212 / 287
スマイル35・王様のいない日々
3
しおりを挟む「お客さん、誰だった?」
いつの間にか玄関に来てくれた恭ちゃんが、私に声をかけてくれた。
「あ、まりなちゃんが寄ってくれたの。お仕事前に、私の顔見に」
「そうか。良かったな、美羽」
「ええ。それより恭ちゃん、施設や私の事は大丈夫だから、早く帰らないと」
「いいや、暫くオフなんだ。菫さんの事なら気にしなくていいよ。明日は、彼女も連れて来るから」
「えっ!?」
恭ちゃんのビックリ発言に驚いて聞き返した。「こんな所に来させちゃダメでしょ」
「何で? 美羽が命かけて守っている施設を『こんな所』扱いしちゃ、とうさんもかあさんも、天国で泣いてしまうぞ」
「いやあの・・・・」
「それより美羽」恭ちゃんに厳しい目を向けられた。あ、来る、お説教――「花井の事、子供たちから聞いたぞ! どうして何時もムチャばっかりするんだ。あんなクソジジイの嫁になるなんて、誰が賛成できると思っているんだ! いい加減、この施設に拘るのは止めたらどうなんだ。マサキ施設は確かに僕も大切だ。でも、それ以上に美羽が大切なんだ。想い出が無くなる訳じゃないだろう? とうさんやかあさんが、花井の嫁になった美羽を見たら悲しむぞ」
「そうだけど・・・・解っているわよ、そんな事」
「いいや、美羽は全然解ってない!」
ああ、ウルサイ。
もう、恭ちゃんってばホント、頑固オヤジみたい。
こーなったら、トコトン言われちゃう。だからついムキになってケンカしちゃうのよね。何か、久々だわ。
玄関で恭ちゃんと押し問答していたら、子供たちが出て来て、先生たち、ケンカはだめだよー、と注意された。
もう。恭ちゃんのせいで、子供たちに怒られちゃったじゃないの!
「本当だよね。美羽先生ってすごーくガンコだから、僕もつい熱くなっちゃて。心配かけてゴメンね。さあ、お遊戯しようか。今日は先生も一緒に、お遊戯混ぜてくれるかな?」
ちょっと! 誰がガンコよ!
ガンコはそっちでしょ!
言い返したかったけれど、そうなるとまたケンカになっちゃうし、また子供たちに注意されるから、仕方なく止めた。
「いいよー。先生、行こうー」
「恭先生も一緒、わーい」
子供たちに手を取られて、恭ちゃんが遊戯室に行ってしまったので、私もその後に続いた。
結局それから恭ちゃんは夜まで施設にいて、高田の仕事へは戻らなかった。大丈夫なのかしら。
子供たちのお風呂も手伝ってくれて、大助かりだったのは否めない。食事も私が作ったご飯を食べてから、さっさと高田の家へ帰って行った。
恭ちゃんをみんなで送り出すと、施設の電話が鳴った。
一体、誰かしら。今日は急な来客やらなんやで、忙しいわね。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
window
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
子供の親権も放棄しろと言われてイリスは戸惑うことばかりでどうすればいいのか分からなくて混乱した。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる