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七章 / チャラ神様、天上界に還ります!
其の五
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あれから、二週間くらいの時間が経った。天人のいない日常にも慣れて来た。
でも、時折淋しくなるのはどうしてだろう。
早朝自宅から境内の方に向かって行くと、ざっ、ざっ、と箒(ほうき)で地面を掃く音が聞こえてきた。この音を聞くのは久しぶりだ。天人がいなくなってから、聞かなくなった音だから。
という事はもしかして、天人が帰って来てくれたのかも!!
あの別れは不本意だった。ちゃんとお別れしたかったのに、素直に言えなかったから、本当は後悔していた。
もう二度と天人に会えないのだと思うと、胸が締め付けられるような・・・・そんな辛い気持ちになって、どうしようもなかった。
今度こそ素直になって、お帰りなさいって言おう!
帰って来てくれて嬉しい、って。もっと一緒にいたい、って。
「天人、お帰りなさ――」
本殿を急いで曲がり、声を掛けようと思って境内に出ると、箒を使って早朝から掃除してくれているのは、何とじぞーちゃんだった。天人では無かった。
「神奈、おはよう。早く目が覚めたから、掃除しようと思って。天人がいなくなってから、神奈の負担になってるやん? これからはボクも手伝うから」
「あ・・・・そっか。ありがとう」
「神奈、めっちゃ残念そうな顔してる」
「えっ、あ・・・・そんな事・・・・ないよ・・・・」
「いいよ、気にしないで。ボクも天人が居なくなって淋しいなって思ってるもん。ミケも喧嘩できる相手がいないから、ぼんやりしている事増えたし」
みんな、同じ気持ちだったんだ。
天人が居なくて淋しいって思うその気持ちが。
でも、今ので解った。もう天人は還って来ない。
もともと住む世界が違うのだから当然だ。それに、ミケもじぞーちゃんも、いつかお別れしないといけなくなる。
このパーティーで過ごせる時間は、限られているのだ。
「ごめんなさい。元気出すから。しょんぼりしていても、天人が還って来る訳じゃないし、私達で色々頑張りましょう。ミケのご主人様も探さなきゃいけないわ」
彼女のご主人様が見つからなければいいのに、なんてそんな最低な事は思いたくない。
別れが辛いからと言って、そんな卑怯な事はお願いしたくないもの。
心は、自分を映す鏡だから。
この、切ない胸の痛みともきちんと向き合って、前に進みましょう。
後悔しないように。
でも、時折淋しくなるのはどうしてだろう。
早朝自宅から境内の方に向かって行くと、ざっ、ざっ、と箒(ほうき)で地面を掃く音が聞こえてきた。この音を聞くのは久しぶりだ。天人がいなくなってから、聞かなくなった音だから。
という事はもしかして、天人が帰って来てくれたのかも!!
あの別れは不本意だった。ちゃんとお別れしたかったのに、素直に言えなかったから、本当は後悔していた。
もう二度と天人に会えないのだと思うと、胸が締め付けられるような・・・・そんな辛い気持ちになって、どうしようもなかった。
今度こそ素直になって、お帰りなさいって言おう!
帰って来てくれて嬉しい、って。もっと一緒にいたい、って。
「天人、お帰りなさ――」
本殿を急いで曲がり、声を掛けようと思って境内に出ると、箒を使って早朝から掃除してくれているのは、何とじぞーちゃんだった。天人では無かった。
「神奈、おはよう。早く目が覚めたから、掃除しようと思って。天人がいなくなってから、神奈の負担になってるやん? これからはボクも手伝うから」
「あ・・・・そっか。ありがとう」
「神奈、めっちゃ残念そうな顔してる」
「えっ、あ・・・・そんな事・・・・ないよ・・・・」
「いいよ、気にしないで。ボクも天人が居なくなって淋しいなって思ってるもん。ミケも喧嘩できる相手がいないから、ぼんやりしている事増えたし」
みんな、同じ気持ちだったんだ。
天人が居なくて淋しいって思うその気持ちが。
でも、今ので解った。もう天人は還って来ない。
もともと住む世界が違うのだから当然だ。それに、ミケもじぞーちゃんも、いつかお別れしないといけなくなる。
このパーティーで過ごせる時間は、限られているのだ。
「ごめんなさい。元気出すから。しょんぼりしていても、天人が還って来る訳じゃないし、私達で色々頑張りましょう。ミケのご主人様も探さなきゃいけないわ」
彼女のご主人様が見つからなければいいのに、なんてそんな最低な事は思いたくない。
別れが辛いからと言って、そんな卑怯な事はお願いしたくないもの。
心は、自分を映す鏡だから。
この、切ない胸の痛みともきちんと向き合って、前に進みましょう。
後悔しないように。
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