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スマイル37・王様のプロポーズ

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 それから、私は真凛ちゃんに華麗に変身させてもらった。
 王雅が用意してくれた、メタリックピンクのドレスに合わせて綺麗に髪をセットしてくれて、メイクをしてもらった。
 鏡に映った自分の姿を見ると、まるで貧乏とは無縁の女のように思えた。
 こんな風に着飾った事が無いから心配だったけれど、思った以上に悪くない。


 少しは、王雅に釣り合うかしら?


 ほんの少しだけセレブな気分になったけれど、これはシンデレラなんだと思った。
 魔法は午前零時まで。今夜いっぱいの魔法。


 丁度いいわ。王雅がプロポーズの返事を求めていたから、さっさと断って明日からまた、庶民の私――薄汚い貧乏女に戻るの。


 これは、ひとときの夢。決して私は向こう側――セレブな人間にはなれないのだから。






 ※





 
-ウェスティンホテル会場内-


 子供たちと私、真秀君や真凛ちゃんと一緒に、王雅が指定したホテルにやって来た。
 豪華絢爛なホテルに、大勢の人が集まった会場。マスコミの取材陣等もいて、本当に大層な会見が開かれる予感がした。

 時間になると、壇上にスポットライトが当てられた。
 隙の無いスーツ姿の王雅が、大勢の人間を前にしても物怖じせず堂々と現れた。


 やっぱり、私の好きになった男は凄い。悔しいくらいにカッコイイ。


「皆様。本日はご多忙の中、お集まり頂きまして誠にありがとうございます。私、この企画を担当、運営を任されている、櫻井グループ取締役の櫻井王雅と申します。今回の会見では、弊社櫻井グループの一環であるホテル事業部と、米ウェスティンホテル合同経営の発表、及び弊社が打ち立てたプロジェクトについて、ご説明させていただきます」


 先ずは封筒に入っている手元の資料を見るように促され、前に用意された大型スクリーンに、同じ内容の資料が映し出された。


「現在、ホテル事業部門の売上高約一千八百億円で国内トップを誇らせて頂いている弊社でございますが、世界大手の米ウェスティンホテルとの合同経営を行い、さらなるサービス、企画を打ち立てて参ります。目指す収益は少なくても五千億円以上、ホテル業界の世界一を目指します。更に、得た利益の五パーセントを全世界の恵まれない子供達に寄付を考えています。これについては、米ウェスティンホテル経営の現社長も御合意下さっております。クリーンな経営を目指しますので、弊社並びにウェスティンの収益等は何時でも見られるような決算提示も行います。寄付も同様です。ご覧ください」


 別の資料がスクリーンに映し出された。
 お金の単位、ケタが違う。百円や千円の世界で生きている私にとって、何千億円なんて数字は、天文学的数字に等しかった。
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