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スマイル25・王様の拠り所
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しおりを挟む「あれぇー、みーちゃん、ひとつ多いよぉ?」
アイリちゃんが隣の空席に置かれた食事の用意を見て、私に声を掛けて来た。
「ああ、それ、王雅お兄さんの分よ。多分もうすぐ帰って来ると思うから、用意しておいたの」
「えーっ、本当? ヤッター」
アイリちゃんが嬉しそうに笑っている。ふふ。アイリちゃんかわいい。王雅が大好きですもんね。王様が来てくれるのが、よっぽど嬉しいのね。
それにしても、おーちゃんって・・・・何時聞いても笑っちゃいそうになる。
あんなセクハラ大王が、おーちゃんだなんて。そんなカワイイもんじゃないでしょう。本当に面白いわ。
「王雅お兄さん、そろそろ来る頃だと思うんだけど・・・・先生ちょっと見て来るから、みんな先にご飯食べててくれるかな。合掌はきちんとしてから食べてね」
「はーいっっ」
みんな元気よく返事してくれたので、子供たちを食堂に残して早速玄関に向かった。
建付けが随分悪くなってしまったものだから、ガラガラとうるさい音を立てる横開きの扉を開けて外に出ると、王雅が錆びた門の所に立ち、淋しそうにこちらを見つめているのがすぐ目についた。長身で目立つから、余計ね。
「中、入らないの?」声を掛けながら近づいた。
「えっ、どーして・・・・」
王雅は酷く驚いている。
「今日、横山さんの所行くでしょ。王雅、絶対ここに寄っていくと思ったから、待っていたの。まだ、時間あるんでしょ。中、いらっしゃいよ。そのつもりで寄ったんでしょ? ここは貴方の家みたいなものだから、子供達が食事中だからって、遠慮しないで入ればいいのに。玄関のカギ、空けておいたのよ。みんな、王雅の事待ってるわ」
門を開け、王雅の手を取った。
「もう今からお仕事行くのに、お帰りっていうのも変だけど、お帰りなさい、王雅。朝御飯、仕事前に食べて行ける? 簡単なものだけど、用意してるから。食べたら、お見送りしてあげるわ」
笑顔でそう伝えると、王雅は酷く顔を歪ませた。
「美羽――・・・・」
あっと思ったその瞬間、王雅に強く抱きしめられた。
肌と肌が触れ合い、王雅の淋しさが、孤独が、伝わってくる。
それに、私へのキモチ。
私のコト、そんなに愛しく思っていてくれているの?
嬉しいけど、それを受け入れてしまうと、貴方との駆け引きがそこで終わってしまうじゃない。
私の切り札は、この身体ひとつしか無いのよ。
そう簡単に貴方に抱かれるワケにはいかないけど、思わず伝えてしまいそうになる。
もう大丈夫だからって、ずっと私が傍にいるからって、貴方を孤独から救って、そのまま寄り添いたいの、って。
貴方にずっと、この施設に帰って来て欲しいと願っている事も。
でも、それを伝えたら、貴方は困るでしょう?
そんな事、できないでしょう?
けれど、こんなに苦しんでいる貴方になら、私の身体で良かったら好きにしてもいいわよ、って言ってあげたくなる。
ただ、貴方が好きよって伝えて、そのまま結ばれて、結果捨てられる惨めな末路が待っていたとしても。
苦しみから解放されて孤独が無くなれば、私の存在意味もあるでしょう。
好きな男が孤独を払いのけ、しっかりと立ち上がって歩いて行けるのなら。
その最初に私が関われたのなら。
それで貴方が満たされるなら。
そう思うだけで、私も満たされる。
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