいで苦しめたりなんて、できない。


 こんなに汚れてしまった私は、もう、誰も愛してくれないだろう。


 誰も――・・・・


 膝を抱えていると、涙があとからあとから流れて来た。
 辛くて、辛くて、嗚咽が漏れた。
 どうしてこんな事に・・・・


 でも、あの黒い手に、これ以上触られるのは我慢できなかった。


「おい、お前、大丈夫か?」


 蹲ってボロボロになって泣いている私に、声をかけてくれた男が居た。

「あれっ、その制服、俺と一緒のガッコ?」

 見ると、少し天然パーマがかかった短くて黒い髪の、切れ長の目で顔立ちの綺麗な少年が立っていた。誰だろう、この人。どこかで見たことがあるような気もするけど・・・・。記憶を辿っても、こんな綺麗な男は知らないし、思い出すことはできなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

憧れの剣士とセフレになったけど俺は本気で恋してます!

藤間背骨
BL
若い傭兵・クエルチアは、凄腕の傭兵・ディヒトバイと戦って負け、その強さに憧れた。 クエルチアは戦場から姿を消したディヒトバイを探し続け、数年後に見つけた彼は闘技場の剣闘士になっていた。 初めてディヒトバイの素顔を見たクエルチアは一目惚れし、彼と戦うために剣闘士になる。 そして、勢いで体を重ねてしまう。 それ以来戦いのあとはディヒトバイと寝ることになったが、自分の気持ちを伝えるのが怖くて体だけの関係を続けていた。 このままでいいのかと悩むクエルチアは護衛の依頼を持ちかけられる。これを機にクエルチアは勇気を出してディヒトバイと想いを伝えようとするが――。 ※2人の関係ではありませんが、近親相姦描写が含まれるため苦手な方はご注意ください。 ※年下わんこ攻め×人生に疲れたおじさん受け ※毎日更新・午後8時投稿・全32話

偽りの結婚生活 ~私と彼の6年間の軌跡

結城芙由奈 
恋愛
偽りの結婚をした男性は決して好きになってはいけない私の初恋の人でした― 大手企業に中途採用された「私」。だけどその実態は仮の結婚相手になる為の口実・・。 これは、初恋の相手を好きになってはいけない「私」と「彼」・・そして2人を取り巻く複雑な人間関係が繰り広げられる6年間の結婚生活の軌跡の物語—。 <全3部作:3部作目で完結です:終章に入りました:本編完結、番外編完結しました> ※カクヨム・小説家になろうにも投稿しています

異世界転生したノンケの書生は、華族の貴公子に不埒な関係を望まれているが回避したい。

アナマチア
BL
ある日突然、交通事故で両親を亡くした、美大生の山田樹。 葬儀を終えて日常生活を送り始めるが、うつ状態になっていた樹は、葬儀後初めての登校時に接触事故で線路に落下する。 頭を強く打ち付けて視界が暗転し、目覚めると、見知らぬ部屋の布団の中に横たわっていた。 樹が夢でも見ている心地でいると、女中の花が現れて、樹のことを「早乙女さん」と呼んだ。 頭がぼうっとして何も考えられず、強い睡魔に襲われ、眠りに落ちようとしていた樹の前に、国防色の軍服を身にまとった偉丈夫――花ヶ前梗一郎(はながさきこういちろう)が現れた。 樹の名を切なそうに呼びながら近づいてきた梗一郎。驚いた樹は抵抗することもできず、梗一郎に抱き締められる。すると突然、想像を絶する頭痛に襲われた樹は、絶叫したのちに意識を失ってしまう。 そして気がつけば、重力が存在しない、真っ白な空間に浮かんでいた。そこで樹は、自分によく似た容姿の少年に出会う。 少年の正体は、早乙女樹の肉体を借りた、死を司る神――タナトスだった。そしてもう一柱、タナトスよりも小柄な少女、生を司る神――ビオスが現れる。 ビオスが言うには、樹は『異世界転生』をしたのだという。そして転生後の肉体の記憶は、特定の条件下で徐々に蘇ると告げられ、樹は再び異世界で目を覚ます。 樹が目覚めると、梗一郎が涙を流していた。 「樹が生きていて、本当によかった……!」 そう言って、梗一郎が樹の額に口付けた瞬間、樹の脳内に早乙女樹の幼少期と思われる映像が流れ、眠るように意識を失う。 『特定の条件下』とは、梗一郎との愛ある接触のことだった。 無事にひとつ目の記憶を取り戻した樹は、公家華族・花ヶ前伯爵家お抱えの書生(画家見習い)・『早乙女樹』を演じながら、花ヶ前家で生活を送る。 スペイン風邪による後遺症で『記憶喪失』になってしまった樹を心配して見舞いに来たのは、楚々とした容貌の美少女――梗一郎の妹である、花ヶ前椿子だった。 樹は驚愕に目を見開いた。 目の前に立つ少女は、樹が描いた人物画。 『大正乙女』そのままの姿形だったのである。 なんと樹は、自分が描いた油画の世界に異世界転生していたのだ。 梗一郎と恋仲であった早乙女樹として転生してしまった樹(ノンケ)は、男と恋愛なんて出来るはずがないと、記憶喪失を理由に梗一郎と距離を置くが……。

