77 / 112
六章 / チャラ神様、金綺羅教祖様に捕らえられた神奈を助けます!
其の九
しおりを挟む
駒井さんが手配してくれたタクシーに乗り、私達四人は天海神社へ戻った。すっかり日は暮れ、もう夜に近づいている。駒井さんがお礼に、特上寿司を神社に人数分届けるから、と約束してくれたので、天人はほこほこ顔で喜んでいた。
タクシーから降りる際、私は不可抗力ながら天人に背負われた。まだ立てないのだ。
眠っていたじぞーちゃんやミケもようやく眠りから覚め、天海神社へ降り立った。
「神奈、ごめんなさい。アタクシとしたことが、知らない間に眠ってしまって、神奈に苦労をかけちゃったわね」
「ボクもごめんね。大丈夫やった?」
「ええ。私は大丈夫よ。天人が助けてくれたから」
「へえ、坊主の癖にやるわね」
「ケッ。眠り地蔵に眠り猫なんて、クソの役にも立たねーな」
「だからそれについては謝っているでしょ!」
「フン。もし俺がそんな失態犯してみろ? お前ら全員で総攻撃するだろ。何でお前らは役に立たなくても赦されて、俺はダメなんだよ!」
「アンタは神様なんでしょ! アタクシや地蔵より役に立って当然でしょう? 何をエラソーに言っているの」
「ケッ。このクソ猫が。やんのか、コラ――」
「喧嘩、まだするの?」
何時もニコニコしているじぞーちゃんが、怖い顔でミケと天人を睨んでいる。「神奈を背負ってなかったら、ボク、間違いなく天人にのしかかったで。もう、その辺で喧嘩止めといてやー」
普段笑顔のじぞーちゃんが怒った顔すると、超怖いわね・・・・!
「地蔵、ごめんなさい。アタクシなりの愛情表現だから、喧嘩している訳じゃないのよ?」
苦しい言い訳だ。
「そーなの?」
しかし、素直なじぞーちゃんは信じてしまう。ふふ。カワイイなぁ。
「モチロンよ。喧嘩をしている訳ではなくってよ」
「そっか。それなら良かった」
じぞーちゃんは再びニコニコ笑顔。良かったわ!
――天人。天人!
あれ。何か声が聞こえる・・・・!
もしや謎の声? まだ消えていなかったの!?
――違う、違う! 儂だ。蒼玄(そうげん)だ。神奈や仲間も一緒だろう。彼らは構わないが、人払いしてくれないか。そうだ、宝物殿がいい。そこに入ってくれ。
「親父!?」
謎の声では無かった。天人のお父様――天地創造の大地神(だいちしん)、蒼玄様だ。見ると、初めて彼の声を聞いた時と同じように、大地心の勾玉が翡翠色に光っていた。
「宝物殿の鍵は社務所よ。じぞーちゃん、ごめん。取って来てくれる? 場所は解るわよね?」
私はまだ立てないので、じぞーちゃんにお使いを頼んだ。
「うん。待ってて!」
たたたーっとじぞーちゃんは走って行って、社務所から鍵を取って来てくれた。以前は解放していたけれど、参拝客が増えてきた事と、前回のスネ太郎の件もあるから、鍵を掛けるようにしたのだ。
鍵を開錠し、宝物殿に入った。もう秋だから日暮れから冷えるようになった。空調の無い夕刻の宝物殿は肌寒い。
「親父っ。何の用だよ! あと、やっかいな奴が人間界でのさばってるじゃねーか! アレ、何だ? 禁忌の呪詛使いって言うなら、天上界のモンだろ」
「当然だろ。何時までも人間界にいる訳にはいかねーし。さっさと還って、もう人間界なんか来なくていいように、平和にアッチで暮らすから」
「アンタ・・・・謎の声の事はどーすんのよ。無責任な男ね」
「俺が還ったら、謎の声のヤローはもう現れねーよ。勾玉狙いっぽかったし、俺が神器持って帰ったら、天上界に戻って来るさ。人間界に用はねーよ」
「このまま声の主が人間界にいついちゃって、天上界に戻らなかったら? 坊主、責任取れるの?」
「ミケは意外に心配性だな。んなの大丈夫だって! もし何かあっても、そん時はそん時だ! 何とかなるだろ。あっはっは」
高笑いする天人を、ミケが軽蔑の眼差しで見つめていた。天人の態度に落ち込む気持ちを隠せない私の事も、彼女にはしっかりと見られていた。
