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五章 / チャラ神様御一行を、無限ループ地獄がおもてなし!

其の十一

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「よっしゃ、ミケ、行くぞ!」

「ええ。死ぬ気で神奈を守りなさいよ? 神奈を怪我させたりしたら、アタクシが承知しないからね!」

「言われなくてもそうするっての!」

 天人が腰から下げていた剣を抜いた。ぶわっと炎が剣を包み、あっという間に炎の剣となる。
 真剣に敵を見据え、凛とした横顔・・・・真面目な顔をしているとすごくカッコイイ――って、戦闘中に天人に見惚れてどーすんの、私!

 ち、ちがうっ。そーいうんじゃないから、今のナシ。今のナシ!

「行くぜ!」

「挟み撃ちよ!」

 天人が狐A、ミケが狐Bの横に回り込んで、それぞれアタック――と思いきや!

『幻惑の術(マヌー〇)!』

 あっ。これ、知っているわ!
 幻影が沢山出てきて、敵の姿が複数に見えてしまう、恐ろしい術、マ〇―サね。

「うわっ、なんだこりゃ!」

「き、狐が四体に増えた!?」

――気を付けて! それは幻惑の術で、敵の姿が増えて見える術やねん。間違った敵に攻撃しても、ミスになっちゃうよ!

「あ”!? なんだそりゃ! とりあえず片っ端から斬るぞ!」

 天人が炎の剣を振り下ろし、敵を一刀両断――ミス! 斬ったのは幻だった!
 ミケの攻撃! ミス! 斬ったのは幻だった!
 しかもタチの悪い事に、その幻は復活してしまう。叩いても、斬っても、何体も現れる幻ばかりを切りつけてしまい、中々本体に当たらない。こちらの攻撃は全然当たらなくなってしまったのに、相手はそうじゃないから徐々に体力を奪われる。

――神奈っ。出番やで! 回復を!

「任せて!」

 もう二回目だからすっとできるようになった回復魔法(〇イミ)を掛けるべく、勾玉を掲げて祈った。彼らの傷は見る間に回復し、元気になってくれた。

「こんな面倒くさい戦闘、やってられっか! もう頭来た!!」

 天人が私の方にずかずかやって来て、ぐい、と抱き上げた。

「へっ。や、何!? こんな所で何すんのよ!」

「バカ、ちげーよ! 勘違いして暴れんなっ! 神奈ごと勾玉の力で俺の術の力を増幅させてやる。いくぞ、狐A・B!覚悟しやがれ!」

 天人は思いきり息を深く吸い込み、私を抱きしめる腕に力を入れた。


――超破壊炎(ベギラゴ〇)!


 口から炎を噴き出した。
 ごおおおーっ、と辺りの幻覚狐までもを飲み込み、炎の海が目の前に広がった。

 

『罰当たりめが――! 神の分際で、己を奉る社(神社)を燃やす気か――っ!』


 焦った狐の声が頭に響いた。
 スネ太郎の檻も燃えているらしく、焼け死ぬ―、と悲惨な泣き声が上がった。

「うっせーよ、俺がしるか」

 天人は無責任に言い放った。
 えー・・・・私の財力じゃ神社の弁償なんかできないし、そもそも田長さんに迷惑がかかるでしょーがああああ!!


『何という無茶苦茶な男! それでも神かぁっ!!』


 炎に包まれた狐たちが怒っている。そうだそうだ! もっと叱って下さい!

「早く消さなきゃ、お前らが困るんだろ。俺はしらねーぞ」

 天人の最悪の一言に、遂に私の怒りが爆発した。



「もうっ、天人、何をやっているのよ! この神社が燃えて無くなったりしたら、アンタの事一生赦さないからね――――っ!!」



 ドン、と私の中から大きな気が放出された。
 辺りをキラキラと金色の美しくまばゆい光が包み、燃え盛る炎を消化してくれた。歪んで恐ろしい形相になっていた狐AとBは元の綺麗なお稲荷様の姿に戻り、異次元空間の歪みを消し去った。
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