220 / 287
スマイル35・王様のいない日々
11
しおりを挟む「美羽ちゃん、ご存知でした? 私たち、同じ歳なんですよ。もう、敬語も止めていいでしょうか? 私、美羽ちゃんと、もっと仲良くなりたい」
「私だって! す・・・・菫ちゃんって、呼んでもいい?」
お義理姉さんでもなく、菫さんでもなく、特別な、友達のような――そんな関係になれたら、どんなに楽しいだろうって思った。
っていうか、同じ歳って・・・・一体この世はどうなっているの!?
とても同じ歳に見えないんだけど!
上品すぎるわ! 育ちが違いすぎるからね、きっと!
「モチロンです!」
私のさっきの返事を真似して、涙を拭いながら菫ちゃんが笑った。
可憐で、花のように美しい笑顔。
恭ちゃんだって、気が付いているハズ。彼女の魅力、ステキな所。
「ねえ、菫ちゃん。今日、マサキ施設に来ようっていったのは、恭ちゃんの方から?」
「ええ。そうです」
結局敬語抜けて無いし。抜かしたのは、私だけ。
まあ、いいか。そのうち無くなるでしょう。
「恭ちゃんがマサキ施設の中を見せて私に案内させたのは、自分の一番大切な領域に踏み込ませたってコトよ。私だってそう。この施設に関わって来たから、ここを紹介したり、見せるのには勇気がいるの。兄は、きっと菫ちゃんにここを見て欲しかったんだと思う。どんな風に育って、どんな風に関わって来たか、未だに援助を続ける理由も含めて」
「恭さんの・・・・一番大切な場所・・・・」菫ちゃんが息を呑んだ。
「最初結婚を決めたのは、確かに施設の為だったかもしれない。でも兄は今、菫ちゃんをとても大切にしていると思う。説教クサイし堅苦しいから、解り難い人だけど」
「説教クサイ・・・・」菫ちゃんはその言葉に、思わず笑顔を見せた。「恭さんって、お父さんみたいな所が沢山あります。高田に入っても、他の社員への配慮や面倒見がとてもよくて・・・・私には勿体ない位の素敵な人・・・・」
「大丈夫、菫ちゃんだって素敵よ! 義理妹(いもうと)の私が保証する!! だから、結婚を止めるなんて言わないで。ワガママいっぱい言って、兄を困らせてもいいのよ。遠慮しちゃダメ。思ってる事ちゃんと言わなきゃ。ガンコオヤジで鈍い『恭さん』には伝わらないよ?」
「はい。では、家に戻りましたらしっかり伝えます」
「敬語止めるんじゃなかったっけ?」
「はい、そうでした。ついうっかり」
私達はお互いに顔を見合わせて笑った。
菫ちゃん――私の、お義理姉ちゃん。
でも、そんな堅苦しいんじゃなくて、友達みたいになれたらいいな。
呼び名を変えただけで、ぐっと親密度が上がったと思う。敬語が無くなったのもいいわ。
そうだわ。恭ちゃんだって『菫さん』って未だに呼んでいるのがいけないのよ。
説教ついでにここ、変えさせよう。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
幼馴染、幼馴染、そんなに彼女のことが大切ですか。――いいでしょう、ならば、婚約破棄をしましょう。~病弱な幼馴染の彼女は、実は……~
銀灰
恋愛
テリシアの婚約者セシルは、病弱だという幼馴染にばかりかまけていた。
自身で稼ぐこともせず、幼馴染を庇護するため、テシリアに金を無心する毎日を送るセシル。
そんな関係に限界を感じ、テリシアはセシルに婚約破棄を突き付けた。
テリシアに見捨てられたセシルは、てっきりその幼馴染と添い遂げると思われたが――。
その幼馴染は、道化のようなとんでもない秘密を抱えていた!?
はたして、物語の結末は――?
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる