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ラストスマイル・王様は世界一

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「皆様、お待たせしました! 今から、ミュー先生、あ、違った。新婦の登場です!」


 どっ、と遊戯室の中から笑いが起きた。ガックンが司会を進めてくれているのね。普通にミュー先生とか言ってしまって、可愛いわね、もう。
 遊戯室前で待機していたけど、姿を見せてもいいかしら。


 ガックンの合図を頼りに、入り口に立った。みんなが一斉に私と恭ちゃんに注目した。


『生きる意味 探してた あなたに逢うまでは

 鮮やかな夢 心繋ぐ 深い絆...』


 美しいピアノの調べに、まりなちゃんの透き通る声が遊戯室に響いた。
 今日は、オレンジキッチンのチラシ撒きを手伝ってくれた、まりなちゃんとバンドメンバーのひとり、キーボード担当のジョージさんという方が、一緒に来てくれた。
 ご祝儀代わりに、オリジナルの歌を歌ってお祝いして貰う事になったの。

 素敵な美しいピアノの調べに、美しい声が流れている。


 私は今、幸せの中を歩いている。


『傷つくことで 初めて知った』


 美羽ちゃん綺麗だなぁー、と横山さんと平岡さんが揃って泣き出した。
 二人とも、私のお父さんみたいなものだし、娘を嫁にやる気持ちになってくれているのかしら。
 幼い頃、横山さんに助けられ、平岡さんは何時もピンチのマサキ施設を助けてくれた。

 商店街のみんなも。
 私のピンチには、本当に大勢の人が助けてくれる。
 

『あなたの深い 愛で包まれてた事を』


 幼い頃、絶望しか無かった私が今、こんなにも大きく成長できたのは、みんなのおかげ。


 沢山の愛情に恵まれ、包まれ、育ててもらったから。


『あの天(そら)がくれた 奇跡の贈り物は』


 沢山の出会い、沢山の別れ。

 共に歩んできた、子供たち。


 そして、今。


 私を待ってくれている、世界一の王様の元へ。


『一途な想いと あなたとの深い絆――』


 歌と伴奏が止まった。
 恭ちゃんから王雅に引き渡され、王雅の左横に並んだ。

「えーっと、な、なんじ・・・・さ、さく、櫻井王雅は、ミュー先生を妻として・・・・あ、間違えた」

 牧師の恰好をした、サトル君が早速間違えちゃったの。
 みんな私の為に、牧師の恰好をしてくれている。王雅との愛を誓うのに、証人はみんながいてくれたら、それが一番だから。
 本当に、最高の結婚式ね。
 
「ちがうよ、サトル君。今はミュー先生じゃないよ。先生はお兄さんと結婚したから、櫻井美羽だよ」

 そういうリョウ君も間違えてる。この場合は、旧姓を言わなきゃいけないから。

「もう、二人共、ちゃんとやらないと! 真崎美羽を妻とし、病める時も、健やかなる時も、愛する事を誓いますか? でしょ!」

 リカちゃんがまとめてくれた。もうすぐ小学一年生になるもの。しっかりしているわ。
 いつも、リカちゃんには助けられる。施設で一番のお姉さんですものね。
 誓いの言葉は短いけれど、何でも構わない。
 子供たちがいて、王雅がいて、それだけでいいの。私はもう、十分幸せだから。

「当たり前だ! 命懸けて誓うぜ!!」

 王雅が張り切って言うと、会場が笑いに包まれた。
「汝、みーちゃ・・・・真崎美羽は、おーちゃん・・・・じゃなかった、えーっと・・・・おーちゃんの名前、何だっけ・・・・」

 アイリちゃんが王雅の名前をド忘れした上、おーちゃんとか言っちゃったものだから、会場が更に爆笑に包まれた。
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