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六章 / チャラ神様、金綺羅教祖様に捕らえられた神奈を助けます!

其の九

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 駒井さんが手配してくれたタクシーに乗り、私達四人は天海神社へ戻った。すっかり日は暮れ、もう夜に近づいている。駒井さんがお礼に、特上寿司を神社に人数分届けるから、と約束してくれたので、天人はほこほこ顔で喜んでいた。

 タクシーから降りる際、私は不可抗力ながら天人に背負われた。まだ立てないのだ。
 眠っていたじぞーちゃんやミケもようやく眠りから覚め、天海神社へ降り立った。

「神奈、ごめんなさい。アタクシとしたことが、知らない間に眠ってしまって、神奈に苦労をかけちゃったわね」

「ボクもごめんね。大丈夫やった?」

「ええ。私は大丈夫よ。天人が助けてくれたから」

 
「へえ、坊主の癖にやるわね」

「ケッ。眠り地蔵に眠り猫なんて、クソの役にも立たねーな」

「だからそれについては謝っているでしょ!」

「フン。もし俺がそんな失態犯してみろ? お前ら全員で総攻撃するだろ。何でお前らは役に立たなくても赦されて、俺はダメなんだよ!」

「アンタは神様なんでしょ! アタクシや地蔵より役に立って当然でしょう? 何をエラソーに言っているの」

「ケッ。このクソ猫が。やんのか、コラ――」


「喧嘩、まだするの?」


 何時もニコニコしているじぞーちゃんが、怖い顔でミケと天人を睨んでいる。「神奈を背負ってなかったら、ボク、間違いなく天人にのしかかったで。もう、その辺で喧嘩止めといてやー」

 普段笑顔のじぞーちゃんが怒った顔すると、超怖いわね・・・・!

「地蔵、ごめんなさい。アタクシなりの愛情表現だから、喧嘩している訳じゃないのよ?」

 苦しい言い訳だ。

「そーなの?」

 しかし、素直なじぞーちゃんは信じてしまう。ふふ。カワイイなぁ。

「モチロンよ。喧嘩をしている訳ではなくってよ」

「そっか。それなら良かった」
 じぞーちゃんは再びニコニコ笑顔。良かったわ!


――天人。天人!


 あれ。何か声が聞こえる・・・・!
 もしや謎の声? まだ消えていなかったの!?


――違う、違う! 儂だ。蒼玄(そうげん)だ。神奈や仲間も一緒だろう。彼らは構わないが、人払いしてくれないか。そうだ、宝物殿がいい。そこに入ってくれ。


「親父!?」


 謎の声では無かった。天人のお父様――天地創造の大地神(だいちしん)、蒼玄様だ。見ると、初めて彼の声を聞いた時と同じように、大地心の勾玉が翡翠色に光っていた。

「宝物殿の鍵は社務所よ。じぞーちゃん、ごめん。取って来てくれる? 場所は解るわよね?」

 私はまだ立てないので、じぞーちゃんにお使いを頼んだ。

「うん。待ってて!」

 たたたーっとじぞーちゃんは走って行って、社務所から鍵を取って来てくれた。以前は解放していたけれど、参拝客が増えてきた事と、前回のスネ太郎の件もあるから、鍵を掛けるようにしたのだ。
 鍵を開錠し、宝物殿に入った。もう秋だから日暮れから冷えるようになった。空調の無い夕刻の宝物殿は肌寒い。

「親父っ。何の用だよ! あと、やっかいな奴が人間界でのさばってるじゃねーか! アレ、何だ? 禁忌の呪詛使いって言うなら、天上界のモンだろ」

 
「当然だろ。何時までも人間界にいる訳にはいかねーし。さっさと還って、もう人間界なんか来なくていいように、平和にアッチで暮らすから」

「アンタ・・・・謎の声の事はどーすんのよ。無責任な男ね」

「俺が還ったら、謎の声のヤローはもう現れねーよ。勾玉狙いっぽかったし、俺が神器持って帰ったら、天上界に戻って来るさ。人間界に用はねーよ」

「このまま声の主が人間界にいついちゃって、天上界に戻らなかったら? 坊主、責任取れるの?」

「ミケは意外に心配性だな。んなの大丈夫だって! もし何かあっても、そん時はそん時だ! 何とかなるだろ。あっはっは」

 高笑いする天人を、ミケが軽蔑の眼差しで見つめていた。天人の態度に落ち込む気持ちを隠せない私の事も、彼女にはしっかりと見られていた。



 それにしても急ね。
 明日、天人が天上界に還ってしまうなんて――




 
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