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スマイル34・王様の権利書

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 お砂糖が切れてしまったので、今日の夕飯に使う野菜と、明日の夕飯のおかずになるものを買っておこうと思って、子供たちに留守番を頼んで商店街に買い物に出た。
 王雅が明日からアメリカへ行くってみんな知っているから、餞別に持って行ってくれ、って山ほどお土産を貰った。


 これで、電話をする用事が他にも出来たわ。良かった。


 ささっと買い物を済ませて施設に戻ると、子供たちが、真秀お兄さんと、もう一人お客さんが来てるよー、と教えてくれた。応接室に案内してくれていたみたいだから、お茶を持って応接室に入った。
 一体誰かしら。真秀君も久しぶりね。お客様って、玄関の靴を見たら紳士用の靴だったから、お客様は男性の方かしら。
 ああ、商工会議所とか役所の人だったら、面倒だなぁ。指導とか入ったら困るから、適当に誤魔化さなきゃ。


「お待たせしました。私がマサキ施設責任者の――」


 話ながら応接室の扉を開け、中の人物を見て虫唾が走り、鳥肌が立った。お茶を乗せたトレイを持つ手が震える。
 真秀君の隣に座っていたのは、花井だったから。この男の姿を見るだけで、身体が拒否反応を示す。

「何の用?」

 思わず顔がひきつって、声色が変わった。ホントもう、二度と会いたくない男――花井康。
 
「おやおや美羽さん。相変わらずお美しい。気の強い所も、気高い所も、美幸さんそっくりだ」

 花井は、相変わらずニタニタ笑って気持ち悪い。真秀君たら、どうしてこんな男連れて来たのよ!

「花井、私はアンタに用事なんか無いわ。今すぐ帰って」

「おやおや、そんな事を言ってもいいのですか? これからここのオーナーになったというのに」

「はあっ? 何言ってんの? 土地のオーナーは王雅じゃないの。アンタが三十億で王雅に売ったんでしょう。書面も私が保管して――」


 まさか。


 私の想像があまりに恐ろしすぎて、青ざめた。
 花井がまた、何かしらの手法で書類を盗み出して、手に入れたのだという事実。


 誰か、ウソだって言って。


「土地は櫻井のぼっちゃんから、この通り譲り受けました。今日からこの土地は、再び私のものです」


 私が保管しているハズの書面。どうして花井が再び手にしているの。
 土地の名義書類には、櫻井王雅から花井康の名前に書き変えられていた。花井は、そのコピーをちらつかせている。


 そんな。


 その時、真秀君と目が合った。彼はすぐ私から目をそらし、俯いた。



 真秀君。
 もしかして貴方――



 
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