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ラストスマイル・王様は世界一

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 大赤字のオレンジキッチンを立て直してから、あれから月日は随分経った。
 季節はもう、春へと移り変わっていた。

 今日は、王雅との結婚式の日。
 いよいよ、この日を迎える事が出来た。
 王雅のご両親も来ていただける事になって、本当に安心したのを思い出した。


 お父様との約束――今思い出しても、我ながら無謀なお願いだったと思う。


 一週間という短い期間でオレンジキッチンを立て直し、一輝君と一緒に黒字に変わった帳簿を持って行き、売り上げの数字を見せた時のお父様の顔――今でもはっきりと覚えているわ。

「驚いた・・・・。大赤字だった店舗をたった一週間で黒字に変えただけでなく、ここまで素晴らしい収益を上げるとは。コストカットも申し分無い。いやあ、有言実行とは素晴らしいね。君は、無能な一般市民とは違うようだ。私は優秀な人間は好きだよ」

 お父様は嬉しそうにしておられた。
 ビジネスチャンスを掴んだ、ワクワクしている時の王雅の顔にそっくりの顔で。
 やっぱり親子ね。血は争えない。

「ここまでの数字を叩き出すとは思わなかったよ。それで、一体どんな魔法を使ったのだね?」

「企業秘密です」含みを持たせて言ってやった。

 だって、とても一言では言い切れないもの。
 この数字・結果は、私を支えてくれたみんなのお陰。私一人の力じゃないから。読者のあなたたちのお陰でもあるのよ。ずっと応援してくれていたものね。
 それを説明すると長くなるし、言う必要は無いと思う。

 王雅もそうだけれど、この親子にとって数字は絶対。過程じゃない。
 どんな手を使ってもきちんと数字として結果を残せば、文句無いのだから。

 
「言うじゃないか。君を是非、我社に迎え入れたい所だ」

 拍手された。

「お言葉は大変ありがたいのですが、私には施設経営の仕事もありますので、そちらのお話はお断り致します。それより、我が社に迎え入れるのではなく、義理娘として認めて頂けないでしょうか。王雅さんと正式に籍を入れさせていただいたとはいえ、お二人にまだ祝福を頂いておりません。勿論、若輩者故、まだまだ至らない点はございます。元が庶民ですから。それでも、私はやります。王雅さんをもっともっと、世界で素晴らしい活躍をする男になれるよう、私が努力し、私の全力で守って、一生王雅さんを支え続ける事を誓います」

 お父様は、満足そうにうなずいた。「私にここまで啖呵を切った女性は、小夜以外、君が初めてだ」

「・・・・偉そうに申し訳ありません」

「申し訳ないと思ってもいないのに、謝らなくていい。別にそれを咎めている訳では無いのだ。君は私との約束を見事果たした。今度はこちらの番だ。それで・・・・結婚式は何時だね?」

「えっ、あの、じゃあ――」

「男に二言は無いと言っただろう。それで、結婚式は何時だね?」

「すみません。まだ場所も日取りも決まっていません。お二人にお許しを頂いてからと思っておりましたから」

「ふむ。ではスケジュールの調整があるから、決まったら早めに言ってくれないか。これでも多忙な身なのでね」



 お父様は笑った。王雅によく似た、不敵な王様スマイルで――



 
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