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一章 / チャラ神様、人間界にやって来て早速職質受けました!

其の五

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「あれ」剣を覗き込んだ天人が、端正な顔の眉間にしわを寄せ、ううん、と唸った。「これ、俺の剣だ」

「は? 俺の? なんでっ。貴方の剣は、こっちでしょ? 全然違うじゃない。間違えないで」

 鞘に納めている、天人から預かった方の剣を彼に見せた。

「だってさ、ホラ」持ち手の部分の一番底の両方を見せながら、驚く事を平気で言ってのけた。「天上界に穴開けた時、親父が雷ぶっ放しまくって、柄の部分に当たってさぁ、大変だったんだよなぁー。そん時の焦げ跡が、全く一緒」

 天上界に穴?
 親父が雷ぶっ放しまくり?
 焦げ・・・・?

 雷が当たって、柄が焦げたりするものなの?
 それって、普通死なない?


 それとも、よほどの火事ってコト?


 天人の言葉の意味が解らず、理解に苦しんだ。

「両方、焦げた所の位置も形も一緒だな」

「えーっ、じゃ、じゃあ・・・・この剣・・・・もとは貴方のものって事!?」

「ま、そーなるんじゃねーの? わかんねー」

「解らない・・・・って・・・・無責任ね」

 
「同じ剣が二本あって、もう一本が超オンボロってコトは、俺は相当先の未来の国へ来たってワケだな。言葉が通じるから、俺が元々いた場所は同じだけれど、時代を飛び越えたって思えばいいのか」

「未来? アンタ、過去から来たの?」

「よく解んないけど、多分。これは、勘だ。俺の天才頭脳の閃きから導き出した答えだから、間違いねえよ」

 勘による閃きほど、当てにならないものはない。
 従って真顔でカッコつけて言われても、信用する事はできなかった。

「俺さ、実は天上界追い出されちゃったんだよねー。人間界で修業して来いってさ。気が付いたら見知らぬ場所だし、何処へ行っていいのかさっぱり解んなくて困っていたら、変なオッサンに言いがかりつけられて捕まるし、女が来たと思ったら、俺に冷気喰らわすジャジャ馬だし、踏んだり蹴ったりだ。それより、この世界って美女はいねーの? できれば美女とイチャイチャしたいんだけど」

「・・・・アンタ、ここへ一体何しに来たの?」

 彼と喋っていると、頭痛がするのはどうしてだろう。

 
「だーかーらぁー。修業だって。しゅ・ぎょ・う! 人間に感謝されたら天上界に帰れるらしいから、早く俺に感謝してくれよ」

「アンタの何処に感謝する要素があるワケ?」

「神様なんだから、人間から感謝されまくりだろーよ。早く感謝しろよな」

 エラソーにドヤ顔で言うが、さっきその人間を斬ろうとしていたのは誰?
 そんな事すれば、恨みしか買わないと思う。
 けれども、この男にツッコむのが面倒なので、全部聞き流した。

「じゃあ、今、この世に巣くう恐ろしいウィルスをやっつけてよ。そうしたらみんなから感謝されて、さっさと天上界へ帰れると思うわ」

 こんな意味不明な男に関わっていると、ロクな事にならない。
 早く天上界とやらに追い返そう。解決策を提案した。

「神奈の言う通りだな。いいぜ。なら、そのウィルスってヤツを俺の前に連れてこいよ。たたっ斬ってやるから」

「ウィルスって目には見えないの。細菌だから。幾ら天人でも斬れないよ」

「ふーん。じゃ、悪い奴をジャンジャン連れてこいよ。俺が片っ端から斬ってやるから」

「斬る以外の発想は無いの? 神様だったら、悪い病気をぱぱーっと蹴散らして、平和な世の中にしてよ」

「俺、斬る専門」

「は? 他に無いの? 神様なんだから、何でもできるんでしょ!」

「んにゃ、できねー」

「・・・・」

「神と言っても、色々種類があるからな。俺は闘いの神だ。悪い奴を斬る専門だから」

 目の前のアンタが一番の悪だと思うのは、私だけ?
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