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スマイル22・王様が女王の恩人を救う

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 それに、施設の土地が手に入ったら、未だに美幸おかあさんの亡霊を追い求める花井のような卑怯な男にだって、振りまわされたり、付きまとわれなくても済むのよ。

 それだけでも良かったって、思わなきゃ。

 だからそんな私が、王雅みたいな男をいつまでもこの手に繋ぎ止めておく事なんて、できないことは解ってる。
 結婚も、私の事を調べられたりしたら難しいかもしれない。
 日本屈指の大企業の一人息子が結婚するとなれば、相手がどんな素性の女か、本人だけじゃなくて親が調べる可能性は高いわよね。

 ・・・・それはマズイわ。調べられる前に何とかしなきゃ。結婚しなきゃ、離婚はできない。土地も慰謝料も貰えない。
 結婚も、別にできなくてもいいの。土地さえ私にくれるなら、もう、それだけでいい。
だったら、土地だけは絶対に私に譲ってくれるように取引を持ち掛けて、今ここで貴方のオンナになってやろうかしら。



 でも、そうじゃない――



 王雅の背中を撫でながら、抱きしめる腕に少し力を込めた。


 愛しい。王雅が、欲しい。
 心が叫んでいるの。
 淋しさに震えているこの男を、私の全てで包んであげたいって。
 傷ついている貴方を丸ごと、私が独り占めして愛してあげたいって。


 今すぐ優しいキスをして、このまま貴方の全てを奪ってやりたい。


 どうしてくれるのよ、王雅!
 私をこんな気持ちにさせてしまって、貴方、責任取れるの?
 取れないでしょ!?
 取れないクセに、どうして私の心に入ってきちゃったりするのよ!

 本当は淋しくて仕方なくて、愛に飢えている子供みたいな孤独な男なんだって、どうして私にそんな弱い部分を見せたりするのよ。
 私、ダメなの。そういう子供、放っておけないの。
 好きな男なら、尚更よ。

 ただのお金持ちの気まぐれで、面白半分に、私が手に入らないもんだから、結婚しようって言っていただけじゃないの?


 気づきたくなかった。こんな気持ち。
 もう誰も信用しない、男なんか好きになったりしないって、恭ちゃんと決別した時、あれだけ心に誓ったのに。

 本当にバカだわ、私。
 もう、自分でも笑っちゃう。
 こんな貧乏女が、大金持ちの御曹司に恋しちゃうなんて。

 でも、気づいてしまったから、もう引き返せない。
 貴方の王様スマイルに、心奪われてしまったんだもの。


 だから私は、この気持ちに気づかなかったフリをするわ。
 そうしたら貴方、まだ私を追いかけてくれるでしょう?
 もう少し、貴方と同じ時間を過ごせるでしょう?

 私が、もういいって諦めがつくまでは、貴方に捨てられてもいいって、それでも抱かれたいって思うまでは、もう少しこのままでいさせて。



 諦めがついたら貴方に身体を赦して




 捨てられる前に




 私から捨ててやるんだから――





 
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