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ラストスマイル・王様は世界一

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「あいー(アイリ)、さくおーっ(櫻井王雅っ)!」

「あ、そっか! 櫻井王雅だぁ。キューちゃん、ありがと」


 アイリちゃんが笑った。キューマ君が一番信頼している、アイリちゃんとのコンビは、本当に可愛い。
 最近キューマ君は、本当にお喋りが上手くなった。前だったら、あー(アイリ)、おー(王雅)しか無理だったと思うの。


 そんな子供たちの成長を、まだまだ見ていたい。もっと、ずっと、傍で。


「王雅にぃ、じゃなくて、櫻井王雅を夫とし、病める時も、健やかなる時も、愛する事を誓いますか?」

 ライタ君が、何とか頑張って最後を締めくくってくれた。


 でも、まだよ。

 

「いいえ」

「いっ・・・・いいえ!?」


 王雅が浮かべていた不敵な王様スマイルが、完全に凍り付いた。

 ふふっ、焦ってる焦ってる。
 ちょっと愉快な気分になった。


「どーいうつもりだ、美羽っ!!」王様が憤慨して、私に詰め寄って来た。「結婚してたった三カ月足らずで、もう離婚かっ!? なんでっ。俺の何が悪かったんだ!? 超モテるけど浮気なんか一切してねーし、暴力も振るってねーし、束縛なんかもしてねーし、仕事も頑張って、毎日ちゃんとお前の元に帰ってる! なんっっっにも悪い事してねーぞっ!! お前の事、一生愛して大事にするからっ!! 俺、美羽がいないと生きてけねーんだ! 頼むっ、捨てないで!!」


 私の冗談を真に受けて、王雅に情けなく縋りつかれた。

「何言ってんのよ! 違うわよっ。勘違いしないでよね! もう、縋りつくの止めてよ。恥ずかしいじゃないっ!」

「違うんだったら、どーして誤解するようなコト言うんだよっ! 何だよ、『いいえ』っつーのは!! もう俺様のコト愛してねーのかよっ!?」

 私たちのやりとりが夫婦漫才みたいになってしまったから、会場がこれ以上ない位の爆笑に包まれた。
 爆笑の海に包まれて、結婚式ができるなんて最高ね。絶対、どこの結婚式を探しても、こんな笑いに包まれた式なんて無いわ!


 マサキ施設だから、できるのね。


「最後まで聞きなさいよ。もう、王雅はすぐ早とちりするんだから。・・・・私、真崎美羽は、櫻井王雅を夫とし、マサキ施設にいるみんなと、授かった新しい命を、病める時も、健やかなる時も、生涯かけて愛する事を誓います!」

「えっ・・・・今、何て・・・・?」

 王雅の端正な切れ長の瞳が、大きく開かれた。

 

「さっきね、つわりがあったのよ。最近体の調子が何時もと違うから、変だなって思っていたんだけど・・・・赤ちゃん、授かったみたいなの。私達に、新しい家族が増えるのよ!」

 王雅、貴方も嬉しいでしょう。家族の愛情に飢えていた貴方なら、どんなに困難があったとしても、きっと私と子供を一番に考え、大切に守ってくれるって信じているから。



「マジかよっ! スゲーっ!! やったぜ――――っ!!」



 大声で王様が吠えたと思ったら、がばっと急に抱き上げられた。

「きゃあっ」

「しっかり俺に掴まってろ」

 力強い、王様スマイル。
 貴方の腕に抱かれて、私は世界一幸せよ。


「俺、櫻井王雅は、真崎美羽を妻とし、マサキ施設の全員と、新しい命を、病める時も、健やかなる時も、どんな時でも生涯愛し、命を懸けて守り抜くことを、誓います!!」


 わあああ、と歓声に包まれた。
 みんなから沢山お祝いの言葉が贈られ、幸せがマサキ施設に溢れていく。


 今日も、明日も、明後日も。

 幸せな明日が、未来が、続いて行く。


 色あせない確かな想いが形となるの。


 これも全部、隣で歩んでくれている、私の旦那様のお陰。


 大好きよ。



 だから私、櫻井美羽は




 世界一素敵な王様スマイルを




 一生懸けて大切にすると、ここに誓います――





 -完-

 ※挿絵 紗蔵蒼様※

 素敵な挿絵をありがとうございました。
 その後の二人のイラストを描いて下さいました!

 この物語を『コロッケスマイル』から永らく愛して下さった読者の皆様、
 『王様スマイル』だけでも愛してここまで読破頂いた皆様、
 今まで数多くのご支援をお寄せいただき、本当にありがとうございました!!

 また、次回作でお会いしましょう!



 さぶれ
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みんなの感想(1件)

豊水すすきの
ネタバレ含む
さぶれ@5作コミカライズ配信・原作家
2020.11.29 さぶれ@5作コミカライズ配信・原作家

豊水すすきの様
ご感想ありがとうございます。何せ昭和な人間が作っておりますのでm(__)m
この作品は結構古い作品なので、新しいものはもっと気を付けて作っております。
ご意見ありがとうございます。参考にさせていただきます(⌒∇⌒)

解除

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