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第三話・罠になった女
Side・秋山 玲子・2
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中学二年生の時だった。
別のクラスに転校してきた、秋山壮太と出逢ったのは。
転校してきたばかりの彼は、親から酷いネグレクトを受け、着ているものも汚く、異臭が漂っていた。
彼が同級生から酷いいじめを受けている時、同じクラスの横沢由布子(よこざわゆうこ)が、庇って助けた、と聞いたことがある。
壮太は、由布子に助けられていたようだった。
そして私――須田玲子――現在、秋山玲子は、そんな壮太に助けられたのだ。
その日は、酷いどしゃ降りの雨だった。
耐えきれなくなって、親戚の家を飛び出した。
身寄りのない私を引き取ってくれた義理父に、私は無理矢理、何度も凌辱された事が原因だ。
中学二年生になってすぐの時、彼は私に囁いた。
――静かにしていたら、すぐすむからね
何を言っているのか、解らなかった。
部活から家に帰ってきた私をそのまま、あの男は、義理母が居ない隙を見て、蹂躙した。
身体を撫で回され、衣類を奪われ、膨らみ始めた少女の蕾を無骨に揉まれ、まだ男を知らない幼い身体に、無理矢理、欲望をぶちまけられた。
無残に引き裂かれた自分の身体が、恐怖に怯え、夢でない事を知った時、涙があとからあとから流れ落ちて行った。
――このコトは、誰にも言っちゃダメだよ。わかるね?
それは、身寄りのない私を引き取って育ててくれている優しい義理母には、とても言えない恐ろしい出来事だった。
もともと、義理父は苦手だった。
事あるごとに、私をいやらしい男の目で見つめ、義理母の目を盗んでは、黙って身体を撫で回してくることが、多々あったからだ。
だから、二人きりにならないよう、気を付けていたのに。
私が黙っているものだから、あの男の黒い手は、味を占めて何度も私を苦しめた。
夜中に、寝室に潜り込まれた事もあった。
着用していた下着を取り上げられた上に、それを口の中に押し込まれ、声を出せないようにして犯されたこともある。
もっとひどい事も、沢山された。
何度、あの黒い手に蹂躙されたか、解らない程に。
その行為は、日に日にエスカレートしていって、もう、本当に限界だった。
そしてさっき、遂に私は堪えきれなくなって、義理父を突き飛ばし、家から逃げ出した。
ボタンが引きちぎられ、無残に破れた制服姿で、このどしゃぶりの雨の中、お金も持っていない私は行く宛も無く、裸足でとぼとぼと歩き、公園の大きな遊具の雨が当たらない下で蹲った。
どうしよう。
もう、家には帰れない。
このまま、死んでしまおうか。
身寄りのない私が死んでも、誰も悲しまないだろう。
むしろ、優しい義理母をこんな形で裏切ってしまった事は、黙って天国へ――いや、こんな事になってしまったのだから、この秘密は地獄へ持って行くしかないだろう。
彼女には、絶対知られちゃいけない。
ここまで血のつながらない自分を、愛情掛けて育ててくれたあんなに優しい義理母を、自分のせいで苦しめたりなんて、できない。
こんなに汚れてしまった私は、もう、誰も愛してくれないだろう。
誰も――・・・・
膝を抱えていると、涙があとからあとから流れて来た。
辛くて、辛くて、嗚咽が漏れた。
どうしてこんな事に・・・・
でも、あの黒い手に、これ以上触られるのは我慢できなかった。
「おい、お前、大丈夫か?」
蹲ってボロボロになって泣いている私に、声をかけてくれた男が居た。
「あれっ、その制服、俺と一緒のガッコ?」
見ると、少し天然パーマがかかった短くて黒い髪の、切れ長の目で顔立ちの綺麗な少年が立っていた。誰だろう、この人。どこかで見たことがあるような気もするけど・・・・。記憶を辿っても、こんな綺麗な男は知らないし、思い出すことはできなかった。
別のクラスに転校してきた、秋山壮太と出逢ったのは。
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彼が同級生から酷いいじめを受けている時、同じクラスの横沢由布子(よこざわゆうこ)が、庇って助けた、と聞いたことがある。
壮太は、由布子に助けられていたようだった。
そして私――須田玲子――現在、秋山玲子は、そんな壮太に助けられたのだ。
その日は、酷いどしゃ降りの雨だった。
耐えきれなくなって、親戚の家を飛び出した。
身寄りのない私を引き取ってくれた義理父に、私は無理矢理、何度も凌辱された事が原因だ。
中学二年生になってすぐの時、彼は私に囁いた。
――静かにしていたら、すぐすむからね
何を言っているのか、解らなかった。
部活から家に帰ってきた私をそのまま、あの男は、義理母が居ない隙を見て、蹂躙した。
身体を撫で回され、衣類を奪われ、膨らみ始めた少女の蕾を無骨に揉まれ、まだ男を知らない幼い身体に、無理矢理、欲望をぶちまけられた。
無残に引き裂かれた自分の身体が、恐怖に怯え、夢でない事を知った時、涙があとからあとから流れ落ちて行った。
――このコトは、誰にも言っちゃダメだよ。わかるね?
それは、身寄りのない私を引き取って育ててくれている優しい義理母には、とても言えない恐ろしい出来事だった。
もともと、義理父は苦手だった。
事あるごとに、私をいやらしい男の目で見つめ、義理母の目を盗んでは、黙って身体を撫で回してくることが、多々あったからだ。
だから、二人きりにならないよう、気を付けていたのに。
私が黙っているものだから、あの男の黒い手は、味を占めて何度も私を苦しめた。
夜中に、寝室に潜り込まれた事もあった。
着用していた下着を取り上げられた上に、それを口の中に押し込まれ、声を出せないようにして犯されたこともある。
もっとひどい事も、沢山された。
何度、あの黒い手に蹂躙されたか、解らない程に。
その行為は、日に日にエスカレートしていって、もう、本当に限界だった。
そしてさっき、遂に私は堪えきれなくなって、義理父を突き飛ばし、家から逃げ出した。
ボタンが引きちぎられ、無残に破れた制服姿で、このどしゃぶりの雨の中、お金も持っていない私は行く宛も無く、裸足でとぼとぼと歩き、公園の大きな遊具の雨が当たらない下で蹲った。
どうしよう。
もう、家には帰れない。
このまま、死んでしまおうか。
身寄りのない私が死んでも、誰も悲しまないだろう。
むしろ、優しい義理母をこんな形で裏切ってしまった事は、黙って天国へ――いや、こんな事になってしまったのだから、この秘密は地獄へ持って行くしかないだろう。
彼女には、絶対知られちゃいけない。
ここまで血のつながらない自分を、愛情掛けて育ててくれたあんなに優しい義理母を、自分のせいで苦しめたりなんて、できない。
こんなに汚れてしまった私は、もう、誰も愛してくれないだろう。
誰も――・・・・
膝を抱えていると、涙があとからあとから流れて来た。
辛くて、辛くて、嗚咽が漏れた。
どうしてこんな事に・・・・
でも、あの黒い手に、これ以上触られるのは我慢できなかった。
「おい、お前、大丈夫か?」
蹲ってボロボロになって泣いている私に、声をかけてくれた男が居た。
「あれっ、その制服、俺と一緒のガッコ?」
見ると、少し天然パーマがかかった短くて黒い髪の、切れ長の目で顔立ちの綺麗な少年が立っていた。誰だろう、この人。どこかで見たことがあるような気もするけど・・・・。記憶を辿っても、こんな綺麗な男は知らないし、思い出すことはできなかった。
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