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スマイル40・王様の王様VS女王とお供

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「美羽さんっ。美羽さんって、何処かで見た事あると思ったら、櫻井グループの一人息子にシンデレラプロポーズされてた人だったんですねぇっ!!」

 ホテルを出た途端、一輝君が目をキラキラさせて私に言ってきた。

「だから何?」浮かれる一輝君を軽く睨んで牽制した。「そんな事より、オレンジキッチンを黒字にする方法考えなきゃ。お店に早く連れて行って。さっき聞いていたでしょう? 社長の一人息子である、櫻井王雅との結婚を赦してもらうために、身体を張るのよ。私の命運も掛かっているんだから、しっかりやるわよ!」

「は、はいっ!!」

「お店、一日売り上げ幾らあるの?」

「あ、はい、えーっと・・・・一万円か、二万円か・・・・その辺です」

「その辺じゃ無いわよ。きちんと売り上げ把握してないの?」

「あー・・・・すみません」

 あまり悪びれも無く苦笑いする一輝君を見て、目の前が暗くなった。オレンジキッチンの現状を把握しないまま、お父様とあんな約束してしまった事、早くも後悔した。
 でもムカついて、つい口が先に出てしまった。カッとなるこの性格、どうにかしたい。

 優しかったけど、曲がった事は絶対に赦せなくて結構短気な美幸おかあさんによく似ていると、自分でも思う。
 だから花井も、私が美幸おかあさんの娘だってずっと間違えていたくらいだもんね。容姿だって髪型も同じようにして、自慢のおかあさんの娘だって思いたいから、そんな風に似せていたんだけれど。

 性格までそっくりになっちゃった事を、思わず心の中で笑った。


「とりあえずお店に行ったら、すぐに帳簿見せてね!」


 どの位の赤字なのかしら。カツカツ程度なら何とかなるかもしれない。
 でも、一日仮に二万円の売り上げとして、定休日は一日くらいあるわよね。
 計算しやすくするためにも、一か月を平均で三十日と仮定して、定休日の週一回、合計四回を引いたら、二十六日が実質稼働日数ね。
 二万円×二十六日で、売り上げ五十二万円。材料費・経費引いて更に人件費・・・・頭の中でソロバンを弾いて出した答えは、絶望的な数字だった。売り上げに勿論消費税は入っているの・・・・よね。それを考えると、余計に頭痛がした。
 とにかくムダを徹底的に省いて、コストカットするところもそうだけど、売り方を考えなきゃ。
 実際飲食店の一か月の平均売上は、よほどの人気店でない限り、一日三万円~五万円程。×二十六で、五万円と仮定した場合、百三十万円。うーん、イタリアンレストランなら、単価も高い分、材料費も高いわよね。
 帳簿を見ないと何とも言えないけれど、黒字に持って行くなら、一日十万円は売上欲しいわ。

 現状の赤字は幾らなのかしら。目標額、利益、色々考えなきゃいけないわ。
 でも、幾度となく絶望的な赤字のやりくりをしてきた私は、少々の赤字じゃへこたれないわよ!
 何とか黒字に持って行って、取りあえずお父様の結婚式の出席を取り付けなきゃ!

 これで失敗したら、二度と王雅のお父様は有言実行でオレンジキッチンは閉店、私も王雅との結婚を認めて貰えないどころか、王雅とご両親の懸け橋どころの騒ぎじゃなくなってしまう。


 さあ、やり遂げるのよ、櫻井美羽!!


 これは私に課せられた、王雅との結婚の最初の試練なのよ。
 王雅を頼らず、稼いでみせるわ!


 どんな手を使っても、オレンジキッチンを黒字に導いてみせるんだから!!



 
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