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スマイル40・王様の王様VS女王とお供

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「あ、いえ。材料費が高いのです。こだわりの食材に、こだわりの野菜をふんだんに使っています。仕入れが高くて」

「・・・・そう。じゃあ、帳簿見せて」

 奥から出してきた、手書きの雑な帳簿を見た。
 帳簿もまともにつけられていない。赤字だということは解っている、この程度ね。

「平均来客数は?」

「あー・・・・えーっと・・・・大体十人位です」

「・・・・十人」

 二千円のメニュー×十人前=二万円。一日の売り上げは、大体こんなところかしら。

「一日の売り上げ目標は?」

「・・・・あの・・・・えーっと・・・・・・・・月の目標が百五十万円です。だから、えーっと・・・・・・・・ろ、六万円くらいですかね」

「百五十万円!?」

 一日六万円売って、やっと定休日以外を除いた稼働日二十六日で、ようやく百五十万円を超えるのよ。
 売り上げ二万円じゃ、毎日四万円も目標に足りないじゃ無いの!

 雑な帳簿を隅から隅まで見つめた。
 仕入れ代金、先月合計で七十万円ほど使っているわ。百五十万の売り上げがあっても、原価率四十六パーセントは高すぎる。これじゃ目標額に到達しても、トントン(赤字にならない利幅)程度じゃない?
 それに、先月は八十万円程しか売り上げが無い。それなのに仕入れ七十万円って、原価率八十七パーセントじゃないの!

 そんな飲食店、絶対に潰れちゃうわよ!
 光熱費とか人件費とか、どっから捻出するのよっ!!


 これは・・・・私の想像を遥かに超越した、とんでもない赤字物件だわ。


「どうしてこんな超大赤字になっているのよっ!!」思わず怒鳴った。「誰が管理してるのっ!?」

「・・・・は、はい・・・・・・・・僕、です」

 ため息が出た。

「全部ダメ。目標に届かないどころか、立地に対しての値段設定が高すぎるわ。こだわりの食材は結構だけど、こんなやり方じゃ、値段が高すぎて気軽にお客が食べに来れないわ。せめて千円以下の値段のものも作らないと」

「は・・・・はい・・・・」

「でもどうしてこんな事になっているの? あの社長が、こんなずさんな管理をする貴方に、お店を任せたりするものなの?」

「・・・・実はこのお店、責任者がちゃんといました。でも、売り上げ持って逃げてしまって・・・・他のスタッフも引き抜きがあったり、店が無茶苦茶になってしまって・・・・だからメニューも一新して、僕が。今は僕が一人で切り盛りしています」

 成程。味は良いし食材にも拘るあまり、値段設定を間違って付けた所から、色々問題が発生してしまったのね。
 さっき計算も微妙なカンジだったし、数字にはめっぽう弱いのね。

「僕、これでもリーズナブルにしたつもりなんです。美味しいものを食べて貰えれば、先ずは顧客を付けてから、と思いまして。何時も来て下さっているお客様、本当に美味しいって食べて下さるから・・・・だから、頑張りたいんです!」

「社長じゃないけど、頑張りたいってだけじゃ、店はやっていけないわ。情熱は素晴らしいけれど、もう少し帳簿をきちんとつけれるようにならなきゃ。赤字を膨らませ過ぎよ」

 さて。現状の今月を把握しなきゃ。
 帳簿を見ると、今月の売り上げは、五十万円を少し超えた位だった。
 目標の百五十万円まで、あと百万円も足りないし、仕入れも四十万円も利用しているから、赤字どころの騒ぎじゃない。
 これを黒字に持って行こうとするなら、後一週間でどのくらいの数字を叩き出せばいいのか、正直・・・・絶望に近いレベルだ。


 ううん。でも、諦めちゃダメ!
 王雅との結婚を、認めて貰うんだもの!

 この位の苦労は当然よ。貧乏人の底力、見せてやるだから!!

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