「優秀で美青年な友人の精液を飲むと頭が良くなってイケメンになれるらしい」ので、友人にお願いしてみた。

和泉奏
BL
頭も良くて美青年な完璧男な友人から液を搾取する話。

ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。  一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。  そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。

権田剛専用肉便器ファイル

かば
BL
権田剛のノンケ狩りの話 人物紹介 権田剛(30) ゴリラ顔でごっつい身体付き。高校から大学卒業まで柔道をやっていた。得意技、寝技、絞め技……。仕事は闇の仕事をしている、893にも繋がりがあり、男も女も拉致監禁を請け負っている。 趣味は、売り専ボーイをレイプしては楽しんでいたが、ある日ノンケの武田晃に欲望を抑えきれずレイプしたのがきっかけでノンケを調教するのに快感になってから、ノンケ狩りをするようになった。 ある日、モデルの垣田篤史をレイプしたことがきっかけでモデル事務所の社長、山本秀樹を肉便器にし、所属モデル達に手をつけていく……売り専ボーイ育成モデル事務所の話に続く 武田晃 高校2年生、高校競泳界の期待の星だったが……権田に肉便器にされてから成績が落ちていった……、尻タブに権田剛専用肉便器1号と入墨を入れられた。 速水勇人 高校2年生、高校サッカーで活躍しており、プロチームからもスカウトがいくつかきている。 肉便器2号 池田悟(25) プロの入墨師で権田の依頼で肉便器にさせられた少年達の尻タブに権田剛専用肉便器◯号と入墨をいれた、権田剛のプレイ仲間。 権田に依頼して池田悟が手に入れたかった幼馴染、萩原浩一を肉便器にする。権田はその弟、萩原人志を肉便器にした。 萩原人志 高校2年生、フェギアかいのプリンスで有名なイケメン、甘いマスクで女性ファンが多い。 肉便器3号 萩原浩一(25) 池田悟の幼馴染で弟と一緒に池田悟専用肉便器1号とされた。 垣田篤史 高校2年生 速水勇人の幼馴染で、読者モデルで人気のモデル、権田の脅しに怯えて、権田に差し出された…。肉便器4号 黒澤竜也 垣田篤史と同じモデル事務所に所属、篤史と飲みに行ったところに権田に感づかれて調教される……。肉便器ではなく、客をとる商品とされた。商品No.1 山本秀樹(25) 篤史、竜也のモデル事務所の社長兼モデル。 権田と池田の毒牙にかかり、池田悟の肉便器2号となる。 香川恋 高校2年生 香川愛の双子の兄、女好きで弟と女の子を引っ掛けては弟とやりまくっていた、根からの女好きだが、権田はの一方的なアナル責で開花される……。商品No.2 香川愛 高校2年生 双子の兄同様、権田はの一方的なアナル責で開花される……。商品No.3 佐々木勇斗 高校2年生 権田によって商品に調教された直後に客をとる優秀商品No.4 橘悠生 高校2年生 権田によってアナルを開発されて初貫通をオークションで売られた商品No.5 モデル達の調教話は「売り専ボーイ育成モデル事務所」をぜひ読んでみてください。 基本、鬼畜でエロオンリーです。

今夜、元婚約者の結婚式をぶち壊しに行きます

結城芙由奈 
恋愛
【今夜は元婚約者と友人のめでたい結婚式なので、盛大に祝ってあげましょう】 交際期間5年を経て、半年後にゴールインするはずだった私と彼。それなのに遠距離恋愛になった途端彼は私の友人と浮気をし、友人は妊娠。結果捨てられた私の元へ、図々しくも結婚式の招待状が届けられた。面白い…そんなに私に祝ってもらいたいのなら、盛大に祝ってやろうじゃないの。そして私は結婚式場へと向かった。 ※他サイトでも投稿中 ※苦手な短編ですがお読みいただけると幸いです

少し、黙ってていただけますか?

結城芙由奈 
恋愛
【お黙り!! 考えがまとまらないでしょう!?】 私は女性警察官。正義感に燃え、悪は絶対に許さない。プライベートよりも仕事を優先して働いていた。27歳の誕生日を迎えたその日。昇任試験に合格し、憧れだった警部補になれた。そこで恋人に電話で連絡するも、フラれてしまう。昇給と失恋を同時に味わった私。呆然とした足取りで岐路についていると川で溺れそうになっていた男性に遭遇。助けに飛び込んだ物の救出に失敗。私は死んでしまう。 そして次に目覚めたときは……何と、お墓に埋められそうになっていた女性の身体に憑依? していた―― ※ 短編です。あっさり終わります(1万文字程度) ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...