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スマイル37・王様のプロポーズ

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「続いて、この企画の為に異色のコラボレーションを打ち立てました、高田製菓株式会社の真崎恭一郎からこの企画の為に開発した商品について、説明をさせて頂きます」



 高田製菓株式会社の、真崎恭一郎ですって!?


 ウソ。
 恭ちゃんも、ううん、高田製菓も王雅のプロジェクトに加担していたの?


 私、何も聞いてない——


 でも、壇上に現れたのは、王雅と同じくこの日の為にあつらえたであろうスーツをビシっと着こなした恭ちゃんだった。


「皆様、本日はお忙しい中、お集まり頂き誠にありがとうございます。ご相伴に預かりました、私、高田製菓株式会社の真崎恭一郎で御座います。頑なに和菓子一本伝統を守り続けて来た弊社でございますが、櫻井に口説かれまして、この企画に協力させていただく運びとなりました。今回弊社が開発したのは、和洋菓子でございます。和菓子の伝統を守りつつ、新しい洋風の色を取り入れた沢山の商品をご用意させていただきました。全面的にホテル宿泊者様にご満足いただける、和洋菓子バイキングを発足致します。お手元に資料がありますので、是非ご覧下さいませ。これは百貨店や弊社実店舗では一切販売せず、ホテルご利用者様のみがお楽しみ頂けるものとなります」


 澱みなくすらすら語ってのける恭ちゃん。
 これは、現実なの?

 綴じられたファイルの資料をめくると、横山さんの製品の次に高田の紹介、和洋菓子のバイキングや販路を打ち立てる事業計画が記載されていた。
 そんな資料に沿った事業計画を丁寧に説明し、今後も引き続き、高田製菓をよろしくお願い致します、と締めくくった恭ちゃんは、壇上を下りた。


 続いて王雅に紹介されて、綺麗な女性が壇上に現れた。お洒落なベージュのデザインスーツがよく似合っていた。自信に満ち溢れたオーラが、彼女を纏っていて、きっと横山さんや恭ちゃんに負けないくらいのものを開発して、発表するんだろうという事が伺えた。


「皆様。ご多忙の中、長らくのお付き合い誠に有難うございます。ヒロイホールディングスの久遠寺和歌子と申します。今回櫻井グループと合同企画、ブティック・ラグジュアリーホテル部門を担当させていただきました。お手元の資料をご覧下さい」

 スクリーンに手元の資料が映し出された。
 私みたいな人間には、この資料の価値なんかはよく解らないけれど、横山さんや恭ちゃんが王雅と共同開発した企画は、どちらも素晴らしいと思った。

 王雅のアイディアなんでしょうね。
 本当に凄いのね、王雅。こんな男と一度切りでもどうこうなろうと思っていた自分が、とても浅はかに思えた。

 久遠寺和歌子さんはきっと、プレゼン慣れもしているのだろう。王雅の様にスラスラと、資料に沿った企画の説明をしてくれた。
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