【R18】リバース!? ～美少女ヒーローに迫るのは、実はイケメンヒロインです～

プロローグ ～海里ちゃんと政海くん～

Side・新庄海里/その１

　

「あぁーん。海里（かいり）ちゃーん。KM（キモ）いって言われたぁー」

「海里ちゃん言うな!!」


　高校の卒業式を終え、誰も居なくなってがらんとした教室で私はヤツの泣き言を聞いた。
　腐れ縁で仲良くしている斎賀政海（さいがまさみ）が意中の彼、陽水に告白して見事にフラれた。井ノ端陽水（いのはしようすい）は、学校一の秀才モテ男クンで、絵にかいた漫画の男みたいなヤツだ。因みに私のタイプでは無い。女は放っておいても陽水に寄ってくる。そんな男が、政海なんかを相手にするワケが無い。

　見た目もブス、根暗そうな【男】に告白されて、何が悲しゅうて学校一のモテ男が政海を選ぶかね。考えただけで解るだろうに。

「KM（キモ）いって酷いよねぇー」

　声変わりもしていない、線の細い女性声で政海が悔しそうに喚いた。【彼】と同級生の私は、よしよし、と頭を撫でてあげる。はー。私ってやさしーい。
　私より背も小さいし、チビでオタクっぽい容姿の政海。これがもっと可愛い女の子だったら、あの手この手で慰めてあげるんだけどなぁーって思う。


「君のお友達の海里ちゃんだったらお付き合いを考えたいって、陽水君が海里ちゃんに伝えておいてくれだってえええー」


　政海がうわーん、と声を上げて泣き出した。「海里ちゃんは美人だし、いいよねーっ!!」

　短髪で前髪ぼっさーの根暗男が、何やら喚きながら泣いている。やれやれ、とため息を吐いて政海を慰めた。
　コイツは男の癖に昔からみみっちい性格だし、よく虐められて泣いているから私が助けてやっている。
　彼曰く、私は唯一の友達というか、親友らしい。

　やや恨みの籠った目で見つめ、私のダークブラウンの長いストレートの髪を触った。「僕も海里ちゃんみたいに、陽水君が素敵だって思うような女の子になりたいよぉー」

　一応お嬢様で通している私は、この容姿に釣られて男がうじゃうじゃ寄って来ては告白してくる。
　そんな私の身長は百七十六センチもあり、大抵の男は私より目線が低い。だから私より背が低い男とは付き合えない、が断り文句となっているので、最近は誰も告って来なくなった。
　お転婆が服を着て歩くような女だったから、所属していたバレー部では大活躍できた。去年のインターハイでは優勝し、とにかく女子にモテるようになった。嬉しい限りだ。

　しかし、どうも男は好きになれない。女性が私に憧れて『海里様、素敵です』と言われる方にキュンとくるから、どちらかと言えば男よりも可愛い女の子の方が好きだ。
　勿論そんな事は誰にも言っていないが、目の前の政海の事はとやかく言えるような性癖ではなさそうだと、それだけは自覚している。だから政海とも深く付き合えるのだろう。