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スマイル35・王様のいない日々

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「お客さん、誰だった?」


 いつの間にか玄関に来てくれた恭ちゃんが、私に声をかけてくれた。

「あ、まりなちゃんが寄ってくれたの。お仕事前に、私の顔見に」

「そうか。良かったな、美羽」

「ええ。それより恭ちゃん、施設や私の事は大丈夫だから、早く帰らないと」

「いいや、暫くオフなんだ。菫さんの事なら気にしなくていいよ。明日は、彼女も連れて来るから」

「えっ!?」

 恭ちゃんのビックリ発言に驚いて聞き返した。「こんな所に来させちゃダメでしょ」

 
「何で? 美羽が命かけて守っている施設を『こんな所』扱いしちゃ、とうさんもかあさんも、天国で泣いてしまうぞ」

「いやあの・・・・」

「それより美羽」恭ちゃんに厳しい目を向けられた。あ、来る、お説教――「花井の事、子供たちから聞いたぞ! どうして何時もムチャばっかりするんだ。あんなクソジジイの嫁になるなんて、誰が賛成できると思っているんだ! いい加減、この施設に拘るのは止めたらどうなんだ。マサキ施設は確かに僕も大切だ。でも、それ以上に美羽が大切なんだ。想い出が無くなる訳じゃないだろう? とうさんやかあさんが、花井の嫁になった美羽を見たら悲しむぞ」

「そうだけど・・・・解っているわよ、そんな事」

「いいや、美羽は全然解ってない!」


 ああ、ウルサイ。
 もう、恭ちゃんってばホント、頑固オヤジみたい。
 こーなったら、トコトン言われちゃう。だからついムキになってケンカしちゃうのよね。何か、久々だわ。


 玄関で恭ちゃんと押し問答していたら、子供たちが出て来て、先生たち、ケンカはだめだよー、と注意された。
 
 もう。恭ちゃんのせいで、子供たちに怒られちゃったじゃないの!

「本当だよね。美羽先生ってすごーくガンコだから、僕もつい熱くなっちゃて。心配かけてゴメンね。さあ、お遊戯しようか。今日は先生も一緒に、お遊戯混ぜてくれるかな?」


 ちょっと! 誰がガンコよ!
 ガンコはそっちでしょ!

 言い返したかったけれど、そうなるとまたケンカになっちゃうし、また子供たちに注意されるから、仕方なく止めた。

「いいよー。先生、行こうー」

「恭先生も一緒、わーい」


 子供たちに手を取られて、恭ちゃんが遊戯室に行ってしまったので、私もその後に続いた。


 結局それから恭ちゃんは夜まで施設にいて、高田の仕事へは戻らなかった。大丈夫なのかしら。
 子供たちのお風呂も手伝ってくれて、大助かりだったのは否めない。食事も私が作ったご飯を食べてから、さっさと高田の家へ帰って行った。

 恭ちゃんをみんなで送り出すと、施設の電話が鳴った。
 一体、誰かしら。今日は急な来客やらなんやで、忙しいわね。
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