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スマイル32・王様のヒーローショー
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モヤモヤを胸中に残したお芋堀から、暫く月日は流れた。
王雅とはあれから、特別な進展や話は何もない。
奴隷としての契約もまだだし、自分から抱いてとかそんな事も言えないし、結局何も変わらないまま、時間だけが過ぎて行った。
今日は土曜日で、王雅が施設に帰ってくる日だ。
相変わらず嬉しくときめいてしまう心に、ため息が出た。自分の愚かさを笑うしか出来ない。
そうそう。これからライタ君の誕生日パーティーをする予定なの。
王雅も張り切って色々手配してくれたみたい。ライタ君の大好きな『ウルトライダーQ』を呼んでヒーローショーをしてくれるって言ってたわね。
はあ。お金持ちって言うのはやっぱりスゴイわね。お金さえ払えば何でもできちゃうし、夢だって叶っちゃうんだもん。
そんな事を考えながら、王雅が帰って来たのでみんなでお出迎えした。相変わらず嬉しそうに、一人一人を抱きしめてありがとうを伝えている。
包み込むようにして抱きしめられている子供たちが、少し羨ましくなった。
っとと。あ、ち、違うの! う、羨ましくなんて無いわ!
誰が羨ましいもんですかっ。
平常心、平常心。
「王雅、お帰りー」
王雅を出迎えていると、真凛ちゃんもキッチンの方からやって来た。彼女を見るなり、王雅はげんなりした顔をして、これ見よがしにため息を吐いている。
「何でお前がいるんだよ」
「今日、ライタ君の誕生日じゃん。お祝いしようと思って。マサキ施設は、絶対に誕生日パーティーやってくれるから」
子供たちのお出迎えと、かなり差があるわね。王雅の冷たい態度にホッとする自分にも、嫌気がさしてしまうわ。
「相変わらずツレないなぁ。でも、そこが素敵!」
真凛ちゃんはめげない。王雅に猛烈アタックを繰り返している。
凄いわ。そのパワーと勇気。私も少し分けてもらいたい位だわ。
あら。それよりさっきまで子供たちに会えて嬉しそうにしていた王雅が、死にそうな顔をしているわ。もの凄く暗い、この世の終わりみたいな顔になっている。
どうしたのかしら。気になったので聞いてみた。
「王雅、どうしたの? 急にそんな暗い顔して・・・・何かあった? 美味しいごはん出来てるから、沢山食べて元気出して」
それを聞いて、彼はますます複雑な顔を私に向けた。
なによっ。私のせいだっていうの!?
フン。鈍感女が、とか思われていようが、そんなの知らないわ。
勝手に妄想して、勝手に落ち込まれても困るって。
そっちだって私の演技に騙されている、鈍感男でしょーが。人の事とやかく言える立場じゃないわ。
それより真凛ちゃんが王雅にベタベタするところなんか見たくないから、さっさとキッチンへ戻りましょう。
王雅とはあれから、特別な進展や話は何もない。
奴隷としての契約もまだだし、自分から抱いてとかそんな事も言えないし、結局何も変わらないまま、時間だけが過ぎて行った。
今日は土曜日で、王雅が施設に帰ってくる日だ。
相変わらず嬉しくときめいてしまう心に、ため息が出た。自分の愚かさを笑うしか出来ない。
そうそう。これからライタ君の誕生日パーティーをする予定なの。
王雅も張り切って色々手配してくれたみたい。ライタ君の大好きな『ウルトライダーQ』を呼んでヒーローショーをしてくれるって言ってたわね。
はあ。お金持ちって言うのはやっぱりスゴイわね。お金さえ払えば何でもできちゃうし、夢だって叶っちゃうんだもん。
そんな事を考えながら、王雅が帰って来たのでみんなでお出迎えした。相変わらず嬉しそうに、一人一人を抱きしめてありがとうを伝えている。
包み込むようにして抱きしめられている子供たちが、少し羨ましくなった。
っとと。あ、ち、違うの! う、羨ましくなんて無いわ!
誰が羨ましいもんですかっ。
平常心、平常心。
「王雅、お帰りー」
王雅を出迎えていると、真凛ちゃんもキッチンの方からやって来た。彼女を見るなり、王雅はげんなりした顔をして、これ見よがしにため息を吐いている。
「何でお前がいるんだよ」
「今日、ライタ君の誕生日じゃん。お祝いしようと思って。マサキ施設は、絶対に誕生日パーティーやってくれるから」
子供たちのお出迎えと、かなり差があるわね。王雅の冷たい態度にホッとする自分にも、嫌気がさしてしまうわ。
「相変わらずツレないなぁ。でも、そこが素敵!」
真凛ちゃんはめげない。王雅に猛烈アタックを繰り返している。
凄いわ。そのパワーと勇気。私も少し分けてもらいたい位だわ。
あら。それよりさっきまで子供たちに会えて嬉しそうにしていた王雅が、死にそうな顔をしているわ。もの凄く暗い、この世の終わりみたいな顔になっている。
どうしたのかしら。気になったので聞いてみた。
「王雅、どうしたの? 急にそんな暗い顔して・・・・何かあった? 美味しいごはん出来てるから、沢山食べて元気出して」
それを聞いて、彼はますます複雑な顔を私に向けた。
なによっ。私のせいだっていうの!?
フン。鈍感女が、とか思われていようが、そんなの知らないわ。
勝手に妄想して、勝手に落ち込まれても困るって。
そっちだって私の演技に騙されている、鈍感男でしょーが。人の事とやかく言える立場じゃないわ。
それより真凛ちゃんが王雅にベタベタするところなんか見たくないから、さっさとキッチンへ戻りましょう。
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