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スマイル29・王様と双子の兄妹
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食事の後、みんなで片づけを行った。王雅が率先してみんなに手伝わせてくれるから、とても助かった。その流れで今日のお昼ご飯を炊く準備をしていると、ガックンがキッチンへやって来た。
「先生、お兄さんが玄関に集合って、みんなの事を呼んでいます」
「あら、そうなの? 私も集合?」
「はい。全員集合って言われました」
「解った、行くわ」
どうしたのかしら。
ガックンと一緒に玄関に向かうと、王雅が張り切ってこっちだ、こっち、とみんなを誘導している。
「あっ、美羽、ちょっと頼みがあるんだ! 動画撮影に協力して欲しい! 頼む、このとーりっ」
王雅に懇願されたので、別にいいわよ、と伝えたら、満面の王様スマイルで彼は喜んだ。
「今から動画撮るから、俺が仕事に行くつもりで、お前等、行ってらっしゃい、って言ってくれ! あと、お帰りも! さあさあ、ホラ、並んで並んで! あっ、全員入るように、ちょっと詰めてくれよ。このままじゃ画面からはみでちまうっ」
「そんなの、ここに帰ってきたら何時でも言ってあげるのに」
王雅のハイテンションぶりに、思わず苦笑した。
「お前は解ってねーな! 平日は帰れねーだろが。だから撮影しておいて、家に帰ったら毎日見るんだよ。初めて撮影すんだ。バッチリ決めてくれよっ! はい、せーのっ」
王雅が掛け声を上げ、動画の撮影ボタンをタップした。
「王雅、行ってらっしゃい! お仕事頑張ってね!」
お城に帰ってもまだ、私たちのことを思い出してくれるというの?
「おにいさーん、行ってらっしゃーい!」
王雅。貴方の一言が、私の心をどれだけ幸せに満たすか、解ってるの?
「しゃーい」
言ってやりたい。
「おー」
貴方を、愛しているって。
「行ってらっしゃーい!」
貴方を送り出し、その帰りを待っているのは私たちだけよ、って。
「頑張ってねー!」
貴方を癒せるのは私たちだけよ、って。
「ばいばーい! 早く帰って来てねー!」
そんな風に伝えられら、どんなに――
全員揃って色々言うと、王雅は満足そうに再びスマートフォンを操作した。次は同じ調子でお帰りを頼むって言われたので、同じようにお帰りの動画を撮影した。
「サンキュー、いい動画撮れた! スッゲー嬉しい!!」
子供みたいに喜んで、みんなに手厚くお礼を言っている。
きっと今は、貴方の本心よね。その心が私たちから離れ、見向きもされなくなるその時は、一体何時なのかしらね。
飽きられたら、それでお終い。
何て悲しいの。
「先生、お兄さんが玄関に集合って、みんなの事を呼んでいます」
「あら、そうなの? 私も集合?」
「はい。全員集合って言われました」
「解った、行くわ」
どうしたのかしら。
ガックンと一緒に玄関に向かうと、王雅が張り切ってこっちだ、こっち、とみんなを誘導している。
「あっ、美羽、ちょっと頼みがあるんだ! 動画撮影に協力して欲しい! 頼む、このとーりっ」
王雅に懇願されたので、別にいいわよ、と伝えたら、満面の王様スマイルで彼は喜んだ。
「今から動画撮るから、俺が仕事に行くつもりで、お前等、行ってらっしゃい、って言ってくれ! あと、お帰りも! さあさあ、ホラ、並んで並んで! あっ、全員入るように、ちょっと詰めてくれよ。このままじゃ画面からはみでちまうっ」
「そんなの、ここに帰ってきたら何時でも言ってあげるのに」
王雅のハイテンションぶりに、思わず苦笑した。
「お前は解ってねーな! 平日は帰れねーだろが。だから撮影しておいて、家に帰ったら毎日見るんだよ。初めて撮影すんだ。バッチリ決めてくれよっ! はい、せーのっ」
王雅が掛け声を上げ、動画の撮影ボタンをタップした。
「王雅、行ってらっしゃい! お仕事頑張ってね!」
お城に帰ってもまだ、私たちのことを思い出してくれるというの?
「おにいさーん、行ってらっしゃーい!」
王雅。貴方の一言が、私の心をどれだけ幸せに満たすか、解ってるの?
「しゃーい」
言ってやりたい。
「おー」
貴方を、愛しているって。
「行ってらっしゃーい!」
貴方を送り出し、その帰りを待っているのは私たちだけよ、って。
「頑張ってねー!」
貴方を癒せるのは私たちだけよ、って。
「ばいばーい! 早く帰って来てねー!」
そんな風に伝えられら、どんなに――
全員揃って色々言うと、王雅は満足そうに再びスマートフォンを操作した。次は同じ調子でお帰りを頼むって言われたので、同じようにお帰りの動画を撮影した。
「サンキュー、いい動画撮れた! スッゲー嬉しい!!」
子供みたいに喜んで、みんなに手厚くお礼を言っている。
きっと今は、貴方の本心よね。その心が私たちから離れ、見向きもされなくなるその時は、一体何時なのかしらね。
飽きられたら、それでお終い。
何て悲しいの。
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