それにしても急ね。
明日、天人が天上界に還ってしまうなんて――
タクシーから降りる際、私は不可抗力ながら天人に背負われた。まだ立てないのだ。
眠っていたじぞーちゃんやミケもようやく眠りから覚め、天海神社へ降り立った。
「神奈、ごめんなさい。アタクシとしたことが、知らない間に眠ってしまって、神奈に苦労をかけちゃったわね」
「ボクもごめんね。大丈夫やった?」
「ええ。私は大丈夫よ。天人が助けてくれたから」
「へえ、坊主の癖にやるわね」
「ケッ。眠り地蔵に眠り猫なんて、クソの役にも立たねーな」
「だからそれについては謝っているでしょ!」
「フン。もし俺がそんな失態犯してみろ? お前ら全員で総攻撃するだろ。何でお前らは役に立たなくても赦されて、俺はダメなんだよ!」
「アンタは神様なんでしょ! アタクシや地蔵より役に立って当然でしょう? 何をエラソーに言っているの」
「ケッ。このクソ猫が。やんのか、コラ――」
「喧嘩、まだするの?」
何時もニコニコしているじぞーちゃんが、怖い顔でミケと天人を睨んでいる。「神奈を背負ってなかったら、ボク、間違いなく天人にのしかかったで。もう、その辺で喧嘩止めといてやー」
普段笑顔のじぞーちゃんが怒った顔すると、超怖いわね・・・・!
「地蔵、ごめんなさい。アタクシなりの愛情表現だから、喧嘩している訳じゃないのよ?」
苦しい言い訳だ。
「そーなの?」
しかし、素直なじぞーちゃんは信じてしまう。ふふ。カワイイなぁ。
「モチロンよ。喧嘩をしている訳ではなくってよ」
「そっか。それなら良かった」
じぞーちゃんは再びニコニコ笑顔。良かったわ!
――天人。天人!
あれ。何か声が聞こえる・・・・!
もしや謎の声? まだ消えていなかったの!?
――違う、違う! 儂だ。蒼玄(そうげん)だ。神奈や仲間も一緒だろう。彼らは構わないが、人払いしてくれないか。そうだ、宝物殿がいい。そこに入ってくれ。
「親父!?」
謎の声では無かった。天人のお父様――天地創造の大地神(だいちしん)、蒼玄様だ。見ると、初めて彼の声を聞いた時と同じように、大地心の勾玉が翡翠色に光っていた。
「宝物殿の鍵は社務所よ。じぞーちゃん、ごめん。取って来てくれる? 場所は解るわよね?」
私はまだ立てないので、じぞーちゃんにお使いを頼んだ。
「うん。待ってて!」
たたたーっとじぞーちゃんは走って行って、社務所から鍵を取って来てくれた。以前は解放していたけれど、参拝客が増えてきた事と、前回のスネ太郎の件もあるから、鍵を掛けるようにしたのだ。
鍵を開錠し、宝物殿に入った。もう秋だから日暮れから冷えるようになった。空調の無い夕刻の宝物殿は肌寒い。
「親父っ。何の用だよ! あと、やっかいな奴が人間界でのさばってるじゃねーか! アレ、何だ? 禁忌の呪詛使いって言うなら、天上界のモンだろ」
「当然だろ。何時までも人間界にいる訳にはいかねーし。さっさと還って、もう人間界なんか来なくていいように、平和にアッチで暮らすから」
「アンタ・・・・謎の声の事はどーすんのよ。無責任な男ね」
「俺が還ったら、謎の声のヤローはもう現れねーよ。勾玉狙いっぽかったし、俺が神器持って帰ったら、天上界に戻って来るさ。人間界に用はねーよ」
「このまま声の主が人間界にいついちゃって、天上界に戻らなかったら? 坊主、責任取れるの?」
「ミケは意外に心配性だな。んなの大丈夫だって! もし何かあっても、そん時はそん時だ! 何とかなるだろ。あっはっは」
高笑いする天人を、ミケが軽蔑の眼差しで見つめていた。天人の態度に落ち込む気持ちを隠せない私の事も、彼女にはしっかりと見られていた。
それにしても急ね。
明日、天人が天上界に還ってしまうなんて――
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる