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ラストスマイル・王様は世界一
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私の準備が整ったので、早速真凛ちゃんが広場に声を掛けに行ってくれた。
参列者がゾロゾロと遊戯室に向かって行った。
呼ばれるまでの間、食堂で待機していると、入るよ、という声と共に、ガラガラと食堂の横開きの扉が開けられて、礼装姿の恭ちゃんが入ってきた。横には、菫ちゃんが立っている。
「美羽ちゃん! 今日はおめでとうございます!!」
「恭ちゃん、菫ちゃん、忙しいのに来てくれてありがとう」
「美羽ちゃんの結婚式だったら、どんな用事でもお断りして参りますわ!」
菫ちゃんは相変わらず、私に対してあまり敬語が直っていない。もともとがお嬢様だから、仕方ないのかな。
でも、心はとても通じ合っている。時々仲良く一緒にお料理をしたり、お菓子を作ったりしている。恭ちゃんの好物のレシピも教えた。張り切って覚えていたわ。
そしてオレンジキッチンの時は、本当にお世話になったの。恭ちゃんと一緒に子供たちの面倒を見てくれて、ずっと菫ちゃんに来て欲しいって、もうすっかり施設の先生みたいになっちゃったのよ。
だから菫ちゃんに時間がある時は、施設に遊びに来てもらっているの。
恭ちゃんの仕事が忙しい時なんか、特にね。
「美羽。高田の菓子を引き出物に用意したから、みんなに持って帰って貰いなさい」
「ええっ、引き出物はナシって言っていたのに・・・・」
「僕と菫からの祝儀だ。お前を祝いに来て下さった皆様を、しかもお祝い品を持ってきていただいておきながら、手ぶらで返す訳にはいかないだろう」
「・・・・そうね。ありがとう」
確かにそうね。恭ちゃんの言う通りだわ。
「その中に、高田のバイキング利用券と櫻井グループホテルのペア宿泊利用券も入れてくれって、王雅に頼まれたよ。全部経費でツケるからって。王雅もお前に似て、ちゃっかりしてきたな」
恭ちゃんは、菫ちゃんを『菫』と、櫻井君から『王雅』と呼ぶようになった。
親しい人に名前で呼ばれると、やっぱり違うものね。
「沢山のご馳走が届いておりました。凄いわよ、美羽ちゃん」
今日の菫ちゃんは、淡いラベンダー色・・・・ううん、菫色の美しい膝丈のスリムで上品なワンピースに、同じ色で作ったチュールのボレロ。所々にラインストーンが散りばめてあって、色白で美しい菫ちゃんにピッタリの礼装だった。
「あのね、美羽ちゃん。実は・・・・」
「あー、ゴホン。えー・・・・その話はまた後にしないか、菫」
「どうして? おめでたい事よ」
最近菫ちゃんは、恭ちゃんに強く出るようになった。私が指導したせいもある。
そんな恭ちゃんは、菫ちゃんにめっぽう頭が上がらない。
「何? 何の話なの? 菫ちゃん。教えてよ」
私と菫ちゃんで、じっと恭ちゃんを見つめた。まいったな、と恭ちゃんは焦っている。「・・・・菫が・・・・その・・・・なんだ・・・・・・・・」
うだつの上がらない様子だ。
「恭さん、もういいわ。私が言います」
ピシャっと菫ちゃんに強く言われて、恭ちゃんが肩をすくめた。
菫ちゃんは、本当に強くなった。これで安心ね。
「あのね、美羽ちゃん・・・・実は私、赤ちゃんができたの!」
「えっ・・・・」
「昨日、つわりがあったの。遅い時間だったから、検査薬で調べてわかったのよ。数週はまだ解らないけど、でも・・・・美羽ちゃんに早く伝えたくて。色々心配かけましたから、美羽ちゃんには早く言っておきたくて。あの・・・・美羽ちゃん・・・・?」
何て奇跡なのかしら。
私は菫ちゃんをぎゅっと抱きしめて、耳元で囁いた。「私もなの。赤ちゃんが、お腹にいるの」
「ええ――――っ!?」
菫ちゃんが、聞いた事もないような大声を上げた。
参列者がゾロゾロと遊戯室に向かって行った。
呼ばれるまでの間、食堂で待機していると、入るよ、という声と共に、ガラガラと食堂の横開きの扉が開けられて、礼装姿の恭ちゃんが入ってきた。横には、菫ちゃんが立っている。
「美羽ちゃん! 今日はおめでとうございます!!」
「恭ちゃん、菫ちゃん、忙しいのに来てくれてありがとう」
「美羽ちゃんの結婚式だったら、どんな用事でもお断りして参りますわ!」
菫ちゃんは相変わらず、私に対してあまり敬語が直っていない。もともとがお嬢様だから、仕方ないのかな。
でも、心はとても通じ合っている。時々仲良く一緒にお料理をしたり、お菓子を作ったりしている。恭ちゃんの好物のレシピも教えた。張り切って覚えていたわ。
そしてオレンジキッチンの時は、本当にお世話になったの。恭ちゃんと一緒に子供たちの面倒を見てくれて、ずっと菫ちゃんに来て欲しいって、もうすっかり施設の先生みたいになっちゃったのよ。
だから菫ちゃんに時間がある時は、施設に遊びに来てもらっているの。
恭ちゃんの仕事が忙しい時なんか、特にね。
「美羽。高田の菓子を引き出物に用意したから、みんなに持って帰って貰いなさい」
「ええっ、引き出物はナシって言っていたのに・・・・」
「僕と菫からの祝儀だ。お前を祝いに来て下さった皆様を、しかもお祝い品を持ってきていただいておきながら、手ぶらで返す訳にはいかないだろう」
「・・・・そうね。ありがとう」
確かにそうね。恭ちゃんの言う通りだわ。
「その中に、高田のバイキング利用券と櫻井グループホテルのペア宿泊利用券も入れてくれって、王雅に頼まれたよ。全部経費でツケるからって。王雅もお前に似て、ちゃっかりしてきたな」
恭ちゃんは、菫ちゃんを『菫』と、櫻井君から『王雅』と呼ぶようになった。
親しい人に名前で呼ばれると、やっぱり違うものね。
「沢山のご馳走が届いておりました。凄いわよ、美羽ちゃん」
今日の菫ちゃんは、淡いラベンダー色・・・・ううん、菫色の美しい膝丈のスリムで上品なワンピースに、同じ色で作ったチュールのボレロ。所々にラインストーンが散りばめてあって、色白で美しい菫ちゃんにピッタリの礼装だった。
「あのね、美羽ちゃん。実は・・・・」
「あー、ゴホン。えー・・・・その話はまた後にしないか、菫」
「どうして? おめでたい事よ」
最近菫ちゃんは、恭ちゃんに強く出るようになった。私が指導したせいもある。
そんな恭ちゃんは、菫ちゃんにめっぽう頭が上がらない。
「何? 何の話なの? 菫ちゃん。教えてよ」
私と菫ちゃんで、じっと恭ちゃんを見つめた。まいったな、と恭ちゃんは焦っている。「・・・・菫が・・・・その・・・・なんだ・・・・・・・・」
うだつの上がらない様子だ。
「恭さん、もういいわ。私が言います」
ピシャっと菫ちゃんに強く言われて、恭ちゃんが肩をすくめた。
菫ちゃんは、本当に強くなった。これで安心ね。
「あのね、美羽ちゃん・・・・実は私、赤ちゃんができたの!」
「えっ・・・・」
「昨日、つわりがあったの。遅い時間だったから、検査薬で調べてわかったのよ。数週はまだ解らないけど、でも・・・・美羽ちゃんに早く伝えたくて。色々心配かけましたから、美羽ちゃんには早く言っておきたくて。あの・・・・美羽ちゃん・・・・?」
何て奇跡なのかしら。
私は菫ちゃんをぎゅっと抱きしめて、耳元で囁いた。「私もなの。赤ちゃんが、お腹にいるの」
「ええ――――っ!?」
菫ちゃんが、聞いた事もないような大声を上げた。
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