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スマイル30・王様の事情聴取
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しおりを挟む「気持ちだけもらっておく。ありがとう。でも、貴方はちゃんと自分の大切なお仕事があるんだから、疎かにしちゃダメよ。迷惑がかかるでしょ。それがイヤなの」
「別にかかんねーよ。俺は、毎日帰って来たい」
「・・・・毎日なんて、ダメよ」
「どうしてっ!?」
王雅は心底意外な顔で、私の言葉に喰ってかかる。「お前、何時でも帰って来ていいって、俺に言ったろ! あれ、嘘かよっ!?」
「違うわ。嘘なんかじゃないけど・・・・」
もう、ごまかさずにちゃんと言うしか無いわね。
「王雅、この際だからハッキリ言っておくわ。私達を、期待させないで欲しいの。毎日王雅が帰ってきたら、子供達は喜ぶわ。でも、貴方、一生それ続けられるの? 無理でしょう? 私と貴方じゃ、住む世界が違うのよ。何時か貴方も、貴方に相応しい場所へ帰るでしょ。今は珍しくて楽しいから、施設通いを続けられるのかもしれないけど――」
「なんだよ、ソレ!!」
王雅がとても傷ついた悲しい顔になった。
どうして貴方が傷つくのよ。傷つくのはこっちだってのに。
傷ついた顔を見せていた王雅は、暫く黙って逡巡していた。
「自分が相応しい場所なんか、自分で決める。俺は、好きで施設に来てんだ。ガキ共もお前も好きだから、一生でも通い続けてやるよ。悪いか!」
「それは悪くない・・・・けど・・・・」
もう、そういうしか収拾がつきそうになかった。
ここは、私が引いておくわ。
でも、どうせうまい事言っておいて、手に入れたらポイするんでしょ。
一生通うとか、ムリだって。
詐欺に合うって判っていながら、詐欺師に同情してお金を渡してしまう優しいお婆ちゃんの気持ちが解った気がした。最終的には裏切られるコト、こっちはもう気付いているのよ。
「じゃあ、ゴチャゴチャ言うな。俺は、俺の好きにする。仕事だって妥協はしねーよ。平日だってキノコが来るんだったら、俺も来る。キノコにお前は渡せねーから。二人きりになんて、させらんねーだろが!」
「キノ・・・・」
そういえばさっきから真秀君の事、キノコキノコって言っているわね。
「ああ、真秀の事だ。赤茶のキノコだろ。お前、約束守ってキノコ嫁になるつもりか? 赤茶色のキノコなんて、絶対毒あんぞ。やめとけ」
ぷっ、と思わず吹き出してしまった。
まあ、髪型からキノコを連想できなくも無いけど。そうハッキリ言われたら、ウケちゃうわね。
とにかく、と王雅が真剣な顔を向けた。
ドキン、と心臓が高鳴る。最近は、王様スマイル以外にもときめいてしまう自分の心を戒めきれないでいる。
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