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三章 / 仲間が出来ましたが、どうにも人間じゃないようです?
其の七
しおりを挟む「神奈、ミケの声は聞こえるよね?」
「ええ。聞こえるわ。でも、姿は見えないの。じぞーちゃんには見えているの?」
「うん。見えるよ! あのね、ミケは記憶喪失の猫で、困ってるんだ。だからさ、助けて欲しい」
「でも、じぞーちゃん、さっきは成仏させて欲しいって言っていなかった?」
「うん。ボクの力で成仏させてあげたいねんけど、まだこの世に未練があるからって、極楽へ連れて行くのは無理やもん。神奈の力、貸してくれないかなぁ?」
極楽・・・・。じぞーちゃんはどんな力を持っているのだろう。
人間や動物を、成仏させる力があるのだろうか。
「未練ってどんな未練があるの?」
「ご主人様が無事かどうか、確かめたいんやって。ミケはね、すごくイケメンのご主人様にずっと可愛がられていて、幸せに暮らしてたんだって。でもそのご主人様が病気になっちゃって、助けを呼びにこの山に来たところで、がけ崩れに巻き込まれて死んじゃったんだ」
可哀想な話・・・・。しんみりする私の横で、天人は欠伸をかみ殺している。本当にフザけた男だ。
「ミケは、幽体なの?」
――ええ、そうよ。話が分かる人がいて助かるわ。そっちの男はクソの役にも立ちそうにないわね。
はい、その通りです。返す言葉もございません。
――アタクシ、がけ崩れで頭を打ってしまったから、家の場所が解らなくなってしまったの。成仏できないから、地蔵と一緒にいるのよ。
「ミケはね、ずっと淋しかったボクと遊んでくれて、友達になってくれたんだあー。だからミケのお願いを、僕が叶えてあげたいんや。なあ、神奈。お願い、力貸して欲しい!」
「えっと・・・・私はどうしたらいいの?」
「神奈の浄化の力を使ったら、ミケもきっと成仏できると思う。だから、もう一回あの力使って欲しいねん。お願い!」
「いいけど・・・・ミケが成仏するように、お祈りすればいいの?」
「うん。それでいいと思う!」
「解った、やってみるね」このやりとりを、状況の解っていない天人に説明してあげた。「――えー、という訳なの。勾玉貸してくれる?」
「ああ」
天人から勾玉を受け取り、ミケが居ると思しき場所にそれを掲げ、成仏できるように祈った。
昨日と同じ様に、私の体内からドン、と大きな気が放出され、辺り一面が優しい光で包まれた。そしてまた私は立てなくなった。力なく座り込んだ私の傍に、じぞーちゃんが付いてくれた。天人の何百倍も、じぞーちゃんの方が優しいと思う。
「えっ・・・・ウソ・・・・」
「マジかよっ!?」
私の目の前に現れたのは、何とも目つきは悪いが毛並みが恐ろしく綺麗なミケ猫。
今の力のせいで具現化したらしく、ちょこんと座っていた。
「あら? アタクシ、生き返ったのかしら」
猫が喋ったああああ――――!!
天人以外の神様――っ!
私の平穏無事な生活を、どうかお返し下さぁ――――いっっ!!
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