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スマイル35・王様のいない日々

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 翌日。朝食を終えて片づけをし、昼食のメニューを考えながらお遊戯を始めようかと思っていると、キンコーンと来客のチャイムが鳴った。
 子供たちが誰だ―、って騒ぎ出したので、静かにしててね、ってお願いして玄関に向かった。

 今の時刻、午前九時よ? 早くない?

 誰かしら、と思ってガラガラと扉を開けて外に出ると、何と恭ちゃんと菫さんだった。

 こんなに朝早く、菫さん連れ回していいの!?
 恭ちゃんったら、一体どういうつもりなのかしら!


 門の所まで行って鍵を開けると、やあ、と恭ちゃんが会釈した。


「菫さん。これが前に紹介した美羽だ。仲良くしてやってくれ」

 これ扱い・・・・。別にいいけど・・・・。

「こんにちは、美羽さん。今日は無理言ってお邪魔させてもらう事になって、申し訳ございません」

 深々と頭を下げられた。ちょっと、止めてー。


「あの・・・・何もない貧乏施設ですが、どうぞおあがり下さい。汚いので、くれぐれもお召し物を汚されないように・・・・」

 菫さんって、見るからにお嬢様! 綺麗! 私と同じ人間なの!?
 華奢で折れそうな細い身体。線。薄く紅を引いたような小さな唇。つぶらな瞳。
 全てが上品。美しい。私とは次元が違う。

 菫さんの召し物は、白の上品なカットソーは九部丈くらいの長さで、中央の袖にリボンがついていてふんわりしているわ。薄いモカブラウンのハイウェストのロングスカートは、中央にリボンベルトで結ばれている。
 商店街の徳用スーパーで、いつもお買い得品の安物を買って着こなしている私の服装とは大違い!

 子供たちにも注意しておかなきゃ。
 菫さんに触らないでよって。
 お召し物が汚れちゃったら、弁済できないわ!


「恭ちゃん、ちょっと」


 手招きして耳を貸すように小声で言った。「粗相のない様に気を付けるけど、子供たちも菫さんのお洋服汚さないように注意しておいてね」

「いいんだ。もし汚れてしまったら僕が弁済するから、美羽は気にするな」

「ええっ、止めて! ダメよ、絶対ダメ!!」

「僕が勝手に菫さんを呼んだんだ。美羽が気にすることは無い。それより、上がらせてもらうよ。それより、大事な施設を汚い所扱いしないで欲しいな。一応、僕も育ったんだから」

「そうだけど・・・・」

「それより、菫さんに施設内を案内してあげてくれないか。子供たちは僕が引き受けるから、頼むよ」

「いいけど・・・・」

「じゃあ、頼んだからな」

 恭ちゃんは菫さんに向き直り、義理妹の美羽が案内するから、と言って菫さんを置き去りにして、遊戯室へ行ってしまった。
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