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スマイル27・王様は無敵

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「なあ、美羽。困ってんなら、櫻井グループが経営してるホテルでも使うか? とりあえず別の場所に移るだけなら、今すぐにでも手を貸せるぜ。勿論、金なんて取らねーよ」

 王雅の言葉に、見つめていた名簿から顔を上げた。

「ありがとう。でも、ホテルじゃ一時しのぎでしょう? 結局落ち着ける先がなくっちゃ、一緒なのよ。自立して、生活できる支援が無いと・・・・何の解決にもならない」

「でも、そうも言ってらんねーだろ。あの親父の様子じゃ、何しでかすかわかんねーぞ。いつでも俺が傍にいてやれりゃいーけどよ、それは無理だし、受け入れ先が決まんなくて、チイをこのままマサキ施設に残しておくのかよ。それこそ解決になんねーだろ。落ち着ける先なら、ホテル住まいしながらでも探せんだろ。俺に頼ること遠慮してんなら、そんなもんは不要だ。お前だけじゃなくて、ガキ共が困ってんなら、俺が何時でも助けてやるっつーの! 俺だって、ガキ共の事、メチャクチャ大事に思ってんだ。だから、ガキ共が困ってんなら、俺にも守らせてくれ。力貸してやりてーんだ」

 
「王雅・・・・」


 心を込めたその言葉。本当に嬉しかった。
 
「できるだけ遠くの方がいいか? それとも、近県の方がいいか? 今すぐ手配してやる」

「じゃあ・・・・できるだけ遠くに」

 とにかくあのお父さんから、少しでも遠く離れさせたい。

「ラジャー。っとその前に。礼は貰うぞ、お前から」

「お礼? えっ、――っ、んっ・・・・」

 それは、あまりに突然の事だった。
 さっと近づいた王雅の熱い唇に包まれたかと思うと、舌が押し入ってきた。


 一体、なにが、起こっているの――


「んっ、うんっ・・・・んんっ、ふぅっ、っぁ、はっ・・・・!」

 
 キスをされているのだと気が付いたのは、自分が発しているくぐもった吐息を聞いてからだった。
 されるがままに身を任せていると、暫く経って唇が離されて、私を見つめる王雅がニヤリと笑った。




 ドキンとした。何て悪い、オトコの顔なの――



 
 
「ごちそーさん。お前からの礼は受け取ったぜ。キスの分、しっかり働いてやるから、安心しろよ」

 もうっ。何の前触れも無く、勝手に触れたりしないでよ!
 ドキドキして、貴方をただ好きな、一人のつまらないオンナになってしまうでしょう。

「なんだ、まだ足りねーのか? でも、この案件、急ぐだろ? 続きのキスは夜まで待てよ。それ以上してもいいっつーなら、後でたっぷりしてやるから」

「ばっ、バカじゃないのっ! いっ、いらっ、・・・・要らないわっ!」

 ちょっと! そんな風に言うの止めてよねっ。
 ついうっかり、もっとして欲しい、って言ってしまいそうになるでしょーが!

「ふーん。でも、お前、久々に俺にキスされて嬉しそうだけど?」

「なっ・・・・そんなワケないでしょっ!! ヘンな事言わないでっ!」

 物欲しそうな顔をしていたことを言い当てられて、更に焦ってしまった。
 この私を焦らせるなんて、王様のクセにっ!!

「まあいい。美羽、俺は今まで以上に、ホンキでお前を落としに行くからな。覚悟しとけよ」

 耳元で囁かれたら、顔から火が出るのではないかというくらい、真っ赤になってしまった。
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