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二章 / 天上界に還る為、人間界でアルバイト(修業)始める事にしました!

其の九

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「あのぅー、神奈様。お困りごとはありませんか?」

 目の前にしゃがみこまれ、媚びへつらうように聞かれた。しかも真顔で。

「見てわかるでしょ。大丈夫じゃないから困っているの。それなのに置いて帰るって、どういう見解? 氷漬けにするわよ」

「すみません。二度としません。神に誓います」

「その神様はアンタなんでしょーが! ふざけないで。これから私を置いて帰ったりしたら、承知しないからね。こうなる事を覚えておきなさい」

「はい。はい。もうしませーん! 反省してまーすー」

 相変わらずチャラいなあ。調子もいいし。
 でも、この力(怒りのパワー)は便利ね。天人を大人しくさせて、使えるわ。勾玉の力を借りて、気をコントロールしなきゃ。

「それよりお前、何時まで待てば回復するんだよ?」

 反省したと言う割には、やたらと偉そうだ。

「知らないわよ、そんなの。力が入らないんだから仕方ないでしょ」

「しゃーねーなぁ」

 天人が私の上体を起こし、何と背中におぶってくれたのだ!
 何時もはパチっと電撃が走るのに、何故か今はそれが無かった。あの電撃は一体何なのだろうか。危険人物だと認識しているから、近寄らないようにって事なのかしら?

 
「貸しだかんなー」

「貸しがひとつ減った所で、昨日からいっぱい私に借りを作りまくってるでしょ。全然足りないから、せいぜい働いて返しなさい」

「へーい」

 文句を言うと氷漬けにされると思っているのか、意外に素直に私を背負って歩き出す天人。
 イイヤツ・・・・なのよ、ね?
 大きく逞しい背中は、何でも守ってくれそうな気がする――そう思うと、ほんの少しだけ胸がとくりと動いた。

 ん? 何かしら。今の感情は。



――ありがとう。



「あれ。何か言った?」

「んにゃ、何も言ってねーけど」

「・・・・そう」

 確かに聞こえたんだけどな。ありがとう、って。天人のお父さんの声じゃなくて、お地蔵様に到着する前から聞こえていた、もっと可愛らしい声。
 もしかしたらお地蔵様がお礼を言ってくれたのかもしれない、と思って直した祠の方を天人の背におぶわれたまま振り返ったら、優しいお顔をされたお地蔵様が、にこやかに笑っているように見えた。
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