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スマイル34・王様の権利書

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「その顔――流石、王雅は頭がキレるね。新しいオーナーが中で待ってる。特別に入ってもいいって。美羽ねーちゃんじゃ説明できそうにないから、新オーナーに詳しく説明聞いたらどうだ?」

 王雅が信じられない、というような目を真秀君に向けた。

「悪いな。こっちも切羽詰まった事情があったんだ」

 どんな事情があったのかは知らないけれど、幼い頃から散々世話になったマサキ施設に対する酷い裏切りだわ!
 それに真秀君の事情とか、私には全く関係無いし。

 王雅は真秀君を連れ添って、応接室へ入って行った。
 私は中に入る勇気も無く、玄関先で泣いているリカちゃんたちに声を掛け、遊戯室で待っていてもらうようにお願いした。


 王雅、花井と話しているのよね。どうしよう。
 私からは何も言う事は無いし、このまま王雅が出て来るのを待っていよう。
 ちゃんと謝らなきゃ。土地を花井に取られてしまった事、貴方をもう待てない事。

 何やら言い合う声が暫く続いたと思ったけど、割と早くに王雅は応接室を出て来た。
 怖い顔をしている王雅と目があった。
 急に腕を取られ、強い力で引っ張られた。仕事部屋の方に連れていかれ、鍵を開けるように促された。

 ここなら、少しの間なら二人で向き合って話ができるものね。

 そのまま中に入ると、王雅はそのまま鍵を掛けて誰も入って来れないようにしてしまった。
 怖いくらい静かな王雅に、とりあえず声を掛けた。
 とにかくこうなってしまった事、謝らなきゃ。


「王雅・・・・ごめんなさい・・・・っ、貴方の権利書、花井に盗られてしまって・・・・名義も書き換えられてしまったの」

「謝るな、美羽。俺がちゃんとしてやらなきゃいけなかったんだ。土地の権利書はお前の大切なモンなのに、ずさんなコトしてたから・・・・俺の方こそ、お前に辛い思いさせちまって、ごめん」


 逆に王雅に謝られて、また涙が溢れて来た。貴方は何も悪くないのに。
 
「なあ。どうしても、この施設じゃないとダメなのか? 他に移転とか、移築とか、考えられねーのか? お前がいいって言ってくれるなら、俺が何とでもしてやるぞ」

 私は静かに首を振った。「・・・・ごめんなさい。この施設は私のおとうさんとおかあさんが、私の為に遺してくれた大切な宝物なの。絶対に、何があっても手放したりできない。この施設は、私の生きていく支えなのよ。だから花井の言う事を聞くしかないの。王雅を待ってるって、約束・・・・守れなくて・・・・ごめんなさいっ・・・・」


 もういいから、と言われて、そっと唇が重なった。
 貴方のぬくもり。こんな時にまで、身体は欲して求めている。


 更に王雅の唇が私の涙の跡を吸い、首筋に口づけた。そのまま舌を這わせられ、滑り落ちていく。
 吐息が震えて、思わずはしたない声が漏れそうになったので、必死に堪えた。


 彼の行為を止めなきゃいけないのは解っているのに、もう、王雅のされるままだ。
 私の着用しているブラウスに、手がかけられた。
 どうしよう。見つかってしまう。




 ――私の秘めた想い。




 
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