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スマイル26・王様と朝食

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 えっ。私がもうおかあさんみたいですって?
 そうよ。みんなのおかあさんなの。
 みんな私のかわいい子供たちですから。

 
「ごめーんのカッパー」

 ライタ君がミイちゃんに謝った。とても謝っている風に思えないけど。

「なによ、カッパって! 謝る気あんの!?」

 案の定ミイちゃんは怒った。

「あるーのカッパー」

「ちょっと、ライタ!!」

 ミイちゃんがライタ君を掴もうとするから、慌ててライタ君が逃げ出した。

「キッチンで走り回ったら危ないわっ! 今すぐ止めないと、もうハンバーガーのバイキングはやらないから!!  王雅お兄さんにも伝えて、すぐに帰ってもらうわよ!」

 申し訳ないけど、王雅も引き合いに出した。
 子供たちの手が届く下の方に設置してあるグリルも使っているし、触って火傷したら大変だもの。
 野菜やバンズをひっくり返されても困るしね。

「あっ、ゴメンナサイ!!」

 二人が揃って私に謝ってきた。
 もう。どうしてこうミイちゃんは、何時もライタ君にだけ突っかかるのかしら。
 まあ、ミイちゃんは、それだけ気になるのね、ライタ君が。
 今はライタ君のコトを弟みたいに思っているのでしょうけど、もう少し大きくなったら、どうなるかわからないわね。姉弟みたいでカワイイけれど。お互いに、男女を意識したりするのかしら。

 施設で暮らしていた子が、両想いになってくれたら、それは嬉しい事だけれど。
 でも、引き取り先が見つかって別の家に行ったり、小学生になったら別の施設へ移設しなきゃいけないから、離れてしまうのよね。
 ハナちゃんも、ついこの前引き取り先が決まってマサキ施設を去ってしまったし。

 こういう事はしょっちゅうよ。

 常に別れと隣り合わせでいる私は、何時もマサキ施設に一人取り残される。
 でも、ここにやって来る子供たちは後を絶たないし、今暮らしているみんなとは、不思議な縁で繋がっているから、たとえ私の手を離れて行ってしまっても、大丈夫。
 それよりもみんなが元気で、幸せに暮らしていける方が大切だもの。

「さあ、仲良くお手伝いしてね。王雅お兄さん早く来てくれるだろうから、帰ってきたらすぐに食べれるように、ちゃっちゃと準備しちゃいましょう!」

「はーいっっ!!」

 みんなで手分けして朝食の準備を行った。
 午前七時前には、全員着替えも済んで、すっかり朝食の準備が整った。
 子供たちは待ちきれないから、と玄関に走って行って王雅を迎えるスタンバイしている。

 王雅が来るのが遅かったら、電話して早く来てもらうようにお願いしようかな――そう思っていると、ギイイイ、と錆びた鉄の門が開く音がした。


「あっ、王雅お兄さんだっ!!」

「やったー! 帰ってきたぁ!!」

「おーちゃん、みんなが突然お出迎えしたら、びっくりするかなぁ!?」

「おー」

「おーたん、きあー(きたー)!!」

「ワーイ!!」


 子供たちが騒ぎ出した。
 想像以上に来るのが早いわね。まだ七時になったところよ?
 まあ、それだけ王雅も早く帰って来たいって思ってくれているのね。嬉しいわ。



 ガラガラと横開きの扉が開けられた途端――




 
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