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プロローグ / 天上界
プロローグ
しおりを挟む「天人――っ!! 今日という今日は絶対に赦さんぞ――っ!!」
「ヤベ。親父に見つかったら殺されるっ。逃げろっ」
神々の暮らす――平和な筈の天上界。ここに、とんでもなく暴君神様――天人(あまと)なる神がおったそうな。
天地創造の大地神・蒼玄(だいちしん・そうげん)を父に、水を司る水神・空羅(すいじん・くうら)を母に、美と豊を司る美神・華女(びしん・はなめ)を姉に持つ。
天人は、力・武・炎を司る炎神(えんじん)。しかし彼は――
「天人!! 天界に穴を開けるとは何事だ――っ!!」
幼い頃から悪戯好き。怪力自慢で酒好き、女好き。遊び歩いて早数百年。華女の美の祝福を受けた女神を次々にたぶらかす日々を送っていたそうな。
時々悪さをする悪霊の退治をする際、神器のひとつ、天人が持つ炎心(えんしん)の剣を調子に乗って振り回ししたものだから、天界の山のひとつが消し飛び、波動で天空の床に穴が開いてしまったのだ!
お陰で完全ガードされていた雲の隙間から、下界が見える。あちらが見えるということは、下界から天上界のほんの一部が丸見えに。
折角下界から見えないよう隠れていたというのに。こりゃ、まずいですねー。
「ばっかもーん!!」
父、蒼玄の雷が轟いた。怒りで天界の大地は大荒れに荒れ、大地震が発生する始末。天上に穴が開いたものだから、人間界にも雷が漏れてしまうハメに。とんだとばっちりだ。止めて頂きたい。
父の怒りはそれでも収まらず。今日という今日は赦さんぞ、という形で追いかけられていたそうな。
「ねーちゃん、匿(かくま)ってっ。親父に殺されるー」
蒼玄より命からがら逃げてきた天人は、姉・華女の住む水都へ逃げ延びる。迷惑そうにされるが、自慢の怪力で姉のお付きを捕らえて脅し、姉は仕方なく天人を匿う事に。
「あぁ・・・・天人様・・・・っ」
しかし夜な夜な姉の付き人に片っ端から手を付けてしまう、暴れん坊君の天人。美人揃いの手下たちは、みーんな天人に夢中。そらやれ、あれやれ、宴会漬けの日々。こうなれば、実り豊かな秋の祈りは酒の雨に溺れ、作物は何も育たず桃源郷は荒れ果て、冬は寒さばかりで春は来ないと悪循環。平和な筈の天上界が、天人のせいでいよいよ滅びの一途を辿りそう。
「天人!! もう本気で赦さん! たとえ我が子といえども、数々の悪行を働くお前を成敗してくれようぞ!!」
遂に居場所を突き止められ、蒼玄に首根っこを掴まれた天人。
怒りの雷が、目の前に迫って来る!
絶体絶命の大ピンチ!
でも、痛いのは嫌だ!!
親父の雷は、まともに受けたら死ぬほど痛いんだ!
てなワケで、天人は何と実の父に向って炎を吹いた・・・・!
イッツ・ファイヤー・ショウターイム!!!!
ごおおおお――っ、と辺り一面真っ赤な炎に包まれ、何と天上界の一部が丸焦げに!
もうムチャクチャだ!
「俺を捕まえようなんざ、一億万年早いんだよ!」
逃げ足は何時も早い、別名・韋駄天(いだてん)。この暴君天人のやりたい放題ぶりに、蒼玄・空羅・華女の堪忍袋の緒が遂にキレた!
ていうか、もうとっくの昔からキレている!?
「お前は天上界を追放だ!!」
姉の華女が作った雪山に天人を閉じ込めて炎の力を抑え込み、遂に天人の天上界追放を言い渡した蒼玄。
「仮にも神なら、一度くらい誰かの役に立て! 転生して人間界で修業してこーいっっ! 戻って来る条件は、神様らしく人々に心から感謝される事だ! それができるまでは天上界に戻ってくるな――――っ!!」
何となく手に追えない暴君の厄介払いという気もするが、天人が以前開けた天界の大穴から、彼を追放してしまった。
しかし天人も負けてはいない。天界を追放される間際、何とそれぞれの神(天人の両親)が大切に持っている神器を、盗んで持ち去ってしまったのだ!
天人が使いこなす炎心の剣は本人のものだからいいとして、母・空羅が持ち、姉・華女の美しい願いが込められた水心(すいしん)の鏡、父・蒼玄が持つ万物創生を司る、大地心(だいちしん)の勾玉。それらをあっという間の早業で、盗み出してしまった天人。
さてはて、とんだチャラ神様・・・・天上界の宝でもある最高神器を持ち出したまま人間界へ転生・降り立つが、この先、大丈夫なのでしょうか――?
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