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スマイル38・王様の寵愛
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しおりを挟む「美羽ねーちゃんは美羽ねーちゃんだろ! マサキ施設のみんなを命かけて守ってる、真崎美羽じゃないか。王雅だって、そんな美羽ねーちゃんに心底惚れてんだよ。美羽ねーちゃんだって、王雅の事大事に思ってるだろ!? だったらさ、遠慮しなくてもいいじゃないか。王雅は絶対、美羽ねーちゃんを裏切ったり傷つけたりしないよ」
「そうだよ! 王雅のキモチに応えられるのは、ミューちゃんしかいないんだから!!」
二人から詰め寄られた。困っていると、コンコン、とノックの音がした。
これ幸いと二人から逃げ出し、控室のドアを開けると恭ちゃんが立っていた。
「やあ、美羽。少し話せるかな?」
「あ・・・・」真秀君と真凛ちゃんの方を振り向くと、行っておいで、と言ってくれたので、子供たちをお願いと頭を下げて部屋を出た。「お待たせ。行きましょう」
二人でホテルの廊下を歩いた。恭ちゃんの後ろをついて、私は黙って彼に従った。
やがてひとつの控室に到着した。高田製菓株式会社様控室、となっている。
鍵はかかっていないようで、恭ちゃんが迷わず入って行ったので、中に入ってすぐ声を掛けた。
ずっと、お礼が言いたかったから。
「あの・・・・恭ちゃん。ありがとう。プロジェクトも加担していて忙しかったのに、私を助ける為に、ずっと施設に菫ちゃんと一緒に来てくれていたのね。真秀君に聞いたの」
「ああ、その事。うん、櫻井君に言うなって言われていたからね。花井から守ってくれって、頭下げられたから。土下座されたよ。あのプライドの塊みたいな男に」
土下座・・・・。そういえば、真秀君も土下座されたって言っていたわね。
あの王雅が、私の為にそんな事まで・・・・。
「美羽、お前の為だよ。櫻井君はお前を守る為に、方々に頭を下げて回ってから、アメリカへ発ったんだ」
「あ・・・・うん。それも真秀君から聞いた」
「おかしいだろ。櫻井君たら、僕にまで言うんだ。『美羽をどうかよろしくお願いします』ってさ。誰に言っているんだ、全く・・・・僕の台詞を取るなって。なあ?」
恭ちゃんは片手で、秀麗な顔を覆った。「あの日から、覚悟はしていたんだ。美羽をもうすぐ・・・・嫁にやらなきゃいけない日が来ることを」
「止めてよ、恭ちゃん。私は・・・・お嫁になんか行かない——」
「櫻井君の事をどう思っているんだ。美羽、誤魔化さずに答えろ」
まだ喋っている途中だったのに、自分の顔を覆っていた手を戻し、恭ちゃんは鋭く強い口調で私の言葉を遮った。
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